5.日本と米国の「中国関連」にも注目したい。

 日本と米国の「中国関連」では、日本ではアドバンテスト、東京エレクトロン、ディスコの半導体製造装置メーカーに注目したいと思います。一桁ナノ台の生産設備を構築する場合でも成熟半導体向けの製造装置は使うので、東京エレクトロンにとって中国は重要な市場であり続けると思われます。アドバンテストにとっては、AI半導体を含む中国の半導体生産が高度化すればテスタも高性能化します。ディスコにとっては、中国の半導体生産、特に先端半導体の生産が増加すればダイサ、グラインダの需要は増えると思われます。また、中国でAI半導体に使うHBMの生産が本格化すれば、HBM用のグラインダの需要が増加すると思われます。

 米国株の中での中国関連としては、私がカバーしていない銘柄ですが、参考銘柄としてMPマテリアルズを挙げました。日本株でも参考銘柄として南鳥島沖の試掘関連として、三井海洋開発、東洋エンジニアリング、古河機械金属、いであの4社を表2の中で挙げました。中国製レアアースを米国産、日本産が代替することは無理と思われますが、自国生産を増やすことで中国を牽制することは可能と思われます。

日本と米国の中国関連

半導体製造装置

アドバンテスト

東京エレクトロン

ディスコ

レアアース関連

MPマテリアルズ

 最後にグラフ1です。2025年の年初からの各国株式指数の動きを見ると、香港ハンセン指数の堅調さがわかります。今年も中国株式市場には昨年同様各国株式市場と比較して良好なパフォーマンスが期待できると思われます。世界経済にある様々なリスクを考えると、特定の国に一極集中的な投資を行うのではなく、米国、日本、中国、その他の国々と、債券、現金も含めた国際分散投資を考えたいと思います。

グラフ1 主要株価指数の2025年年初からの変化

主要株価指数の2025年年初からの変化
2025年1月6日終値を100として指数化。日次、終値。出所:楽天証券作成

6.メモリ不足とメモリ市況上昇

 DRAM価格上昇の動きとその影響については、2025年12月22日付け「決算レポート:マイクロン・テクノロジー(DRAM市況上昇、HBM好調で業績好調)」で分析しましたが、改めてDRAMとNAND型フラッシュメモリの価格の動きとその影響を分析したいと思います。

2025年12月22日:「決算レポート:マイクロン・テクノロジー(DRAM市況上昇、HBM好調で業績好調)

 今回のDRAM価格上昇は、昨年5月、中国のDRAM大手、CXMTが2026年中旬までに1世代前のDRAM規格、DDR4の生産を段階的に終了し、最新規格であるDDR5とHBMの生産に集中すると報道されたことがきっかけです。DDR4の生産縮小とDDR5とHBMの生産拡大はSKハイニックス、サムスン電子、マイクロンはすでに行っていることですが、新興DRAMメーカーのCXMTも同様の方向になると報道されたのです。この報道があった後、DRAM価格は徐々に上昇し始めて、昨年7月以降はCXMTのDDR4生産縮小によるDRAM需給の逼迫が改めて意識されたことからDRAM価格はDDR4、DDR5ともに急騰しました。

 さらに、11月に入ってオープンAIが大規模AIデータセンター「スターゲート」プロジェクトのために、サムスン電子とSKハイニックスとの間で月90万枚規模のDRAMウェハ供給について協議していると報じられました。報道によれば、この数量は世界のHBM生産量の約2倍に相当するということです。

 グラフ2はDRAM市況、グラフ3はNAND市況を示したものです。日経新聞市況欄から抽出したものですが、2025年8月から12月まで小幅上昇を続けていたDRAM市況(国内大口需要家渡し)が2025年12月第4週に大幅に上昇しました。DDR4の8ギガビット品では2025年5月に1.60~1.80ドルだったものが2025年12月に6.26~6.46ドルになりました。7カ月で3.6~3.9倍になりました。

 NANDは、2025年4月からじり高でしたが、12月第4週に前週比1.4倍になりました。

 この動きはまだ止まっていないと思われます。日本におけるパソコン用メモリとSSDの店頭価格の動きを見ると、12月から1月にかけてさらに上昇しています。パソコン用メモリ(DDR5、16GB、2枚組)では昨年10月に1万1,000円だったものが、1月に7万2,000円台になりました。3カ月で6倍以上になりました。

 SSD(1テラバイト)はDRAMほどではありませんが、10月に1万2,000円台だったものが、1月には2万2,000円台になりました。

 今後、パソコンとスマートフォンにはDRAMとNAND価格の上昇の影響が値上げとなって顕在化すると思われます。フルに価格転嫁が行われると、10万円前後の普及価格帯のパソコンが10万円台後半に値上げになると予想されます。スマートフォンも同様の値上げになると思われます。

 AIサーバーの場合は、大雑把な試算になりますが、B200を8基搭載したメインメモリ1.5テラバイト、SSD7.6テラバイトのAIサーバーの見積もり価格が約7,600万円になります(NTTPCコミュニケーションズのウェブサイトより)。この見積もりでDRAM価格が3倍、SSD価格が1.5倍になり、さらにHBM価格も3倍になったときの価格を推定すると、メインメモリ1.5テラバイトの場合でAIサーバー価格は約30%上昇、メインメモリ8テラバイトの場合は40%以上上昇することになると思われます。

