11月のBTC市場は続落。1年でBTCが最も強いとされる10、11月の2カ月連続マイナスは、2019年以来7年ぶり。もうBTCの上昇サイクルは終わったのか? AIバブルの行方は? トレジャリー企業は大丈夫か? 楽天ウォレット・シニアアナリスト:松田康生、通称MATT(マット)が、今後の方向性を分析する。
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著者の松田 康生が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「 1年で一番強いはずなのに!ビットコイン2カ月連続マイナスのワケを解説!」
11月のビットコインの振り返り:市場心理が凍り付く
11月のBTC市場
11月のビットコイン相場は下落。
10月に12.6万ドルでピークアウトすると、10月10日に10.7万ドル、10月17日に10.3万ドル、11月4日に9.8万ドル、11月15日に9.3万ドル、11月19日に8.8万ドルと、おおむね1週間ごとに約5,000ドルずつ安値を更新した。
11月20日から21日にかけて8万ドルに急落し、月末にかけて9.3万ドル近辺まで反発したが、12月に入り再び8.3万ドルまで急落、9.3万ドルに急反発し、底入れを印象づけた。
11月振るわなかった原因
アノマリー的に非常に強いはずの11月にこれだけ下がった原因はいくつか挙げられる。
1.オンチェーン分析
まずは短期勢のマインドの冷え込みだ。10月10日にトランプ大統領が対中関税に言及した際、証拠金の100倍程度までのレバレッジ取引が可能な海外取引所で、約2.5兆円相当のロングポジション清算が発生した。
11月に入ると、そうした海外取引所の大手MEXCで出金遅延が発生し、事なきを得たものの、一時は第2のFTX事件か…と市場心理を悪化させた。さらに、中堅DeFiでのハッキングや一部ステーブルコインのディペッグ(1ドル=1ステーブルコインを維持できなくなること)などが相次ぎ、そうした海外取引所を利用している一部の短期勢のマインドが凍りついた。
これに輪をかけたのがオンチェーン分析だ。オンチェーン分析とは、ブロックチェーン上の動きから大口の売買や手口を分析するもので、無料のものもあれば有料会員に先に情報を流すサービスもある。
そうした業者がマインドの冷え切った市場参加者に大口移動情報を流すたび大口の売りが来る…といった恐怖心で売りが売りを呼ぶ展開となった。特に、Strategy社やMt.Gox関連のウォレットからの移動が市場の疑心暗鬼を高めた。
台帳が公開されているブロックチェーンならではのオンチェーン分析だが、台帳上の潜在的な売り圧力は認識できる一方で、チェーン上にない新規の買い圧力は把握できない。従って、オンチェーンデータにはネガティブバイアスがかかりやすいという欠点があるのだが、ほとんどの参加者は気づいていないようだ。
2.AIバブル
一方、長期勢のマインドも冷え込んだ。BTC市場では、過去の安値圏で購入した個人大口保有者の売りと、ここ数年で「プレゼンスを高めた米国中心の機関投資家による買い」という構図が続いていた。
中でも、外部資金を調達して暗号資産を購入するトレジャリー企業の買いが一服し、上場投資信託(ETF)投資家の買いが頼みの綱となっていた。ところが、11月はこうしたETF投資家が売りに回ってしまった。
この背景にはAI関連株の失速がある。月初にメタ・プラットフォームズ(META)がAI関連データセンター設立のため300億ドルの巨額起債を実施し、さらに簿外債務の形で300億ドルを調達したと報じられた。
この結果、同社株は10%以上下落。エヌビディア(NVDA)などもピークアウトした。パランティア・テクノロジーズ(PLTR)が好決算ながら失速した際は、いよいよAI関連なら何でも買われるバブル相場の終焉(しゅうえん)がイメージされた。エヌビディアの好決算を受け反発した同社株がその後失速したことで、市場心理は冷え切った。
