2026年期待のAI銘柄は?

トウシル:2026年の生成AI業界で注目の銘柄についてお伺いしてもよろしいでしょうか。

柴田:はい、先ほどの「五つのレイヤー」に沿って見ていきます。

 チップのレイヤーでは、現在、NVIDIAが学習用GPU市場をほぼ独占していますが、推論用GPUの市場では異なる動きが見られます。

 推論用GPUは、データセンターだけでなく、IoT(モノのインターネット)デバイスやスマートフォンといったエッジコンピューティングでも使われるため、小型化や省電力化が重要になります。

 NVIDIAの一強である必要がない領域であり、AMDなどがこの市場でNVIDIAの牙城を崩そうと開発を進めています。2026年にはAMDのような企業の躍進も十分にあり得ます。

 インフラ系、ミドルウエア系のレイヤーでは、生成AIの需要をうまく取り込み、ビジネスが再び活況を呈している企業に注目しています。具体的には、米国の上場企業であるスノーフレイク(Snowflake)モンゴDB(MongoDB)です。両社ともデータベースやデータウエアハウスを提供する企業です。

 企業は大きくなると成長率が鈍化しがちですが、この2社は生成AIアプリケーションのデータ保存・分析需要を捉え、直近2四半期ほどで売上高成長率が再び伸び始めています。

 これらは上場企業であり、個人投資家でも投資できるため、非常に面白い銘柄だと思います。

 特にMongoDBは、生成AIが扱うベクトルのデータ処理に相性の良いデータベース構造を持つことも強みです。

 LLMのレイヤーでは、OpenAIやAnthropicが注目されていますが、まだ上場していません。業界特化型アプリケーションのスタートアップも同様で、これらはもう少し先の話になるでしょう。

トウシル:ちなみに、こうしたLLMサービス間での競争はどのようになるとお考えでしょうか?

柴田:LLMモデルに関しては、性能的な大きな差はないと考えています。

 少し前まではOpenAIが多少先行していましたが、今では各社が新しいモデルを出すと、他の会社がすぐに追いつく状況です。

 もちろん、ベンチマークの結果を見ると、例えばAnthropicのクロード(Claude)はコーディングに強いといった特性はありますが、基本的に大規模なLLMをつくっている会社は、皆、汎用人工知能(AGI)に近づくような知性をつくりたいという共通の目標を持っています。

 これは車で言えば、フォーミュラ1で一番速い車を造るという目標に向かって、各メーカーがしのぎを削っているようなものです。

 機能面というよりは、今後、各社が顧客にどのようなサービスを提供していくかという点で差別化が図られるでしょう。

「生成AI×SaaS」の注目6社

トウシル:ありがとうございます。他に、生成AIによって伸びそうな企業はありますか?

柴田:注目すべきは、生成AIを自社内で使い倒して、それによってビジネスが好調になっている企業です。特に米国のSaaS系上場企業では成功事例が増えています。

 例えば、以下の6社です。

社名/業種 生成AIの効果
サービスナウ(ServiceNow)/ コールセンター 主に営業活動に生成AIを導入し、リード獲得から商談転換の効率が16倍に向上。単純作業の86%を自動化し、新規の年間契約額(ACV)は過去最高に。
クラウドフレア(Cloudflare)/ セキュリティ AI活用で営業成約率が2桁%上昇。
データドッグ(Datadog)/ サーバー監視 AI関連機能導入で、「AIネイティブ」顧客の年間経常収益(ARR)が前年の3.5%から8.5%へと大きく増加。
リングセントラル(RingCentral)/ コミュニケーション 自社開発AIツール「RingSense for Sales」を社内活用し、従業員1人当たり週2時間を削減。新規顧客獲得は四半期で25%増加。
ハブスポット(HubSpot)/マーケティング  リード獲得をAIに任せ、AIのみで四半期に1万件の新規商談を獲得。
アドビ(Adobe)/ クリエイティブ 単価の高いAI付きプランの売り上げが全体の成長をけん引。

 これらの企業は、単にAIプロダクトを販売するだけでなく、自社の営業活動などにもAIを導入することで、目に見える形で売上成長を実現しています。このような企業は、競争優位性を保ち、成長を続ける可能性が高いでしょう。

トウシル:なるほど。やはり、実際にAIを使って結果を出している点が重要ということですね。

柴田:単に「AIに取り組んでいます」というだけでなく、具体的な成果が出ている企業を見極めるべきです。特に営業活動へのAI導入は、売り上げという形で明確に結果が出るため、投資判断もしやすいでしょう。

トウシル:営業やマーケティングがパターン化しやすいSaaS領域にAIを導入すれば、効率化が一気に進むということですね。AIバブルの崩壊に注意しつつ、良い投資対象があれば積極的に狙っていきたいです。

 本日は生成AIについて貴重なお話をありがとうございました。

柴田:こちらこそ、本日はありがとうございました。