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金(ゴールド)価格、ついに4,000ドルと2万円の大台に到達

2025/10/13 7:30

 国内外の金(ゴールド)相場が大台に到達しました。今回は、その背景と今後の動向を展望します。米国で生じつつある新しい有事についても述べます。

目次
  1. 4,000ドルと2万円は2年前の2倍以上
  2. 「土台」の上で起きている歴史的な高騰
  3. 有事(伝統的)と有事(非伝統的)の違い
  4. 米国でうごめく新しい有事とは?
  5. [参考] 貴金属関連の具体的な投資商品例

※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の吉田 哲が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
金(ゴールド)価格ついに4,000ドルと2万円の大台に到達

4,000ドルと2万円は2年前の2倍以上

 2025年10月の2週目に、ニューヨークの金先物価格(中心限月)は、1トロイオンスあたり4,000ドル台に到達しました。ほとんど同じタイミングで大阪の金先物価格(中心限月)は、1グラム当たり2万円台に到達しました。

図:NY金先物、大阪金の価格推移(2023年10月2日を100)

図:NY金先物、大阪金の価格推移(2023年10月2日を100)
出所:マーケットスピードIIおよびInvesting.comのデータを基に筆者作成

 こうした大台は、ニューヨーク、大阪ともに2年前の2倍以上の水準です。足元、米国の金利引き下げ観測、ウクライナ・中東情勢や米国の政府機関の閉鎖への懸念、米国の中央銀行に当たる米連邦準備制度理事会(FRB)に関する不安など、さまざまな要因が重なっていることが、大台到達のきっかけとなったと報じられています。

 さまざまな要因の中で、最も大きい上昇圧力を発生させた要因は、図の左側に示したとおり、2023年12月に、FRBが議論の方針を利上げから利下げに転換したことだと、筆者はみています。利下げは、米ドルの保有妙味を低下させ、相対的に金(ゴールド)の保有妙味を大きくする要因です。

 それまでの数年間、FRBは利上げの方針を維持していました。このことにより、ウクライナ戦争が激化して有事(伝統的)ムードが拡大したタイミングでも、ニューヨーク金先物の価格が下落する場面がありました。「ドル高・ドル建て金(ゴールド)安」の構図が存在したためです。

 金(ゴールド)相場にとって重要なことは、FRBが利上げや利下げを実施することではなく、FRBの方針が利上げ・利下げのどちらであるかです。その意味で、利下げムードを醸成しているトランプ大統領の姿勢も、ニューヨークの先物などのドル建て金(ゴールド)に上昇圧力をかけていると言えます。

「土台」の上で起きている歴史的な高騰

 米国の利下げは、金(ゴールド)相場を動かす材料の一つに過ぎません。時間軸は「短中期」で、ドルの代わりという意味の「代替通貨」というテーマに分類することができます。同じ「短中期」のテーマには、先ほど述べた「有事(伝統的)」や株の代わりを意味する「代替資産」があります。

 金(ゴールド)相場を動かすテーマは、短中期だけではありません。中長期には「中央銀行」、超長期には「有事(非伝統的)」があります。こうした時間軸の異なる複数のテーマ、それぞれからもたらされる上昇圧力が層を成していることが、今日に至る長期視点の価格高騰の背景であると筆者は考えています。

 以下は、時間軸の異なる複数のテーマからもたらされる上昇圧力をイメージした図です。

図:ドル建て金(ゴールド)価格の推移イメージ

図:ドル建て金(ゴールド)価格の推移イメージ
出所:筆者作成

 時間軸が「短中期」である「有事(伝統的)」「代替資産」「代替通貨」の三つは、伝統的なテーマです。金融機関や一部の投資家の間で語り継がれている天動説のような存在です。これらの三つテーマはそれぞれ、短中期的な上下の圧力を提供し、金(ゴールド)相場の変動に影響を及ぼしています。

 これらはあくまで「短中期」の時間軸です。このため、2000年代前半に始まり、およそ四半世紀の年月をかけて、4,000ドルや2万円という水準に到達した歴史的な高騰劇を、これらだけで説明することはできません。歴史的な高騰劇を説明する上で、重要な部品(ピース)ではありますが、全てではないのです。

 歴史的な高騰劇を支える土台となっているテーマが、中長期の時間軸の「中央銀行」と、超長期の時間軸の「有事(非伝統的)」です。この二つは、2010年ごろから目立ち始めた「非伝統的テーマ」です。

 こうした「土台」となるテーマが存在することにより、今日の歴史的な高騰劇が起きていると言えます。伝統的テーマ(天動説)と非伝統的テーマの二つを総合的に分析する手法は、天動説に対する地動説であると筆者は考えています。ここで述べている地動説こそ、現代の金(ゴールド)相場を分析するために欠かせない考え方であると言えます。

図:ドル建て金(ゴールド)に関わる七つのテーマ(2025年)

図:ドル建て金(ゴールド)に関わる七つのテーマ(2025年)
出所:筆者作成

 全体的には、短中期は三つ、中長期は中央銀行のほか宝飾需要、鉱山会社を含めた三つ、超長期は一つ、合計七つのテーマが存在します。これらを俯瞰(ふかん)することで初めて、4,000ドル到達の背景を説明できるようになります。

 円建て金(ゴールド)が2万円に到達したことについては、世界の指標であるドル建て金(ゴールド)に追随したことが直接的な背景ですが、追随の仕方に「ドル/円」の変動が強弱を加えたことに留意する必要があります。

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