いよいよFRBが利下げを再開。米国株や金価格は連日の史上最高値更新、日経平均も史上最高値を更新した。BTC相場はこの動きについていけなかったが、史上最高値まであと一歩のところに達している。なぜ切り返したのか? ここからどうなるのか? 楽天ウォレット・シニアアナリスト:松田康生、通称MATT(マット)が、今後の方向性を分析する。
※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の松田 康生が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「ビットコイン、8月以来の最高値更新!ピーク3,500万円に向かって、離陸開始!」
9月のビットコインの振り返り:少し遅れたが離陸開始
BTC/JPY推移と9~10月イベント
利下げ再開観測
9月のビットコイン(BTC)相場は小幅上昇。前回、8月の雇用統計での大幅下方修正を受けて9月利下げ再開観測が浮上、12.4万ドルの史上最高値を更新したが、その後、失速した理由として、年内最弱の8月のアノマリーや4年サイクルのピーク前の調整をご紹介した。
しかし、9月初に10.7万ドルで下げ渋ると、9月の雇用統計もさえない内容となり、9月利下げが濃厚となる中、BTCはヘッドアンドショルダー(チャート上に現れる三つの山のような形をしたパターン。相場の反転を示すサイン)を形成し、底打ちを鮮明にした。
9月の雇用統計でも雇用の減速が顕著となり、消費者物価指数(CPI)も無難な結果となると、利下げを織り込むようにS&P500種指数(S&P500)が連日史上最高値を更新、BTCもじりじりと値を上げていった。
17日(日本時間18日)に利下げされると、米株や金価格などが史上最高値を更新し続ける一方、BTCは11.8万ドルでピークアウト、月末にかけて10.8万ドルまで失速した。
金融政策とBTC相場
上段:BTC/USD 下段:FF(米政策金利)
ここで、すこし脱線するが、米金融政策とBTC価格の関係をおさらいしたい。モノの量が一定でもお金の量が増えると、モノの価格が上がり、相対的にお金の価値は下がる。
2020年以降、BTCがデジタルゴールドとしてもてはやされるようになったのは、こうしたお金の供給過剰によるインフレへのヘッジとして、特に米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策に敏感に反応するようになったからだ。
市中に出回るお金の量には、大きく二つの測り方がある。一つは法定通貨の発行残高、もう一つは現金と預金残高の合計だ。前者をベースマネー、後者をマネーサプライと呼ぶ。
2020年以降のデジタルゴールドブームでは、量的緩和によるベースマネーの膨張が資産インフレを引き起こした。一方、利下げを行うと貸し出しが増え、マネーサプライが拡大しやすくなる。その結果、株、コモディティ、不動産、BTCなどいずれも上昇する資産インフレが起こりやすくなる。
BTCの場合、2021年11月のテーパリング開始でピークアウト、2022年12月の利上げ幅縮小で切り返し、2023年9月の利上げ打ち止めで上昇に転じた。2024年9月の利下げ再開で再び上昇したが、2025年1月の利下げ停止で低迷、今回の利下げ再開で上昇を再開することが期待されている。
FRBの分裂
その理由の一つに、FRBメンバーの分裂が挙げられる。米連邦公開市場委員会(FOMC)出席者の金利予測を示したドットチャートでは、前回6月時点で年内利下げ不要と予想したメンバーが19名中7名いた。利下げ再開で予想が外れたこの7名が今後をどう予想するかが注目されたが、6名が年内据え置き、1名が年内利上げと予想した。
9月利下げの背景は雇用の悪化だった。9月の雇用統計では、6月の非農業部門雇用者数(NFP)がマイナスに下方修正され、2024年4月から2025年3月までのNFPが過去最大の91.1万人下方修正された。ADP民間雇用統計も2カ月連続のマイナスとなり、これはコロナ禍の2020年7月以来、さらにさかのぼればリーマンショック後の不況下の2010年以来となる。
