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ダボス会議:トランプ大統領が習近平主席に伝えようとしたこと

2026/1/29 7:30

 トランプ大統領がダボス会議で行った72分間の演説に大きな注目が集まりました。その中でトランプ氏は、中国の習近平国家主席について何を語ったのでしょうか。2026年の米中関係の展望も含めて考察します。

目次
  1. トランプ大統領がダボス会議で演説
  2. 習近平国家主席について何を語ったか?
  3. 米中関係への示唆は?

※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の加藤 嘉一が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
ダボス会議:トランプ大統領が習近平主席に伝えようとしたこと

トランプ大統領がダボス会議で演説

 1月23日に閉幕した今年の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)では、新年早々ベネズエラに軍事作戦をしかけ、グリーンランドを獲得する意欲を見せたトランプ大統領が、欧州で何を語るのかに注目が集まっていました。

 米国からは、ベッセント財務長官やラトニック商務長官らも出席し、トランプ政権として、今回のダボス会議で強いメッセージを発信しようとする意図がうかがえました。

 トランプ氏が1月21日に行った演説の内容は多岐にわたりました。

 トランプ関税の成果を強調すべく、「何百もの大規模工場や自動車工場が米国に戻ってきている。カナダからも来ているし、日本からも来ている。日本は、関税を回避するために、米国内に工場を建設している。中国からも来ているし、世界中からやって来ている」と主張。

 人工知能(AI)に関しては、「我々はAI分野で世界を大きくリードしている。中国に対しても大きくリードしている」と勝ち誇りました。

 世界秩序への影響という観点から、グリーンランド情勢の行方が注目・警戒されています。米国がデンマークの自治領であるグリーンランドを取得するために、実質的な行動に出るとして、それを同じく勢力圏の拡大を視野に入れるロシアや中国がどう捉え、次なる行動に出るか。

 日本の安全保障環境にとっても重要な台湾問題にどう影響を与えるか、など事態は一層不確実になるでしょう。

 グリーンランドについて、トランプ氏は演説で次のように述べました。

「グリーンランドは実際には北米の一部であり、米国の中核的な国家安全保障上の利益に当たる。同地域の取得について協議するため即時の交渉を求めている。領土を併合するために武力を行使することはない」

 グリーンランドを国家安全保障上の中核的利益と位置づけ、かつその取得に意欲を見せるという姿勢は変わっていないものの、(その言葉の信ぴょう性はともかく)領土を併合するために、武力を行使することはなく、あくまでも協議を通じて進めていくというメッセージを、多くの政治指導者がいる前で宣言したことは、国際情勢や世界経済、およびマーケットにとって、いったんは朗報と言えるでしょう。

 トランプ氏はダボス会議に合わせて北大西洋条約機構(NATO)のルッテ事務局長と会談しました。

 そして、「米国とNATO加盟国にとって望ましいグリーンランドと北極圏に関する将来的な枠組みに関する取り決めに合意できた」という理由で、欧州8カ国に対して2月1日から10%の追加関税を課すのを取り下げるとSNS上で発表しました。

 こうした経緯も今後の情勢や市場動向を占う上で重要ですが、従来同様、トランプ氏の言動には相当程度の「振れ幅」があり、予断を許さない状況が続くと言えるでしょう。

習近平国家主席について何を語ったか?

 世界秩序への影響という観点からすれば、昨今、最も重要なファクターの一つが、トランプ大統領と習近平国家主席の関係だと思います。

 米中二大国を率いるこの二人が仮に「けんか」をする事態になれば、「言い争い」だけでなく、「殴り合い」のような状況に陥れば、ロシア・ウクライナ、ベネズエラ、イラン、イスラエル・ハマス、グリーンランドといった情勢とは次元の異なる混沌(こんとん)と危機に見舞われる可能性は大いにあります。

 だからこそ、この二人が互いをどう認識し、何を語り、どう振舞うかをモニタリングすることが必要です。その意味で、今回のダボス会議におけるトランプ氏の演説には、貴重な情報が含まれていました。着目したのが以下二つの段落です。

「私はこれまでずっと、習近平国家主席と非常に良い関係を築いてきた。彼は驚くべき人物だ。彼が成し遂げてきたことは素晴らしい。誰からも尊敬されている人物だ。私も今そう思っている」

「もちろん、その関係はCOVIDによって非常に深刻に損なわれた。私は以前、それを『チャイナ・ウイルス』と呼んでいたが、彼から『別の呼び方にしてもらえないか』と言われた。そこで私はそうすることに決めた。なぜか? そんなことで問題を抱える必要はないからだ」

 これらの文言には、私たちが両者の関係を見て、米中関係の行方を占う上でくみ取るべき示唆が三つ含まれていると私は理解しました。

(1)トランプ氏は習近平氏を「個人攻撃」せず、褒めたたえ、敬いを口にする
(2)コロナ禍や貿易戦争を含め、トランプ政権下でも米中関係は悪化し得る
(3)トランプ氏は習氏、中国との関係を「修復」する姿勢を堅持している

 トランプ氏自身のスタイルやパフォーマンスに基づくこれらの特徴が、世界秩序に甚大な影響を及ぼし得る米中関係のこれからにどう影響していくのか。次の章で考えてみたいと思います。

米中関係への示唆は?

 トランプ氏が習近平氏をたたえ、習氏もまた、米中関係がどれだけ緊張しても、トランプ氏を真っ向から批判することはしないという「個人的関係」は、米中関係、アジア太平洋の地政学情勢、世界経済、マーケットなどにとっては疑いなくプラスの影響をもたらすとみられます。

 今回のダボス会議におけるトランプ演説で、この点が一層明確になったと私は考えています。

 中国政府を代表してダボス会議に出席した何立峰副首相は、演説において、次のように指摘しています。

「昨年以来の関税戦争、貿易戦争は世界経済に重大なショックをもたらし、多国間主義と自由貿易は深刻な挑戦を受けている」

「中国は故意に貿易黒字を追及しているわけではない。[世界の工場]以上に[世界の市場]でありたいと思っている。ただ、多くの場合、中国が買いたくても、相手国が売ってくれない。貿易を安全保障の観点から扱う国の影響を受けているのだ」

 名指しはしていないものの、第2次トランプ政権発足後の米国をけん制しているのは論を待ちません。一方、同政権発足後の過去1年を振り返り、何立峰副首相は次のようにも語っています。

「中米通商関係は一定の屈折を経験したが、韓国での首脳会談と4回の電話会談での合意の下、中米通商チームは計5回の協議を行った。相互に尊重し、平和的に共存し、協力とウィンウィンの原則の下、両国通商分野の中で突出している問題を妥当に処理し、通商関係の全体的安定を保持してきた」

 習近平政権下の中国としても、トランプ政権下の米国の振る舞いや政策を警戒し、けん制し、時には批判もします。しかし、安全運転と安定志向で関係を取り持っていきたいというのが大きな方向性です。今回、何副首相は通商協議のカウンターパートであるベッセント財務長官とも会談しました。

 追加関税率やレアアースを巡る協議がデッドラインである10月末に向けてどう展開されるのか。4月で調整が進むトランプ氏の訪中はどうなるのか。その過程で、台湾問題がどう推移するのかなど、2026年も米中関係の動きに注目していくべきでしょう。

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