3カ月にわたってさまざまな角度から論じてきた米日AI相場のキナ臭さを、今回は「心理現象」と捉えて検証する。11月第1~2週の米日AI株の急落をバブル相場の破裂とする声もあった。しかし、ここまでは相場フロス(小粒の泡)の自律調整にとどまっており、第3週以降はエヌビディア好決算によるアク抜けも期待できそうだ。
※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の田中 泰輔が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「【米日株アップデート】AIバブル・破裂を読む心理学」
サマリー
●不確実性の下の相場変動は、心理現象として捉えられる部分が大きい。その観点から…
●11月第1、2週の米AI株下落は、バブル破裂というより、まだ通常の自律反落の範囲内
●エヌビディアの決算を経る第3週以降は、一定のアク抜け感を想定
●しかし、年末相場には11月下落の波紋が残り、個別銘柄に加え、分散効果のあるETFで勝機を探索
相場上昇の心理学
筆者は日頃から相場変動を波動の力学として説明しています。速く高まった相場は、それに見合って反落の力学を生み出します。
相場のトレンドが上向きと広く認識される時、値動きはその予想トレンドに沿って行儀よく進むのではなく、より速く上伸しがちです。相場上昇を予想させる情報が確実な段階であれば、その情報はすでに相場に反映されているはずです。つまり、投資の判断は先行き不透明な段階で下すことになります。
不確実性下の投資家は、合理的な判断を下すだけの材料を持たないため、想像による思惑を巡らせます。その思惑は、時間的な切迫感や損益リスクからのストレスで、心理的なゆがみを避けられません。
相場の上昇材料6割と下落材料が4割と認識し、買う判断をすると、その判断自体が情勢判断を偏らせます。不確実性を克服する心理的努力を経て購入した投資ポジションをホールドする間、売り材料は無視したり、織り込み済みなどと買い材料のように曲解したりする偏向(認知的不協和)が現れます。
他の投資家も不確実性の下におり、ポジションの先行保有で強化された思惑を聞かされると、逆らい難く、同調しがちになります。同調的な買いが広がると、実際に相場は上がり、相場が上がること自体が、思惑の正しさを証明したという確信を強めることになります。
相場が上がれば上がるほど、認知的不協和、同調、相場自体による思惑の証明という心理の偏向が進みます。さらに、早い段階で相場に参加した投資家ほど含み益が増大することで、自身の洞察力に自信を強め、リスク判断が甘くなり、さらに買い増すなど、上昇相場の強化が進みます。
相場が勢いよく上昇し、投資家がもうかり続けるときに、下げ材料を強調するような人は、相場センスがない、理解が足りないなどと言われかねません。勝てば官軍なのです。
相場反落の心理学
しかし、未参入の投資家からすると、上昇トレンドの見立てをはるかに速く進行し、高くなった相場に乗ることにちゅうちょが出てきます。こうして相場の上昇ペースが鈍化する時、強気一辺倒だった先行参加組はいつでも売り抜けられるという目線になり、潜在的な売り圧力を顕在化させやすくなります。
いざ相場が下がり始めると、遅れて参加した投資家は、ポジションの購入コストが高いため、売り逃げを急ぎます。それを見て、先行組にも売り急ぎが出てきます。しかし、新規の買い手が細っている状況は、売り逃げようとする出口が狭まっていることを意味します。
加速的な上昇相場の反転時は、狭い出口に大量の売り手が殺到することで、「上がり百日、下げ三日」という格言のように、非常に速いペースで下落するのが通常です。そして、相場が下がると、それを追認して、4割の下げ材料が今更ながらに論じられるようになります。
AI相場はバブルかという問題について、相場が勢いよく上昇している間は、バブルであるはずがないという論調が優勢です。しかし、いざ急落すると、AI分野の過剰投資、それを賄う高債務、採算性への懸念が、したり顔で語られるようになります。
このように、市場の専門家が発する情報も大半は後講釈です。しかし、そのことを批判しても無益なことです。投資家としての肝は、そもそも相場の情報は、相場を追認するものであり、相場波動が上と下に一巡してようやく強気・弱気解釈のバランスが取れるというメカニズムを理解し、逆手に取るくらいのクールな判断力を養うことに尽きます。
米国株アップデート AIバブル・破裂を読む心理学
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