一方、例えばNY連邦準備銀行のウィリアムズ総裁は、8月の雇用統計直後にも雇用は堅調との見方を崩さず、市場の動揺を招いた。そして、今回のドットチャートで、雇用の悪化を認めていないメンバーが7名そのまま残っていることが判明した。
実際、FOMC後のブラックアウト期間が明けると、バーキン、ムサレム、ボスティック、ハマック各地区連銀総裁のタカ派発言が相次ぎ、10月利下げ観測に影を落とした。米株も9月23日以降、若干調整する場面が見られた。
しかし、9月30日の米会計期末までにつなぎ予算が可決せず、米政府が一部閉鎖となった。
金融政策との関係では、雇用統計の発表延期で判断が難しくなった、公務員の一時帰休で景気が下押しされるといった声が聞かれたが、同時に雇用の悪化の責任を政治に転嫁できることとなり、タカ派メンバーが利下げを受け入れやすくなったとの見方が浮上。10月利下げが確実視されるようになった。
ドットチャート
アノマリー
BTC/USD 月別騰落率
ただ、それでも米株や金、さらには日本株まで史上最高値を更新し続ける中で、9月後半のBTCがさえなかった一因は季節性にあるのかもしれない。月次のアノマリーでは、9月は8月に次いでBTCが弱い時期だ。逆に、10月は2月に次いで強い時期となる。
それだけの理由で9月の不振を説明できるとは思わないが、10月に入っての急反発を見ると納得する部分がある。
加えて、10月1~8日は国慶節(こっけいせつ:中華人民共和国の建国記念日)だ。かつてマイナーが中国に集中していた名残りか、春節や黄金週、国慶節といった中国の大型連休は、売り手となる中国勢が不在となり、BTCが上がりやすい。9月30日~10月8日で見ると、過去10年で8回上昇している。
アノマリーとは、理由はよく分からないが金融市場で頻繁に観察される事象を指すが、これらの季節性がどういうロジックで現れるのかは解明されていないものの、今回の9月の不調と10月の反発に影響はありそうだ。
ちなみに、FRBの金融政策にも季節性が見られる。過去20年で見ると、5月と6月は利上げしかしていないが、逆に10月は4回利下げしている最もハト派な月だ。
月別FRB利上げ・利下げ一覧
トレジャリー企業
ストラテジー(旧マイクロストラテジー)BTC購入額
最後に9月の相場が不発だった原因に外部資金を調達して暗号資産を購入する「トレジャリー企業の減速が挙げられる。ストラテジー社の購入も年初から7月までは月25億ドルペースだったが、8月と9月は6億ドルに減速した。
また2,000億円の海外での新株発行に成功したメタプラネット社だったが、割引で株を入手した投資家の売り圧力もあり株価が低迷、株価上昇を前提とした資金調達の持続性を疑問視する声も聞かれるようになった。
しかしBloombergがステーブルコイン発行最大手のテザー社が5,000億ドルの評価で最大200億ドルの資金調達を計画していると報じ、続いてソフトバンクやキャシー・ウッド氏率いるアーク・インベストメントの参加観測が報じられた。
同社は第2四半期に10億ドル分のBTC購入を発表しており、この巨額調達が成功した暁には相応のBTC購入につながると好感され、BTCの反発の一因となった。
ETF
上場投資信託(ETF)でも特筆すべき動きがあった。市場ではBTC、イーサリアム(ETH) ETFの成功を受け、次にどの銘柄の現物ETFが承認されるか注目されているが、リップル(XRP)、ソラナ(SOL)、カルダノ(ADA)、ライトコイン(LTC)、ドージコイン(DOGE)のETFについて、大きな進展があった。
新規暗号資産銘柄のETF申請には「19b-4」と呼ばれる上場予定の取引所の上場基準変更と、「S-1」と呼ばれる運用会社の目論見書の審査が必要となる。このうち最長で240日要する前者の申請が一定の条件下で免除されることとなった。S-1だけであれば1-2カ月の間に承認されるという思惑で、これらの銘柄が上昇し、BTC相場にも影響した。
ビットコイン、8月以来の最高値更新!ピーク3,500万円に向かって、離陸開始!
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