「TACO(タコ)」トレードの不発とイラン情勢

 先週末13日(金)の日経平均株価は5万3,819円で取引を終えました。

 前週末6日(金)の終値(5万5,620円)からは1,801円安、週間ベースでも2週連続の下落となりました。この期間の下げ幅合計は5,031円と大きくなっています。

<図1>日経平均の5分足チャート(2026年3月9日~2026年3月13日)

日経平均の5分足チャート(2026年3月9日~2026年3月13日)
出所:MARKETSPEEDII

 あらためて、図1(日経平均の5分足チャート)で先週1週間の値動きを辿っていくと、週初の9日(月)は、イラン情勢への混迷を受けて急落する展開となりました。

 反米強硬派とされるモジタバ師がイランの最高指導者に選出されたことや、イスラエル軍がイランの石油施設を空爆したことなどを受けて原油価格が急騰。これに伴い、日経平均も5万1,407円まで下落する場面がありました。

 ただし、翌10日(火)と続く11日(水)の取引では、状況が一変。トランプ米大統領がイランへの攻撃をめぐって「予定より前倒しで進展し、ほぼ終結したと思う」と発言したことがきっかけとなり、株価は反発する動きとなりました。

 トランプ米大統領は、前週まで「長期化も覚悟している」旨の発言をしていただけに、事態の短期収束への期待が再熱。さらに、「主要7カ国(G7)財務相が石油備蓄を共同放出する可能性を協議」と報じられて、原油価格の上昇がストップしたことも追い風となりました。

 とはいえ、イラン側の態度は強硬姿勢を崩していません。周辺国への攻撃が散発しているほか、ホルムズ海峡の航行をめぐっても、機雷を海上に設置した、船舶を攻撃したという報道が相次いだことで不透明感は払拭されず、さらに原油価格も上昇し始めたため、週末にかけて再び売りが優勢になっていきました。

 このように、先週もイラン情勢に株式市場が振り回されるという構図が続いた格好ですが、気になる点もあります。

 例えば、先週の株価上昇のきっかけとなった、トランプ米大統領による軍事衝突終結に向けた発言のウラには、「事態の長期化に伴う原油価格の上昇もしくは高止まりによるインフレ進行や、景気への悪影響を嫌がっている」という心理が感じられます。

 つまり、昨年の相場でも見られた「TACO(Trump Always Chickens out = トランプはいつもビビッて退く)」の再現期待感があったわけです。しかし、実際のところ、ホルムズ海峡の往来が制限される状況は変わっておらず、原油価格が冷静さを取り戻すには、「トランプ米大統領の発言」だけでは足りず、「相手側(イラン)の出方次第」の面があります。

 今後もイラン情勢について様々な情報が出てくると思われますが、戦闘の終結そのものよりも、「結局、ホルムズ海峡の航行の自由と安全につながるのか?」の方が焦点になります。

日足チャートから感じられる「迷い」

 続いて、日経平均の日足チャートから読み取れるポイントについて整理していきます。

<図2>日経平均(日足)の動き(2026年3月13日時点)

日経平均(日足)の動き(2026年3月13日時点)
出所:MARKETSPEEDII

 先ほどの図1でも確認した通り、先週の日経平均は荒い値動きとなりました。前営業日比の騰落を見ていくと、9日(月)が2,892円安、10日(火)が1,520円高、11日(水)が777円高と、特に週前半の大きさが目立っています。

 とはいえ、図2を見ると、荒い値動きだった割には、ローソク足が25日と75日の2本の移動平均線の範囲内での推移にとどまっていることが分かります。

 25日移動平均線は約1カ月間、75日移動平均線は約3カ月間の値動きの中心線という意味を持ちます。ここから、先行きの読めないイラン情勢について、「1カ月以内の収束が難しそうな感じになってきたので、ひとまず3カ月間ぐらいのリスクシナリオを織り込むぐらいのところで株価が調整し、次の展開を待っている状況」と読むことができます。

 また、一般的な相場の調整局面入りとされる「高値から10%安」という視点で捉えると、先週末13日(金)の終値(5万3,819円)は、2月26日の高値(5万9,332円)からの10%安(5万3,398円)を少し上回ったあたりに位置しています。

「このまま本格的な調整局面に入っても、反発局面を迎えても、どちらに転んでもおかしくないところで様子をうかがっている」と見ることもできそうです。

 さらに、週末にかけての11日(水)から13日(金)のローソク足を見ると、短い陽線(終値が始値よりも高い線)が3つ並ぶ格好で徐々に下落していった様子がうかがえます。こうした短いローソク足は「コマ足」と呼ばれ、上にも下にも動きづらかった状況を示し、相場の迷いを感じさせる線とされています。

 イラン情勢の先行き不透明感が強まり、警戒モードが高まりながらも、まだ短期間の事態収束を期待している向きもありそうです。

 今後の日経平均が下値を試す動きとなった場合、図2でも示したように、(1)から(3)のそれぞれの範囲がざっくりとした下値の目安になりそうです。イラン情勢に対するリスクを時間軸で捉えた場合、3カ月以内であれば(1)、6カ月以内であれば(2)、それ以上の長期化は(3)、もしくはそれ以下という見方になります。

 反対に、状況が改善して株価が反発基調を強める動きとなった場合には、25日移動平均線を上抜けて、さらに上昇できるかが焦点になります。

 ちなみに、先週末13日(金)時点の25日移動平均線の値は5万6,189円ですが、注意したいのは、移動平均線は計算上、「これから計算に加わっていく株価が、抜けていく株価よりも低い」と、移動平均線は下向きになるという点です。

 25日間で見ていくと、今週から計算から抜けていくのは2月の急騰時の株価になるため、移動平均線は下向きを強めやすいことが見込まれます。