エヌビディアはインテルに50億ドル出資し、AI関連半導体を共同開発する。インテルにとって売れる製品を開発できるか注目したい。2026年はインテル、サムスン電子の前工程投資が増加する可能性がある。今後6~12カ月間のインテルの目標株価を45ドルとする。東京エレクトロン、レーザーテック、ディスコの目標株価を引き上げる。
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著者の今中 能夫が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「インテルの再生ストーリーと半導体製造装置(エヌビディアのインテルへの出資で始まるか、半導体設備投資の新局面)」
毎週月曜日午後掲載
本レポートに掲載した銘柄:インテル(INTC、NASDAQ)、東京エレクトロン(8035、東証プライム)、レーザーテック(6920、東証プライム)、ディスコ(6146、東証プライム)、アドバンテスト(6857、東証プライム)
1.エヌビディアがインテルに対して50億ドル出資する。
2025年9月18日(木)、エヌビディアとインテルの両社は、大規模データセンター向け、企業向け、コンシューマー向けに使うデータセンター向け、パソコン向けのカスタム半導体(特定用途向け半導体)を共同開発すること(発売時期は不明)、そして、エヌビディアがインテルの普通株に50億ドル出資することを発表しました。
また、9月25日の報道によれば、インテルはアップルにも出資交渉を行っている模様です。さらに同日の報道では、TSMCに対しても出資、提携を巡って接近していると報じられました。
エヌビディアのインテルへの出資と両社が共同開発するAI関連半導体、彼らが言う「スーパーチップ」の共同開発はもちろんインテルにとって望ましいものです。エヌビディアのCEO、ジェンスン・フアン氏によると、今回の提携は、両社に年間25~50億ドルの収益機会を生み出す見込みだということです。
数世代にわたる経営者の失策、EUV露光装置の導入の遅れ、AI半導体(AI用GPU)への進出の遅れ、身の丈をわきまえない無茶な海外工場の新設増設と製品ラインの拡充がうまくいかなかった結果、今のインテルはAMDにパソコン向け、サーバー向けともCPUの市場シェアを取られ、赤字垂れ流しとなっています。
2025年3月18日にCEOに就任したリップブー・タン氏は、欧州中心に過剰となりそうな新工場建設を中止し、リストラを進めています。このためにリストラ費用が必要ですが、パソコン向け、サーバー向けとも収益力が低くなっているため、その資金を手持ちの資産(金融資産)を売却して捻出している状況です。従って、エヌビディアからの50億ドルの出資、それに先立つソフトバンクからの20億ドル、米国政府からの約89億ドルの出資を合わせると、リストラを進めエヌビディアとの共同開発を行い、さらに今後必要な設備投資を行うための十分な資金を得つつあると言えます。アップルやTSMCからの出資が実現すれば、さらに再建が進むことになると思われます。
2.インテルの業績動向。大赤字が続くが今期は赤字縮小の可能性がある。
ここでインテルの業績動向を見ておきます。
インテルの2025年12月期2Q(2025年4-6月期、以下今2Q)は、売上高128.59億ドル(前年比0.2%増)、営業損失31.76億ドル(前年同期は19.64億ドルの赤字)となりました。再利用先が見つからなかった旧世代の余剰ツール約8億ドルの減損、償却と約2億ドルの一時費用を計上したため売上総利益率が低下しました。加えてリストラ費用も増加したため、今1Qよりも営業赤字が拡大しました。
セグメント別に見ると、クライアント・コンピューティング・グループ(CCG、パソコン向け)は、売上高78.71億ドル(同3.3%減)、営業利益20.53億ドル(同22.3%減)となりました。2024年夏以降に起きたデスクトップPC用CPUの不具合によって、インテル製のデスクトップ用CPUの市場シェアが大きく下落しましたが、それが今も響いている模様です。
データセンター&AI(DCAI、サーバー向け)は、売上高39.39億ドル(同3.5%増)、営業利益6.33億ドル(同2.62倍)となりました。今2QはAIサーバー向け、ストレージコンピューティング向けCPUの増加と、主力機種の「Xeon(ジーオン)6」の増産が進み出荷が増えたこと、DCAIの前2Qは減収減益だったのでその反動があったことで大幅増益となりました。
インテル・ファウンドリは、売上高44.17億ドル(同3.2%増)、営業損失31.68億ドル(前年同期は28.02億ドルの赤字)となりました。インテル・ファウンドリの事業は、インテルのパソコン向け、サーバー向けCPUの生産と、外部顧客向けの半導体受託生産ですが、外部顧客は多くはないと思われ、自社向け生産が中心と思われます。
