9月の日米金融政策に関心が向かっています。日本銀行による利上げ実施はまだ先となりそうですが、早期の利上げ期待で銀行株に注目が集まっています。今回は、再編期待が高まる地方銀行株にスポットを当てたいと考えます。
日銀、利上げのタイミングに注目
注目されたジャクソンホール会合では、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が、雇用情勢の下振れリスクを指摘し、利下げを「慎重に進める」と説明しました。「金融政策は既定のコースにはない」として今後もデータ次第で判断する姿勢は強調したものの、市場は「ハト派」な見解と捉え、米国株は買い優勢となりました。
9月16、17日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)では利下げが実施される公算が大きくなっています。一方、その直後の18、19日に開催される日本銀行による金融政策決定会合では、利上げ実施に関する議論が行われる予定です。
利上げ実施時期は年末もしくは今年度末の3月あたりという意見が多い中、9月の日銀会合でどのような議論がなされるか、そして、日銀会合後の植田和男日銀総裁が記者会見にて、利上げのタイミングをどのように考えているのかが注目点となります。
銀行株にとって利上げが追い風となる理由
今回はこの利上げが追い風になるといわれている銀行株についてお話したいと思います。まずは、なぜ利上げが銀行株の追い風になるかを整理します。
一言でいうと「利ザヤ拡大による収益改善」です。利上げは通常、銀行が貸出金利と預金金利の「ネット金利収入(利ザヤ)」を広げるチャンスとなります。実際、高金利局面では銀行業の収益性は高まります。
特にインフレ率が予想を上回る形で上昇した際には、銀行株は他の業種に比べて相対的に良好なパフォーマンスを示す傾向があります。これは金利の上昇に対して預金金利がゆっくり上がることが多いため、利益幅が拡大するためです。
実際、2024年3月に日銀が17年ぶりに政策金利を引き上げたことで、銀行株は株価収益率(PER)改善や自己資本利益率(ROE)向上を背景に買われました。
一方、全て追い風というわけではありません。金利の急上昇や長期化は貸出需要を抑制し、既存の国債や社債など債券型資産の評価損を招く可能性があります。特に地方銀行(地銀(第二地銀含む))は資本がメガバンクよりも小さいことから、こうしたショックに対する懸念は無視できないと考えます。
M&A加速、注目集まる「地方銀行株」
このような特徴を持つ銀行株の中で、私は地銀株に注目しています。合併・再編の動きが加速しているからです。
地銀は利上げ環境の中、規模を拡大し預金や収益基盤を強化するため、買収や合併(M&A)や包括業務提携が活発化しています。
2025年だけでも、1月に愛知県を地盤とする中京銀行と愛知銀行が合併しあいちフィナンシャルグループ(7389)が誕生。青森県では青森銀行とみちのく銀行が合併しプロクレアホールディングス(7384)が誕生しました。3月には、しずおかフィナンシャルグループ(5831)傘下の静岡銀行、山梨中央銀行(8360)、長野県地盤の八十二銀行(8359)の3行が包括的な業務提携を締結し、業務効率化や共同サービス展開に向けた協力を進めています。
翌4月には、新潟県を地盤とする第四北越フィナンシャルグループ(7327)が、群馬銀行(8334)と2027年をターゲットとした経営統合の基本合意書を締結。7月には、千葉銀行(8331)と千葉興業銀行(8337)が経営統合を検討しているとの報道がありました。
8月下旬にも、「地銀再生プロジェクト」を進めるネット証券最大手のSBIホールディングス(8473)が、岩手県地盤の東北銀行(8349)との資本・業務委託契約を締結しました。
2019年の島根銀行(7150)を皮切りに、福島銀行(8562)、福岡県地盤の筑邦銀行、静岡県地盤の清水銀行(8364)、群馬県地盤の東和銀行(8558)、東北地盤のじもとホールディングス(7161)傘下のきらやか銀行と仙台銀行、新潟県地盤の大光銀行(8537)、茨城県地盤の筑波銀行(8338)を経て、東北銀行で地銀連合の数は10行まで拡大しました。
地銀は人口減少に伴う預金流出といった構造課題に直面しており、監督する金融庁は、地域金融機関に対し、投資銀行機能の強化や他行・非銀行との連携を促し、M&A支援として最大30億円の補助も提供するなど生き残りを支援しています。金融庁に登録されている地銀と第二地銀(昔の相互銀行)の数は100行を割り込んでいます(2024年3月時点)。
このうち、3行以上、地銀と第二地銀がある都道府県は、福島県、山形県、岩手県、富山県、東京都、千葉県、静岡県、福岡県、沖縄県です(2025年1月時点)。当然ながら、地域の諸事情もありますが、経済、人口を考慮しての「オーバーバンキング」を是正する動きは今後強まるでしょう。