グラフ2 DRAMの市況

DRAMの市況
単位:ドル、国内大口需要家渡し、4ギガビット(2018年6月26日までDDR3、2018年7月3日からDDR4、2021年5月11日からDDR3)、8ギガビット(DDR4)、出所:日経新聞主要相場欄より楽天証券作成

グラフ3 NAND型フラッシュメモリの市況

NAND型フラッシュメモリの市況
単位:ドル、国内大口需要家渡し、TLC(注:2017年5月30日付で従来の多値品がTLCに変更された)、出所:日経新聞主要相場欄より楽天証券作成

グラフ4 パソコン用メモリの店頭価格

グラフ4 パソコン用メモリの店頭価格
(CFD:W5U5600CS-16G [DDR5 PC5-44800 16GB 2枚組])平均価格、単位:円、出所:価格ドットコムの価格推移グラフより楽天証券作成。週初価格を抽出

グラフ5 SSDの店頭価格

グラフ5 SSDの店頭価格
Sundisk:WD Blue SA510 SATA WDS100T3B0A、1TB、平均価格、単位:円、出所:価格ドットコムの価格推移グラフより楽天証券作成。週初価格を抽出

表8 DRAMのメーカー別売上高と市場シェア

DRAMのメーカー別売上高と市場シェア
単位:100万ドル
出所:TRENDFORCEプレスリリースより楽天証券作成

表9 NAND型フラッシュメモリのメーカー別売上高と市場シェア

NAND型フラッシュメモリのメーカー別売上高と市場シェア
単位:100万ドル
出所:TRENDFORCEプレスリリースより楽天証券作成

7.DRAM、NAND価格上昇のAIを含む情報システムとハイテク産業への影響に注意したい。

 DRAM価格、NAND価格の上昇は、いずれパソコン、スマートフォンの販売価格に転嫁されると思われます。今後のパソコン、スマートフォンの価格と販売動向に注意する必要があります。
また、DRAM、NANDだけでなく、SSDが品不足になってきたため、HDDの需要が増加して店頭価格も上昇しています。DRAM、NANDに対してNOR型フラッシュメモリが代替できる場合もあるため、NOR型の需要が増えています。要するに、メモリ全般の需要と価格が上昇しているのです。このことがハイテク産業全体に与える影響に注意したいと思います。

 AIサーバーに対しては、まずメインメモリ(DRAM)、SSD(NAND)の価格上昇を通じてAIサーバー価格も上昇すると思われます。HBMの価格は顧客に対して年1回価格と数量を決めるやり方であり、2026年分の価格と数量はすでに決まっています。しかし、足元のDRAM(DDR5)の価格上昇は十分反映されていないと思われるため、再交渉の余地があると思われます。AI半導体メーカー側が再交渉に応じない場合は、2027年価格が大幅に引き上げられるか、HBMの生産調整もありうると思われます(マイクロンでは現在、大口顧客との間でDRAM、NAND、HBMを含む複数年のパッケージ契約を交渉中です)。これはすでに足元で通常型DRAMのほうがHBMよりも儲かる製品になっていると思われるからです。

 AIへの設備投資にDRAM、NANDの価格上昇がどのように影響するのか、注意したいと思います。

8.メモリ関連銘柄

 メモリ関連銘柄としては、DRAM、NANDメーカーと半導体製造装置メーカーです(カッコ内の銘柄は楽天証券でカバーしていないもの)。

DRAM、NANDメーカー:マイクロン・テクノロジー、(サムスン電子)、(SKハイニックス)
NAND専業:(キオクシア)

メモリ設備投資:東京エレクトロン、アドバンテスト、ディスコ、レーザーテック、ASMLホールディング

 メモリ設備投資については、大手DRAMメーカー(サムスン電子、SKハイニックス、マイクロン・テクノロジー)も、キオクシアも必ずしも大型投資に熱心ではないようですが、メモリ関連の設備投資は着実に増加すると思われます。前工程では、東京エレクトロン、後工程のテスタではアドバンテスト、切削機械ではディスコが重要です。

 また、DRAMが高性能化(高速、大容量化)し、HBMも高速大容量化するにつれて、EUV露光装置を使う工程が増えてきました。大手DRAMメーカー3社とも次世代型のEUV露光装置、High-NA型をすでに発注している模様です。ASMLホールディングのメモリ比率も高くなっています(EUV露光装置だけでなく1世代前のArF液浸露光装置でメモリ向けが多くなっている)。そのため、ASMLホールディングとEUV向けフォトマスク欠陥検査装置を独占しているレーザーテックにも注目したいと思います。

本レポートに掲載した銘柄:テンセント・ホールディングス(00700、香港)、アリババ・グループ・ホールディング(09988(香港)BABA(NYSE))、バイドゥ(09888(香港)BIDU(NASDAQ))、SMIC(00981、香港)マイクロン・テクノロジー(MU、NASDAQ)東京エレクトロン(8035、東証プライム)アドバンテスト(6857、東証プライム)ディスコ(6146、東証プライム)レーザーテック(6920、東証プライム)ASMLホールディング(ASML、アムステルダム、NASDAQ)