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iDeCoとマッチング拠出の引き上げが改正予定。違いをチェック:口座管理手数料や運用商品

2025/10/7 16:00

 2027年1月からiDeCoの掛金枠が大幅に引き上げられ、2026年4月からは企業型確定拠出年金のマッチング拠出の引き上げが先行実施される予定。iDeCoとマッチング拠出は、本人がお金を出すこと、税制優遇など仕組みはほぼ同じ。ただ、どちらか一つしか活用できない。口座管理手数料や運用商品の違いをチェックし、自分に合った選択を考えてみよう。

目次
  1. iDeCoとマッチング拠出の限度額引き上げ、先行するのはどっち?
  2. マッチング拠出の強みは「口座管理手数料ゼロ」、弱みは「商品ラインアップ」
  3. iDeCoとマッチング拠出、選べる人はじっくり悩もう

iDeCoとマッチング拠出の限度額引き上げ、先行するのはどっち?

 iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)の限度額引き上げは、2027年1月の掛金分からの対応を目指しており、業界ではシステム準備が進められているようです。

 現状、企業年金のある会社員のiDeCoは月2.0万円が上限です。さらに、「企業年金の掛金が月3.5万円以上の場合、月5.5万円の上限との差額がiDeCo枠」という制限があります。

 限度額が引き上げられると、最大上限が月6.2万円になるだけでなく、月2.0万円の上限が撤廃されるため、大幅な緩和となる仕組みです(企業年金のない会社員は月2.3万円が上限ですが、規制緩和により月6.2万円まで枠が広がる予定)。

 これに伴い、企業型の確定拠出年金内で個人が追加掛金を上乗せさせるマッチング拠出制度においても、同様の規制緩和が行われます。

 まず、マッチング拠出の金額は「会社掛金以下とする」という制約が外されます。代わりに、「月5.5万円と企業年金の掛金額との差額をマッチング拠出の枠とする」というシンプルな制度に手直しされます。これは、iDeCoの上限引き上げと似ている感じです。

 面白いのは、企業型確定拠出年金のマッチング拠出改正が先行して実施される予定であることです。

 厚生労働省の資料によれば、マッチング拠出の上限規制撤廃を2026年4月予定としています。iDeCoの限度額引き上げは、現状2027年1月拠出分からと予定されているため、マッチング拠出が8カ月も先行実施されることになります(制度としては2026年12月から切り替わり、実際の掛金は2027年1月納付分から引き上げられる)。

 なぜ、マッチング拠出の規制緩和が先行するのでしょうか。企業型確定拠出年金は各社が規約を作成しており、その変更や周知に時間がかかります。そのため、iDeCoよりも先行実施し、遅くとも2027年1月には全国の企業型確定拠出年金が対応済みとなり、iDeCoに足並みをそろえてもらうことがねらいのようです。

 そうなると、「8カ月の間は、マッチング拠出の上限のほうが有利になる」可能性が出てきました。

 規制緩和後のマッチング拠出の上限は、以下の計算式で算出されます。

マッチング拠出の上限=月5.5万円-{(確定給付企業年金がある場合)他制度掛金相当額+(企業型確定拠出年金がある場合)会社の掛金額)}

 この式を簡潔に表にすると、以下のようになります。

他制度掛金相当額+企業型の確定拠出年金掛金額 マッチング拠出上限
0.5万円 5.0万円
1.0万円 4.5万円
2.0万円 3.5万円
3.0万円 2.5万円
4.0万円 1.5万円
5.5万円 0円

マッチング拠出の強みは「口座管理手数料ゼロ」、弱みは「商品ラインアップ」

 iDeCoに関する情報は豊富で分かりやすい一方、マッチング拠出は各社の社内制度であるため、あまり知られていません。

 まず、iDeCoとマッチング拠出が共通して持つ大きなメリットは「所得税・住民税非課税」である点です。どちらも拠出額全額が所得控除の対象となります。

 マッチング拠出のみのメリットとして挙げられるのは、「口座管理手数料ゼロ」であることです。必ずゼロとは限らないのですが、ほとんどの企業ではマッチング拠出の利用者に手数料の追加負担を求めていません。

 これははっきりとiDeCoに勝ります。手数料がかからない場合、マッチング拠出のほうが年間2,052円有利ということになります(運営管理機関が手数料を取る場合は、その費用もかかる)。

 一方で、ネックもあります。企業型確定拠出年金は、商品ラインアップが古く、信託報酬などのコストが割高だったり、伝統的なアセットクラスで運用する商品しかない場合があります。例えば、オールカントリー系の投資信託は企業型確定拠出年金では採用されていないことが多いと思います。

 もし割高な投資信託しかないなら、年間2,000円程度のコストを払ってでもiDeCoを利用した方がいいかもしれません。iDeCoの資産が200万円あって、信託報酬が年0.1%であれば、年間の運用コストは2,000円です(資産価値の騰落は含めず)。

 ところが、マッチング拠出の資産が200万円相当あり、信託報酬が年1.0%の投資信託しかなければ、年間2万円の運用コストを払っていることになります。

 iDeCoとマッチング拠出の総枠は基本的には中立的になります。拠出できる額がどちらも同じなら、iDeCoの口座管理手数料を支払ってでも、低コストの運用商品を選択したほうが正解となるかもしれません。

iDeCoとマッチング拠出、選べる人はじっくり悩もう

 企業型確定拠出年金は、各企業によって取り組みが大きく異なります。「信託報酬年0.1%のレベルでも安い商品に商品入れ替えを行う!」という企業もあれば、「20年前に導入したときの商品リストです。何か問題が?」と問題意識が低い企業もあります。

 まずは自身の会社の確定拠出年金についても意識を持っていただきたいと思います。商品ラインアップの追加は比較的簡単に行えますので、労働組合経由で指摘してみるのもいいでしょう。

 マッチング拠出制度については、全ての企業型確定拠出年金で採用しているわけではありません。選択肢があるのは、「会社が企業型の確定拠出年金を実施している」会社員であり、かつ「会社がマッチング拠出を導入している」場合に限られます。

 言い換えれば、マッチング拠出を採用している企業型確定拠出年金がある会社員は、「iDeCoとマッチング拠出を選択する自由」があるということです。ぜひ、この選択の自由を最大限活用してみてください。

 なお、iDeCoとマッチング拠出はどちらか片方しか利用できません。もしマッチング拠出を始めたい場合は、iDeCoの掛金をまず停止し、マッチング拠出スタートの手続きを社内で行うことになります。このあたりの詳細は、社内のアナウンスを確認してみてください。

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