3月相場を迎えた先週の日本株市場は、イラン情勢の緊迫化で日経平均は週間で3,000円超下落しました。これまで日本株の上昇を支えた「先行きへの期待感」が後退し、原油高によるインフレ再燃が警戒されています。チャート上では中期的な上昇トレンドを維持しつつも、信用買い残の高止まりなどから、調整局面入りの兆候も散見されます。
イラン情勢で揺れ動いた先週の日本株
3月相場入りした先週の株式市場ですが、週末6日(金)の日経平均株価は5万5,620円で取引を終え、前週末終値(5万8,850円)からは3,230円安(5.4%安)の大幅下落となりました。
言わずもがなですが、軍事衝突にまで発展してしまったイラン情勢への警戒が先週の株価下落の背景にあります。
9日(月)の日経平均は、先週末の終値比で1,012円(1.8%)安の5万4,608円と、大きく下げて始まりました。下げ幅は一時3,800円(6.8%)を超え、5万2,000円を切る場面もありました。早朝の取引では原油先物価格が1バレル100ドルを上回って上昇。投資家心理の悪化が、幅広い銘柄の売りにつながっています。
<図1>日経平均の5分足チャート(2026年3月2日~2026年3月6日)
図1は、5分足チャートで先週1週間の日経平均の値動きを描いたものです。
2月28日(土)に米国とイスラエルがイランへの攻撃を開始したことを受け、3月2日(月)の日経平均は下落で反応したものの、5万8,000円水準を挟んだもみ合いとなり、この時点ではいったん様子をうかがうような展開となりました。
しかし、その後は下げ幅が拡大する動きとなり、4日(水)の取引では5万3,618円の安値をつけ、前週末からの下げ幅が5,000円を超える場面も見られました。そして、週末にかけては持ち直したものの、株価の反発は限定的でした。
米国とイスラエルの軍事作戦において、「ハメネイ師の排除(殺害および拘束)」という目的の一つが初動段階で達成できたことで、当初は短期間での収束期待も高かったです。
しかし、イランが徹底抗戦の構えを崩していないことや、反撃範囲が他の中東諸国にまで及んだこと、そしてイランがホルムズ海峡を事実上の封鎖状態にしたことなどによって、時間の経過と共に事態の長期化とその影響への懸念が徐々に高まっているような印象です。
現時点でチャートの「深読み」は禁物?
今後のイラン情勢については、過去のレポートでも言及しましたが、「収束までの時間」が焦点になります。
▼過去のレポート
2026年3月6日: イラン情勢の影で忍び寄るプライベートクレジット問題(土信田雅之)
「停戦協議に向けて動き出した」などの材料が飛び込み、短期間(1カ月から3カ月以内)で収束できそうな見込みとなれば、経済や相場への影響は一時的という判断となり、株価も反発しやすくなります。
反対に、長期化が想定される状況となれば、原油価格の上昇がもたらすインフレや景気減速懸念、そしてリスクオフムードによる安全資産への回避などが強まります。これにより、これまでの相場見通しの前提(堅調な景況感や企業業績の回復基調など)が揺らぎ、株価水準のさらなる切り下げや株価の反発力も低下することになりそうです。
また、相場は常に将来を見据えながら動いていきますが、「どこまで先の将来を見据えるか?」については相場環境の変化によって、長くなったり短くなったりします。
先日までの日本株市場は、トランプ関税を乗り越え、来期(2027年3月期)の企業業績の急回復期待や、安定的な政治基盤を獲得した高市政権への期待感など、比較的長い時間軸を見据えていました。それを織り込んで日経平均も6万円台をうかがうところまで上昇していきましたが、足元の地政学的リスクの浮上によって、時間軸が短くなっていったと思われます。
<図2>国内外主要株価指数のパフォーマンス比較(2025年末を100)※2026年3月6日時点
図2は昨年末を100とした、国内外の主要株価指数のパフォーマンスを比較したチャートです。先週の日本株(日経平均と東証株価指数(TOPIX))の値動きが、他の株価指数と比べて目立って大きくなったのは、日本株が見据えていた将来の時間軸が変化し、先取りして上昇していた分が修正されたと考えられます。
<図3>日経平均(日足)の動き(2026年3月6日時点)
また、図3は日経平均の日足チャートですが、週末6日(金)の株価は、25日移動平均線と75日移動平均線のあいだに位置しています。
25日移動平均線が1カ月間、75日移動平均線が3カ月間の値動きの中心線であることを踏まえると、比較的短期(3カ月以内)のリスクシナリオを織り込んだところまで下落し、様子をうかがっている状況と捉えることができます。
今週の相場も引き続き、イラン情勢の動向の影響を受けることになりますが、武力による応酬の停止や今後のイランの統治体制、核開発・保有の放棄、原油やLNG価格の落ち着きなどをポイントにして、出てくる報道等に一喜一憂することになりそうです。
そのため、先週の日本株の値動きの荒さが、必ずしも中長期的な見通しを決定づけているわけではなく、チャートの「深読み」はあまりしない方が良さそうです。
日経平均急落、一時6.8%安。「反発期待」と「調整警戒」で揺れる日本株の行方
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