近年、日経平均株価の約3分の1を占めているのはわずか4社。さらに、半分はわずか15社で構成されている。なぜ、このような構造的に歪みが生じているのか。日経平均株価の沿革を踏まえ、上位15銘柄とそれ以外の210銘柄を分けて考える思考実験からその実態をひも解きます。
※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の藤根 靖晃が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「あらためて日経平均株価の構造解説 上位少数銘柄への偏重強まる」
日経平均株価の歪みをもたらした要因は?
日経平均株価の動きを解説する上で、特定企業の株価が与える影響について言及されることが多くなりました。日経平均株価の構造的な歪みについては、以前から指摘されてきましたが、近年、その歪みが一段と拡大しているようにも見受けられます。その現状をあらためて整理してみたいと思います。
その歪みについて語る前に、まずは、日経平均株価の沿革から確認していきます。特に印象的な出来事を時系列で抜き出してみました。

次に、青字・赤字で示した四つのトピックについて説明していきます。
(1)先物・オプション取引の開始
1986年にシンガポール、1988年に大阪証券取引所で「日経225先物」取引が始まり、1989年には大阪証券取引所で「日経225オプション」取引が開始されました。
先物・オプションの開始によって、品薄株に異常な高値がつけられたり、また品薄株の株価を操作することで裁定取引が行われたりするようなケースが出てきました。その結果として、株式流動性が採用銘柄の入れ替え時の基準になり、流動性の低い銘柄が除外されていきました。
(2)上場投資信託の上場・・・株式分割などが行われた際の算出方法の変更
2001年には日経平均株価に連動する上場投資信託(ETF)が上場しました。ETFの拡大によって、運用会社が日経平均を容易にトラッキングできるよう2005年には株式分割時の算出方法が変更。
それまでの分母修正方式(除数で調整=ダウ式)から、みなし額面を修正する独自の分子修正方式へと変更されました。分子修正方式の弊害は、値がさ株が分割しても日経平均全体に占める構成比が維持されることです。その結果、成長性の高い特定企業のウエートが高まる傾向が強まりました。
(3)みなし額面方式から株価換算係数方式への切り替え
2001年以前は、日経平均への株価の換算は株券の額面に応じて決定されていました(額面50円⇒換算係数1.0、額面500円⇒換算係数0.1、など)。
2001年の商法改正によって株券の額面は廃止されましたが、額面制度をほぼ引き継ぐ形で「みなし額面」方式が利用されていました。しかし、この「みなし額面」方式が2021年10月に廃止されて「株価換算係数方式」に変更となります。「みなし額面」方式は、額面が小さい値がさ株は株価指数への影響が大きいことから採用できないという問題がありました。
「株価換算係数方式」においては銘柄の新規採用時には原則としては換算係数1.0を適用しますが、その銘柄が全体のウエートで1%を超えないように換算係数を0.1刻みで調整を行います。
「株価換算係数方式」導入と同時に、キーエンス(0.1)、任天堂(0.1)、村田製作所(0.8)が新規に日経平均に採用されましたが換算係数は()で示したように1.0を下回りました。
ただ、「株価換算係数方式」導入以前から日経平均に採用されている銘柄についてはそのままで変更が行われなかったことから歪みの拡大の抑制には限界があったようです。
(4)「ウエートキャップ」の導入
2022年10月に「ウエートキャップ」の導入が図られました。特定の銘柄が日経平均株価の10%を超えることがないようにするために、10%の超過した銘柄の株価換算係数を定期入れ替え時(4月・10月)に調整する制度です。
2024年10月にファーストリテイリング(9983)に適用されました(換算係数3.0→2.7)。ファーストリテイリングはさらに、2025年4月にも再度適用(換算係数2.7→2.4)されております。今後も対象となる企業が出てくると思われます。
日経平均への組み入れ株価の計算方法を再確認
ここからは、日経平均株価への特定銘柄の寄与度について見ていきますが、その前に日経平均株価に組み入れられる株価の計算方法について簡単におさらいをしておきます。
日経平均への組み入れ株価は【株価×換算係数÷除数】で算出されます。
ソニーを例にとってみます(11/28終値時点)。
4,575円(株価)×5.00(換算係数)÷29.917(除数)=764.61円
除数は、採用銘柄の入れ替え時に連続性を保つための調整係数とご理解ください。
日経平均株価に占めるウエート上位企業の顔ぶれとその推移
日経平均における構成上位銘柄の推移について見ていきます。まずは月次です。
表1は、2025年11月28日を基準として過去にさかのぼる形で表示しています。また、ウエートが高い順にマーカーの色で示しています(1位:黄、2位:オレンジ、3位:緑、4位:青、5位:灰)。多少の動きはありますが、上位4社は変わっていません。
<表1>日経平均寄与度上位銘柄推移(月次)
上位4社の占める構成比(寄与度)は、2024年12月末の28.6%から25年11月末には33.1%へと4.5ptも上昇しています。わずか4社で日経平均株価の約3分の1を占めている状態には驚きを覚えます。また、日経平均の半分(50%以上)は、わずか15社で構成されています。
ちなみに、1位のアドバンテスト(6857)と225位の三菱自動車(三菱自動車工業:7211)とではウエート差が4,421倍あります。
次に年次データを見てみましょう。手元で見つけられた2019年12月末から過去6年分からも、上位銘柄への集中が高まっているのが見て取れます。2019年12月末では上位4銘柄の占有率は21.0%、15銘柄は43.0%でした。
<表2>日経平均寄与度上位銘柄推移(年次)
より古いデータを探してみたところ、15年前に日経平均株価に関して講演をした際のデータ(表3)がありました。この時点では上位4銘柄の占有率は16.3%、上位15銘柄では36.8%と、過半(50%超)を占めるには28銘柄が必要でした。現在と比べると上位銘柄の占有率ははるかに低い状態ですが、この時点(15年前)においてはかなり衝撃的に捉えられたと記憶しています。
<表3>過去の日経平均株価の構成

日経平均5万円超えの裏側~上位15銘柄頼みの構造をひも解く
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