市場が懸念しているのは、AI大手が次々と10兆円規模の投資を発表するが、果たして投資回収が可能か? 確かにAI競争で勝者となれば可能かもしれないが、敗者となった場合はどうなるのか?という点だ。受注ラッシュでエヌビディアの好決算は当たり前だが、懸念を払拭(ふっしょく)するには至らなかった。
ただし、誰が勝者で誰が敗者となるかは数年経過してみないと分からず、こうした懸念は多分に雰囲気に左右される。米ニューヨーク連邦準備銀行のウィリアムズ総裁のハト派転向で市場の雰囲気が一変すると、各社株は反転。S&P500種指数(S&P500)はピークからの下落幅の8割以上を回復している。
エヌビディア、メタ、パランティア・テクノロジーズの株価とBTC/USD
3.トレジャリー企業
また一時、市場をにぎわせた外部資金を調達して暗号資産を購入するトレジャリー企業の存在も市場の不安心理を高めた。ストラテジー(MSTR)やメタプラネット(3350)の成功を受けて、第2四半期にブームを呼んだトレジャリー企業だが、両社の株価がピークアウトするにつれ、新規の資金調達が難しくなった。
その結果、メタプラネットの購入は9月以降完全に止まっており、ストラテジーも以前に比べればほそぼそと購入しているに過ぎず、到底相場を支えるには至っていない。
そうした中、相場がある程度下がると、こうしたトレジャリー企業が売りに回るのではないかとの見方も浮上した。特に、次の安値のめどとなる4月に付けた年初来安値7.4万ドルが両社の平均取得コストに近いことなどが懸念された。
ペイントレードが反転?
こうした市場心理の冷え込みとは対照的に、材料面では好転が続いている。
史上最長の米政府閉鎖は解除され、米中貿易摩擦も一応収束。米連邦準備制度理事会(FRB)内での分裂が目立った時期もあったが、パウエル議長の最側近である米ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁のハト派転向で、12月利下げはほぼ確実視されている。
来年5月で任期切れとなるパウエル議長の後任候補には、第1次トランプ政権でアドバイザーを務めたハセット国家経済会議委員長が有力視され、さらに積極的な利下げ期待が高まっている。
また、12月から市中にばらまいたドルの吸収を目的とした量的引き締め(QT)も終了。トランプ政権は関税収入を原資に国民1人当たり2,000ドルの税還付を計画しており、世界中で「積極財政」が続き、BTCなどへの逃避需要は根強い。
このように材料は好転しているのに市場心理が追いつかない理由を表す二つのキーワードがある。
1.バンドワゴン効果
市場が上がると強気意見が雪だるま式に増え、下がると弱気意見が急増する現象。BTC市場では価格変動が激しく個人参加者が多いため特に顕著。プロ投資家は他人の資金を運用するため冷静だが、個人の場合は自分の資産なので恐怖心に支配されやすい。
2.ペイントレード(Pain Trade)
市場は多くの参加者が「そちらに行くと困る」方向へ動きがち。今回の場合、半減期を中心とした4年サイクル論が広まりすぎた結果、多数が上で売り待ちを構え、ペイントレードは明らかに下方向だった。さらに、下がりすぎるとトレジャリー企業が資金繰り悪化で投げ売りを始めるという悪夢シナリオが共有されていた。
ところが、実際に大きく下げてみて判明したのは、トレジャリー企業はほとんど売らなかったということだ。
メタプラネット:取得コスト約1,600万円で含み損が広がっているが、9月末時点で保有BTC約5,400億円に対し自己資本約5,300億円とほぼ均衡。含み損は株価に響くが、資金繰りへの影響は限定的で投げ売りの必要性は低い。
ストラテジー社:転換社債・優先株での調達は利払い・配当負担を生むが、同社は今後21カ月分の原資として14.4億ドルの準備金を創設。当面のBTC売却懸念は大幅に後退した。
結果、今回の下落はトレジャリー企業へのストレステストとなり、株価は下落したものの資金繰り悪化でBTCを強制売却する事態には至らず、下方向がペインではなかったことが明らかになった形だ。
1年で一番強いはずなのに!ビットコイン2カ月連続マイナスのワケを解説!
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