今3Qについては、会社側売上高ガイダンスは、126~136億ドル、レンジ平均値131億ドル(前年比1.4%減)です。CCG、DCAIともに、今1Q、今2Qには米国の関税上昇の前の駆け込み需要があった模様なので、今3Qも駆け込み需要がある程度発生する可能性があります。新製品、既存製品とも、大きなヒットは期待できませんが、これは、AMDとの間で競争力に差がついてしまったためでもあります。AMDはパソコン向けでは従来インテルのシェアが大きかったオンラインゲーム愛好家の開拓を積極的に行ってきましたが、これがインテルの不具合と相まってデスクトップPC市場でのAMDのシェア上昇に繋がった模様です。
サーバー向けでもAMDのシェアが伸びています。AMDはAMD製AI半導体とサーバー用CPUの両方を販売していることがシェア上昇につながった模様です。また、インテルの現在の主力である「Xeon6」シリーズは評価は高い模様ですが、生産能力に限界があり、DCAIの増収率は一桁台に止まっています。
一方で、大きな人員削減が一巡したと思われるため、赤字は今3Qから縮小する可能性があります。
このような見方から、楽天証券ではインテルの業績予想を、2025年12月期は売上高528億ドル(前年比0.6%減)、営業損失65億ドル(2024年12月期は116.78億ドルの赤字)、2026年12月期は売上高567億ドル(同7.4%増)、営業損失30億ドルとしました。また参考値ですが、2027年12月期を売上高615億ドル(同8.5%増)、営業利益17億ドルと予想します。
今計画されているパソコン向け、サーバー向け製品を前提すると、競争力が十分ではないと思われるため、黒字転換は2027年12月期になると予想しました。ただし、エヌビディアと共同開発するAI関連半導体の中身次第では、2027年12月期の黒字幅がより大きくなる可能性があります。
表1 インテルの業績
時価総額 155,100百万ドル(2025年9月26日)
発行済株数 4,369百万株(完全希薄化後、Diluted)
発行済株数 4,369百万株(完全希薄化前、Basic)
単位:百万ドル、%、倍
出所:会社資料より楽天証券作成。
注1:当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。
注2:EPSは完全希薄化後(Diluted)発行済株数で計算。ただし、時価総額は完全希薄化前(Basic)で計算。
注3:会社予想は予想レンジの平均値。
表2 インテルのセグメント別業績(四半期)
出所:会社資料より楽天証券作成
表3 インテルのセグメント別業績(通期)
出所:会社資料より楽天証券作成
グラフ1 デスクトップPC用CPUの市場シェア
グラフ2 モバイル用CPUの市場シェア
グラフ3 サーバー用CPUの市場シェア
グラフ4 インテルの設備投資(四半期ベース)
3.今後6~12カ月間のインテルの目標株価を45ドルとする。
今後6~12カ月間のインテルの目標株価を45ドルとします。
エヌビディアからの出資もさることながら、AI関連半導体を共同開発することを重視しました。目標株価に設定に当たっては、2022年12月期に業績が悪化して株価が下落する前の株価レンジが50ドル前後だったことを考慮しました。
中長期で投資妙味を感じますが、足元は赤字なので投機的な株価の動きになる可能性もあります。
4.半導体設備投資では、後工程に続き前工程投資が活発になる可能性がある。
インテルが、エヌビディアその他の出資者から資金を得て、リストラを進め、エヌビディアとの間でAI向けの半導体開発を行って、売れる製品を作ることができるならば、2025年12月期は過剰能力を削減するために設備投資を大幅に減らしていますが、2026年12月期の設備投資は減少率が縮小するか今期比横ばいになる可能性があります。
会社側はエヌビディアとの提携が発表される前の今2Q決算説明会において、2026年も引き続き設備投資削減に取り組むとしていますが、新製品が売れるようになれば、新たな設備投資が必要になる可能性があります。
また、しばらく設備投資が停滞していたサムスン電子に設備投資増加の動きがあります。HBM3eとHBM4への投資に加えて、テスラから次々世代EV用半導体を受注したことにより、ファウンドリ事業を強化する動きがあります。
これらを総合的に考えると、2026年の半導体設備投資は後工程だけでなく、前工程投資も増える可能性があります。インテルが大きなリストラに入ったためEUV露光装置を始めとした前工程装置市場が停滞していますが、インテルへのエヌビディアの出資と共同開発、サムスン電子における先端ロジックとファウンドリ事業強化の動きを見ると、今後の前工程装置の動きに注目したいと思います。
グラフ5 先端ロジック3社の半導体設備投資額
5.半導体製造装置メーカー3社の今後6~12カ月間の目標株価を引き上げる。
東京エレクトロン
インテルへのエヌビディアの出資と、サムスン電子のロジック投資が回復する可能性が出てきたことを考慮し、前工程(ウェハプロセス)が主力の東京エレクトロンに注目したいと思います。楽天証券の2026年3月期、2027年3月期業績予想を上方修正します。
