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高市首相は「真の物価高対策」に着手できるか?

2025/10/28 7:30

 高市首相が物価高対策を進めようとしています。高市首相は会見で「コストプッシュ」について言及しており、原材料の輸入物価が高騰している状況を把握していると考えられます。政府は今後、どのような対策を講じてゆくのでしょうか。

目次
  1. 高市首相「コストプッシュ」に言及
  2. 行き過ぎた円安と輸入物価の「底上げ」
  3. 原油は長期視点で「高止まり」している
  4. OPECプラスの「協調減産」に注意
  5. 「外交」に真の物価高対策あり
  6. [参考]コモディティ全般関連の投資商品例

※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の吉田 哲が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
高市総理は「真の物価高対策」に着手できるか?

高市首相「コストプッシュ」に言及

 10月21日、高市早苗首相は記者会見で、足元の物価について次のように述べました。

「経済・物価・金融情勢を踏まえながら2パーセントの物価安定目標を、コストプッシュだけではなくて、賃金の上昇を伴って緩やかに持続的・安定的な実現に向けて適切な金融政策運営を行うということを期待している」(一部要約)

 筆者が最も注目したキーワードは「コストプッシュだけではなく」です。厳密には「コストプッシュ」と「だけではなく」の二つです。

図:現在の物価高(インフレ)の内訳(イメージ)

図:現在の物価高(インフレ)の内訳(イメージ)
出所:筆者作成

 現在でも、物価高(インフレ)は多くの場合、「製品の需要増加に伴う事象」として語られるケースが多いです。これは、「需要が多い時は物価が上昇し、物価が上昇している時は需要が多い時である」というように、「需要動向が物価動向の原因であり根拠である」という考え方です。経済や金融の教科書では必ずと言って良いほど、このような説明が書かれています。

 こうした需要中心の説明が今なお根強く残っているのは、1980年代などに好景気に物価上昇が目立った経験則の影響が大きいと考えられます。ですが、特に2010年ごろ以降は、世界中でさまざまな原材料の価格が上昇したり、円安が進行したりしたため、需要面だけで物価高を説明することが難しくなっています。

 上の図のとおり、製品需要の増加がきっかけで進行する物価高は「ディマンドプル・インフレ」、そして原材料価格が上昇することがきっかけで進行する物価高は「コストプッシュ・インフレ」と呼ばれます。2010年ごろ以降は、この二つが同時進行しています。

 以下の図のとおり、2010年ごろ以降、日本の輸入物価指数(円ベース、契約通貨ベースともに)において1980年代や1990年代、2000年代前半の低い水準に戻らない「底上げ」状態が続いています。

図:日本の輸入物価指数および国内の消費者物価指数・企業物価指数(2020年=100)

図:日本の輸入物価指数および国内の消費者物価指数・企業物価指数(2020年=100)
出所:日本銀行および総務省統計局のデータを基に筆者作成

 これらの指数は、2022年ごろ以降、目立った上昇を演じました。円ベースの輸入物価指数については、今もなお「高止まり」しています。こうした高止まりの影響もあり、近年、企業物価指数、消費者物価指数は上昇傾向を維持しています。

 先述のとおり、高市首相は、物価動向についての認識を述べる際、「コストプッシュ」および「だけではなく」というキーワードを用いました。このことは、高市首相が、原材料の輸入物価やそれに関わる為替の動向についての認識を持っていることを示しています。

 筆者は、原材料の輸入物価を下げることなくして、真の物価高対策はないと考えています。高市首相は、この領域にどれだけ踏み込み、どの程度、具体的な策を講じることができるのでしょうか。

行き過ぎた円安と輸入物価の「底上げ」

 以下は、原材料の輸入物価に強く影響するドル/円相場の動向と、日本の原油輸入単価とその大元となるドバイ原油(ドル建て)価格の推移です。平時は、日本の原油輸入単価とドバイ原油(ドル建て)価格の推移は似通っています。

 ですが、ドル/円相場が行き過ぎた値動きを演じると、乖離(かいり)が生じます。90円を超えるような円高局面では、日本の原油輸入単価はドバイ原油(ドル建て)価格に比べて安くなります。逆に、140円を超えるような円安局面では、日本の原油輸入単価はドバイ原油(ドル建て)価格に比べて高くなります。

 この点より、物価高対策の一つに「行き過ぎた円安の是正」が挙げられます。高市首相は、この対策にどのように関わることができるか、日本銀行の金融政策の方向性とともに、注目していく必要があります。

図:日本の原油輸入単価・ドバイ原油(2000年を100)およびドル/円相場

図:日本の原油輸入単価・ドバイ原油(2000年を100)およびドル/円相場
出所:財務省、世界銀行などのデータより筆者作成

 また、以下のグラフはエネルギー(左上)、農産物(右上)、穀物(左下)、貴金属(右下)の主要銘柄の価格の推移を示しています。分野を問わず、2010年ごろ以降「底上げ」が発生していることが分かります。

 日本の輸入物価指数が(円ベース、契約通貨ベースともに)、2010年ごろ以降に「底上げ」が発生していることと、合致します。まさにこの点が、日本の輸入物価指数の底上げ、ひいてはコストプッシュ・インフレ、そして日本の物価高の根源と言っても過言ではありません。

「コストプッシュ」について言及した高市首相がこの点を認識している可能性があることは、物価高に悩まされ続けている日本経済にとって、大きな救いであると言えます。

図:主要なコモディティの価格推移

図:主要なコモディティの価格推移
出所:世界銀行のデータを基に筆者作成

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