そして、第四北越FGと群馬銀行、静岡銀行と山梨中央銀行と三十三銀行のような近隣地域を地盤としている地銀同士の再編、つまり広域連合も加速すると考えます。
ふくおかフィナンシャルグループ(8354)、コンコルディア・フィナンシャルグループ(7186)、西日本フィナンシャルホールディングス(7189)、めぶきフィナンシャルグループ(7167)、九州フィナンシャルグループ(7180)のような事例です。
再編期待の地銀5銘柄
何かしらの業務提携や広域連合などを展開している地銀、第二地銀は2025年8月24日時点で7割に達しています。地銀、第二地銀は、地域に根差した銀行としての「深化」と、規模を生かした「進化」の両面を模索する難しい局面にありますので、生き残りをかけた再編は急務といった状況です。
今回はこうした背景を考慮して、再編の思惑が高まりそうな地銀を5行紹介します。
| 銘柄名 | 証券コード | 株価(円) (8月26日終値) |
特色 |
|---|---|---|---|
| 岩手銀行 | 8345 | 3,770 | 工場誘致が進む岩手県、強い貸出手が必要か |
| 富山銀行 | 8365 | 1,656 | 生き残りをかけた再編期待高まる |
| 滋賀銀行 | 8366 | 6,540 | ありあけキャピタルによる「京滋グループ」構想 |
| 宮崎銀行 | 8393 | 4,435 | メガ地銀グループひしめく九州で再編進むか |
| 池田泉州HD | 8714 | 668 | 有力地銀ひしめく関西、再編への思惑強い |
岩手銀行<8345>
岩手県を地盤とする地銀です。岩手県は、預金量・貸出金トップの同行のほか、東北銀行、第二地銀の北日本銀行(8551)の3行があります。東北銀行が8月21日にSBIグループが掲げる「地銀再生プロジェクト」に参加することを発表したことから、独立系の同行と北日本銀行も何かしらの動きを示すのではないかと考えます。
岩手県は、東北地方や中国、四国地方同様、人口は減少していますが、新幹線などインフラが整備されていることから、半導体や自動車、IT関連などの大きな工場の誘致に成功しています。地域の貸出手として財務面で強い地銀の存在は必要ですので、再編期待が高まると考えます。
富山銀行<8365>
富山県を地盤とする地銀です。この地域では、ほくほくフィナンシャルグループ(8377)傘下の北陸銀行が圧倒的なシェアを誇っています。また、富山県の第二地銀の富山第一銀行(7184)のほうが規模は大きく、富山銀行の預金量は富山第一銀行の3分の1ほどと厳しい状況にあります。
こうした状況下、この地域は、生き残りをかけた再編が起こる可能性が高いと考えます。基本、再編は規模が大きい地銀が中心になりますが、富山銀行の株価が富山第一銀行と比べると大幅に出遅れていることから株価の変化率が大きくなるとみています。
滋賀銀行<8366>
千葉銀行と千葉興業銀行の再編を仕掛けたといわれている「ありあけファンド」が同行の株を保有していることで注目します。同行は大阪のベッドタウンである滋賀県を地盤とする唯一の地銀ですが、隣の京都府には、全地銀預金量トップ10に入る有力地銀の京都フィナンシャルグループ(5844)がいます。
「京滋グループ」構想への思惑は根強く、実現すれば、地銀トップクラスの預金量のメガ地銀が誕生します。株価は年初来高値を更新しており、1990年につけた上場来高値(修正済み)7,500円を意識する展開に期待します。
宮崎銀行<8393>
宮崎県を地盤とする地銀で、同県は第二地銀の宮崎太陽銀行(8560)もあります。九州は地銀連合の動きが早く、ふくおかFG、西日本FHD、九州FGとメガ地銀グループが3行もあります。また、佐賀共栄銀行(非上場)がアイザワ証券グループ(8708)と、大分銀行(8392)が野村ホールディングス(8604)と連携を深めるなど銀証連携も活発です。
こうした連携を強める中、宮崎県の2行は独立系のままですので、生き残りをかけた再編の動きが出てもおかしくないと考えます。
池田泉州ホールディングス<8714>
関西を地盤とする独立系の地銀グループで、同行も「ありあけファンド」が株を保有していることで注目します。証券会社の東海東京フィナンシャル・ホールディングス(8616)と合弁で証券事業を展開していることから、東海東京FGとの連携強化への期待感も高いと考えます。
関西には、同じ大阪府にはりそなホールディングス(8308)傘下の関西みらい銀行、京都府には京都FG、和歌山県には紀陽銀行(8370)、奈良県には南都銀行(8367)と有力地銀がひしめいています。関西連合への思惑も高めたいと思います。
再編の思惑広がる「地銀」5銘柄_利上げは収益に追い風!
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