今後6~12カ月間の目標株価を、前回の2万6,000円から3万2,000円に引き上げます。楽天証券の2027年3月期予想1株当たり利益(EPS)1,213.3円に、今の評価である想定株価収益率(PER)25~30倍を当てはめました。
中長期で投資妙味を感じます。
表4 東京エレクトロンの業績
発行済み株数 458,156千株
時価総額 12,161,751百万円(2025/9/26)
単位:百万円、円
出所:会社資料より楽天証券作成
注1:当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。
注2:発行済み株数は自己株式を除いたもの。
表5 東京エレクトロン:半導体製造装置のアプリケーション別売上構成比と売上高(新規装置のみ)(年度ベース)
出所:会社資料より楽天証券作成。
注1:売上高は会社公表の売上構成比から楽天証券計算。
注2:2021年4-6月期からは新収益認識基準。
注3:端数処理のため合計が合わない場合がある。
レーザーテック
今後6~12カ月間の目標株価を、前回の2万4,000円から2万6,000円に引き上げます。
楽天証券の2026年6月期、2027年6月期業績予想と2028年6月期業績予想(参考値)は修正しません。ただし、楽天証券の2027年6月期予想EPS860.4円に対して、前回よりも高い想定PER30倍前後を当てはめました。
インテルへのエヌビディアの出資と、サムスン電子のロジック投資が回復する可能性が出てきたことを考慮すると、EUV対応のフォトマスク欠陥検査装置「ACTIS A150」「同A300」の受注が会社側が予想するように2026年早々にも回復する可能性が高いと思われます。
中長期で投資妙味を感じます。
表6 レーザーテックの業績
発行済み株数 90,190千株
時価総額 1,779,449百万円(2025/9/26)
単位:百万円、円
出所:会社資料より楽天証券作成
注1:当期純利益は親会社の所有者に帰属する当期純利益。
注2:発行済み株数は自己株式を除いたもの。
表7 レーザーテックの売上高、受注高内訳
出所:会社資料より楽天証券作成
注:2024年6月期以降の売上高、受注高の内訳は会社開示の億円単位の数字を百万円単位で表示したため、合計が合わない場合がある。
ディスコ
今後6~12カ月間の目標株価を、前回の5万1,000円から5万6,000円に引き上げます。
HBMの生産に必要な高性能グラインダ(ウェハの底面を薄く削る)で高いシェアを持っています。2026年後半にエヌビディアから出荷開始される予定の新型AI半導体「Rubin」に搭載される予定の「HBM4」向けの新たな設備投資が、今3Qまたは今4Qにも開始されると想定しました。このことを考慮して楽天証券業績予想を、2026年3月期は変更しませんが、2027年3月期は小幅上方修正します。
楽天証券の2027年3月期予想EPS1,378.0円に今の評価である想定PER40~45倍を当てはめました。
中長期で投資妙味を感じますが、PER水準が高いため、値動きが荒くなる可能性もあると思われます。
表8 ディスコの業績
時価総額 5,063,214百万円(2025/9/26)
発行済み株数 108,420千株
単位:百万円、円
出所:会社資料より楽天証券作成
注1:当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。
注2:発行済み株数は自己株式を除いたもの。
注3:2023年4月1日付けで1対3の株式分割を実施。これに対応して過去の配当額を遡及修正している。
アドバンテスト
業績予想と目標株価1万7,500円は変更しません。2025年9月16日付け楽天証券投資WEEKLYに掲載した業績表と同じ表を載せておきます。
中長期で投資妙味を感じますが、株価は割安ではないため、短期的な株価変動が激しくなる可能性もあると思われます。
表9 アドバンテストの業績
発行済み株数 731,712千株
時価総額 10,587,873百万円(2025/9/26)
単位:百万円、円
出所:会社資料より楽天証券作成
注1:当期利益は親会社の所有者に帰属する当期利益。
注2:発行済み株数は自己株式を除いたもの。
注3:2023年10月1日付けで1対4の株式分割を行った。表中の配当額は分割にあわせて遡及修正している。
本レポートに掲載した銘柄:インテル(INTC、NASDAQ)、東京エレクトロン(8035、東証プライム)、レーザーテック(6920、東証プライム)、ディスコ(6146、東証プライム)、アドバンテスト(6857、東証プライム)
インテルの再生ストーリーと半導体製造装置(エヌビディアのインテルへの出資で始まるか、半導体設備投資の新局面)
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