米通商拡大法232条調査については昨年12月4日付けの『プラチナ展望』にて取り上げたが、米大統領の見直しによると、国家の安全保障を守るためは重要鉱物に関する措置が必要であるとし、これまでの対応とは逆に、重要鉱物の供給確保に向けて180日間の交渉(あめ)を開始する。
その一方で、輸入枠や関税などの強い措置を随時適用できる選択肢(むち)も保持する。これにより、世界のプラチナ市場が逼迫(ひっぱく)している中で、CMEに保管されている約12.4トンの余剰プラチナの一部が流出する可能性が生じた。
しかし、予測不能な米政権の出方と不透明なタイムラインを考えると、今後再び米国へメタルを輸入する場合、それがスムーズにいくとは言えない状況でもある。
トランプ大統領は通商拡大法232条重要鉱物報告書を精査し、これら重要鉱物とその派生製品の輸入が米国の安全保障の脅威になるとの認識を示した。
報告書は、輸入への依存を減らすために重要鉱物の供給網と国内生産・加工能力の整備に向けた行動をとるべきで、十分な供給量と供給網の脆弱(ぜいじゃく)性を素早く解消するために外国政府との交渉による合意を推奨している。
さらに、迅速に合意が得られない場合には関税などの輸入制限を課すことが適当である可能性についても言及している。トランプ大統領は重要鉱物の供給を確保し、世界の供給網を分散化して「敵対的な国」への依存を減らすため、同盟国と180日間の交渉期間を設けることを定めた。
図1:国内の鉱山生産が限られるため、米国はPGMの輸入に大きく頼る(3E)
図2:取引所在庫が流出されても3年間にわたる供給不足の解消には至らない
通商拡大法232条調査結果をめぐる関税や貿易摩擦、ロシア産パラジウムのダンピング疑惑に関する米国際貿易委員会(USITC)による調査などで、エンドユーザーや投機筋は積極的に米国内にPGMを蓄積している。中でも目立つのがCME承認保管庫の在庫で、現在プラチナは通常よりも約12.4トン、パラジウムは約4.7トン多い水準にある(図3と図4)。
「解放の日」後に見られたようにPGMに関税がかからないとなれば、歴史的高水準にあるリースレート(図5)と、ロンドン先物市場の強いフォワードカーブのバックワーデーション(図6)を活用するために、米国からメタルの流出が誘発される。
この環境はすでにここ1年以上続いているが、米国からのメタル輸出と再輸入にはリスクを伴う事態が懸念されるため、2025年7月以降、米国から外へメタルが動けない状態になっている。
7月13日までとなる180日間の交渉で欧州へメタルが動くきっかけになる可能性があり、CMEの在庫が減れば足元の逼迫した市場に対する緩和効果があるかもしれない。
ただし、注意すべきなのは、交渉期間が180日間あるといえどもプラチナやパラジウムに対する輸入制限枠や関税が導入される可能性が排除されたわけではなく、世界の供給網における南アフリカとロシアの圧倒的な地位を考えると、米政権がこれらの国々を同盟国と見るのか、敵対国と見るのか、疑問は残る。
我々はこれまでにも、通商拡大法232条調査の結果がネガティブに出る警戒と関税懸念で、CME在庫が米国内にとどまり、市場に出ない可能性を指摘した。
しかし、180日間の交渉で、タイトな市場を有利に使うために一時的に米国からメタルが輸出される可能性がある。が、再輸入に大きなリスクがある点は否定できない。
同時に12.4トンのプラチナが一時的に市場に放出されたとしても、過去3年間の供給不足で84.0トンも減った地上在庫の回復にはそれほど役立たない。
投資資産としてのプラチナを支える背景
-WPICのリサーチによるとプラチナ市場は2023年から供給不足が続いている。2026年は需給が均衡する予測だが、現在の逼迫した状況は改善されないだろう。
-高い価格は供給には有利だが、短期間で供給を増やすには限界がある。
-プラチナのエンドユーザーが多岐にわたることと、安価で代替となるものがないため、価格が上がっても需要は減りにくい。
-リースレートの上昇とロンドン先物市場のバックワーデーションがタイトな市場を反映している。
-プラチナの価格はゴールドより大幅に低いままで、マクロ的な政局の不安定さが貴金属全体の価格を支える。
図3:関税懸念とポジティブなEFPのおかげでCMEのプラチナ在庫は現在通常よりも約12.4トン多い
図4:パラジウムの在庫も約4.7トン多く、ロシア産パラジウムのダンピング疑惑の調査も一因
図5:米国のメタル需要が世界の供給不足を加速し、リースレートの上昇に繋がった
図6:ロンドン市場のメタル不足でOTC市場は強いバックワーデーションが続く
図7:CME在庫から12.4トンが放出されても地上在庫の再構築には足りず…
図8:…2025年5月にプラチナ価格の上昇局面のきっかけとなった水準を上回ることはない
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当和訳は英語原文を翻訳したもので、和訳はあくまでも便宜的なものとして提供されている。英語原文と和訳に矛盾がある場合、英語原文が優先する。
























































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