米国での金融トレンドは、時間差で日本にも波及する傾向があります。AIブームや特定銘柄への過度な集中などが懸念される中、米国の資産運用の現場や個人投資家はどう動いているのか。本稿では米国出張で見えたトレンドをレポートし、2026年のポートフォリオ見直しに向けたヒントをお伝えします。
米国出張で見えた、2026年の資産形成トレンド
このたび、12月上旬に米国へ出張し、運用会社、評価会社、インデックスプロバイダーなど、多岐にわたる立場の方々にインタビューを実施してまいりました。
個別のインタビュー内容は後日、動画およびトウシル記事にて詳細をお届けする予定ですが、本レポートでは、これらのインタビューから得られた知見を総括し、米国で今まさに起きていること、そして2026年に向けた展望として、日本の資産形成へのインサイトをまとめたいと思います。
過去を見ても、米国での金融トレンドは、時間差で日本にも波及する傾向があります。本稿を通じて、米国における最新の動向をいち早くお伝えすることで、皆さまの今後の資産形成における有益な情報となれば幸いです。
1.米国株式市場の「ゆがみ」とAIブームの行方
インタビューを通じて、多くの方々から共通して聞かれたのは、2025年の米国株式市場は非常に歪であり、過去に類を見ないレベルで「マグニフィセント・セブン」など特定銘柄への集中が進んでいるということです。
今年、米国市場のパフォーマンスをけん引した要因は、高ベータ銘柄や高モメンタム銘柄に集中しており、S&P500種指数の中で上位10銘柄が占める比率は40%に迫っています。
もちろん、このような集中相場は過去にも見られましたが、AllianceBernsteinのVinay Thapar氏は、「通常はその偏りが薄れて広がる期間があるが、今回の偏りは過去の期間よりもはるかに深刻」と指摘しています。
バリュエーション(本来の企業価値)から乖離(かいり)して上がり続けている銘柄の反動がどのように表れるのか、運用会社などのプロフェッショナルから個人投資家まで、リスクへの備えを意識する動きが高まっています。
一方で、特定銘柄のみが注目され、本来の質の高い企業が評価されにくい環境であったことから、「過去約20年間の中でも、質の高い企業には特に逆風が強かった年のひとつだった」(Vinay氏)という見方もあります。逆の視点から見れば、特定銘柄の過度な割高感の是正が進んだ際には、そのような質の高い企業が適正に再評価される可能性があると言えるでしょう。
世間が今最も注目しているAIブームの行方については、その収益性の見極めと割高感是正への警戒が必要とされる一方で、今後の米国経済成長の鍵を握ることは間違いないとの見方は全体として揺らいでいないと感じました。
ブームとしてではなく、適正な評価と収益が得られるまでのポートフォリオのリスク管理と、AIによる成長機会獲得のバランスを取ることが引き続き重要となりそうです。
2.選好されているアセットクラス
米国では、今年後半以降、米国株式(米国から見ると国内株式)からの資金流出超過が継続しています。これには、前述の特定銘柄への過度な集中や割高感への警戒が強まっていることが一因として挙げられます。しかし、もう一つの大きな要因として、大きな世代の転換が起こっていることも挙げられます。
米国では、ベビーブーマー世代(1946~1964年生まれあたりを指す)と呼ばれる人々が長らく個人投資をけん引してきました。この世代の人々は間もなく全員が退職期を迎え、資産形成期から資産を取り崩すフェーズへと移行します。
そのため、株式中心の運用から、資産保全を目的としたより保守的な運用へのシフトが進んでいます。MorningstarのBen Johnson氏は「現在、米国内の金利が、しばらく見ていなかった水準にあるという事実が、株式から債券へのシフトをさらに加速させている。実質金利、つまりインフレ考慮後の金利はプラスであり、これは過去10年間無かったことだ」と話します。米国の金利上昇により債券投資の魅力が増していることも相まって、退職後の収入確保を目的とした債券への再配分が進んでいるのです。
一方、ベビーブーマー世代以後の、まだ資産形成期にある人々は、先ほどの割高感への警戒から米国株式から「国際株式」に資金をシフトさせています。米国以外の特定の国を選ぶわけではなく、「グローバル除く米国」「先進国除く米国」などのインデックスが選好されています。
このように、米国においても、資産分散や地域分散といったリスク管理が改めて重要視されていると言えるでしょう。
3.ETF市場、特にアクティブETFの爆発的成長
プロダクトの観点では、米国における上場投資信託(ETF)市場の爆発的な拡大は特筆すべきトレンドです。MorningstarのBen Johnson氏は、「米国市場には上場株式よりもETFの方が多くなっている。間もなく、ETFの数が投資信託(ミューチュアルファンド)の数をも上回る瞬間が来るだろう」と述べています。
その理由の一つは、米国では投資信託(ミューチュアルファンド)よりもETFの方が税効率が良いことが挙げられます。このため、投資信託からETFへの転換も近年トレンドの一つとなっています。
さらに注目すべきは、その中でも「アクティブETF」の設定が急速に増加していることです。これまでETFはパッシブが主流でしたが、2019年に米国で新たなETFルールが制定されて以降、アクティブETFの迅速な導入が可能になり、またアクティブマネジャーがパッシブETFと同じ競争条件および同じ透明性で戦えるようになりました。
これにより、低コストで既に飽和しているパッシブETFよりも、アクティブETFへの参入余地が大きくなった結果、設定が相次ぎ、既に本数自体はパッシブETFよりもアクティブETFの方が多くなっています。
日本では、投資信託とETFの間で大きな税制の違いはないため、米国のように爆発的にETF市場が拡大することは現状想定されませんが、急速な拡大を遂げているアクティブETFが、日本にも波及してくることは十分に予見されます。
2026年の新常識:米国の資産形成トレンドから読み解く!ポートフォリオ見直しのヒント
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