株主優待の新設が増加しており、人気の優待投資の選択肢が増えています。国内株式は高配当株が人気のようですが、優待までもらえるとなれば投資先として魅力的でしょう。しかし、優待を新設したばかりの銘柄には、投資する前に気を付けなければならない落とし穴があります。
※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の西崎 努が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「優待を新設したての銘柄には落とし穴が?知らずにやってはいけない株主優待投資」
お悩み
積立投資だけだと面白くないので株主優待で楽しみが欲しい…
中村 美咲さん(仮名)・会社員・40歳女性(既婚、共働きで子どもは2人)
中村さんは、夫から家計のやりくりや資産形成などお金や投資に関することを任されていました。もともと結婚前から家計簿をつけていたことや仕事の合間にFP資格をとったこともあって、家計設計についてはそれほど苦労せずにやりくりできました。
ただ投資を始めるときにはNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)やiDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)を利用してどんな投資をしているかと相談しながら進めていましたが、お互いに仕事をしていることもあって株式売買をするのは面倒だし株価が気になりそうだったので、投資信託の積立投資に落ち着きました。
仕事や子育てで忙しい日々を過ごしつつも定期的に投資の状況を見ていて、株価が大きく下落したときには当初は心配もしていましたが、そのうち気にならなくなってきました。
資産形成自体は順調かなと考えていましたが、機械的な投資に少し変化が欲しくなってきました。そんな時に株主優待の新設が増えているという記事を見つけて優待投資に興味を持ちました。
中村さんが株主優待投資をうまく行うためには、どんなことに注意したら良いでしょうか?
1年で50社も!株主優待を新設する企業は増加傾向に
パンデミックとなったコロナ禍の際に企業業績の悪化に合わせて株主優待を廃止した企業が多く出ましたが、ここ最近は増加傾向にあり、野村インベスター・リレーションズ(野村IR)によると2024年に新たに株主優待を新設した企業は131社(前年より50社増え、62%増)となったようで、これは2025年の年初にも話題になりました。
株主優待には自社製品を送ることで商品のファンを増やして販促につなげるような目的のものもあれば、優待で得られるもので個人投資家に魅力的に感じてもらい株価上昇につなげようとするものまであります。また最近では上場維持基準(主に流通株式時価総額)を達成するために株主優待を新設していると思われる企業もあります。
株主優待の新設、変更、廃止の情報については野村IRが運営しているNET-IR(ネットアイアール)で定期的に公表してくれているので一度のぞいてみることをお勧めします。
ただ新設された株主優待には継続して実施されている優待とはまた違う注意点があります。そこで今回は新設株主優待に投資する前に気をつけておきたいことをお伝えします。
気をつけておきたい新設株主優待への投資1:なぜ優待を新設するのかを知る
上場企業が株主優待を新設するには必ず企業としての経営戦略があるはずですが、優待投資での銘柄選びの際にはその経営戦略が企業業績の向上、ひいては株価の上昇につながったものでなければ投資としての魅力は上がりません。
ただ最近では上場維持基準を満たすためにQUOカード配布やプレミアム優待倶楽部入会のような株主優待を新設しているケースもあります。
こうしたケースでは「上場維持」という目的のためには必要な対策と考えられますが、それが株価の上昇につながるのかを確認することが必要です。それであれば逆に不要な株主優待を変更、廃止する方が企業業績の向上につながるのではないでしょうか?
株価に対する優待品の価値に注目して優待銘柄を選ぶ方もいますが、最も注目するべきは株価動向であり、優待を重視するあまり株価を気にしないのでは本末転倒です。
東京証券取引所も上場企業に対して、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」を求めており、定期的に対応状況を公開しています。その点においても、株主優待の新設は企業が株価を意識して経営をしているのかを測る一つの指標にもなっています。
気をつけておきたい新設株主優待への投資2:優待の継続性を確認する
新設された株主優待には過去の実績がないため、今後どうなるかが未知数でもあります。長年続いている株主優待であれば廃止や改訂による株価の下落を懸念しますし、コロナ禍のように多くの企業が廃止をしていなければ、良しあしは別にして優待を廃止するには決断力が求められます。
新設された株主優待の中には導入したけどあまり良い反応がなかったり、目的を達成したので廃止したケースもあります。ひどい話では多額のQUOカード優待を新設したことで株価が大きく上昇したのちに、優待受け取りの権利落日前に優待を取り消ししたというケースもあります。
長期的な株主を求める企業が増えているため、株主優待の中には継続的に保有していることよってより良い優待をお届けしてくれる企業もあります。逆に短期的な視点で株主優待を導入しているように見える新設株主優待には少し様子を見てからの方が良いかもしれません。
株主優待は必ずしもずっと続くわけではありません。優待を出すということは、企業は経費を掛けて用意しているので費用対効果を検討するのは当然です。優待内容に着目するだけではなく、企業側の目線でも考えることが重要です。単に利益を株主に還元するだけなら優待ではなく配当や自社株買いという方法もあります。
気をつけておきたい新設株主優待への投資3:買い付けする口座をどうするか検討する
株主優待の新設が増えれば、優待投資へ興味を持つ人も増えてくるでしょう。特に新NISAでは成長投資枠を利用して個別株式にも投資をできることから、検討している方もいるでしょう。
最近では非課税のメリットがあるNISA口座で投資をする前提で証券口座を開いている方も増えており、通常の課税口座である特定口座などをよく知らない方もいます。NISA口座は枠に上限があり、成長投資枠は年間240万円で合計1,200万円までとなっています。
まだ資金がそれほどなく、枠を使いきれないという人は気にする必要はないかもしれませんが、資金に余裕がある人でNISA枠は値上がり益や配当を非課税にしたいという場合は、優待投資では特定口座を利用する方が良いでしょう。
もちろん優待銘柄でも値上がりを期待しているというケースもあるでしょうが、売却しないのであって配当も多くないようでしたらNISA口座の非課税の恩恵はあまりないと言えます。どの口座を利用するべきか、投資目的に合わせて選ぶようにしましょう。
優待新設は投資のチャンス?株価への影響も考察しよう
株主優待が新設された場合には、優待の魅力だけに注目するのではなく、業績への影響、優待の継続性、株価や株主対策の本気度合いなど注目するべき点はいくつもあります。
優待投資ではつい魅力的な優待がないかと探しがちですが、投資という面で考えると株価を無視はできませんので、優待内容に興味を持ってからでいいのでその優待を株主に送ることによる企業のメリットも考察してみましょう。
企業成長を期待しつつ優待を楽しみながら長期投資をすることで、資産形成にもつながっていくでしょう。
■著者・西崎努氏の著書『やってはいけない資産運用 金融機関のカモにならない60歳からの資産防衛術』(アスコム刊)、『老後資産の一番安全な運用方法 シニア投資入門』(アスコム刊)が大好評発売中です!
【動画で解説!】
楽天証券「トウシルの公式YouTubeチャンネル」では、同筆者が執筆した「やってはいけない資産形成」のコラムを動画で視聴できます。
優待を新設したての銘柄には落とし穴が?知らずにやってはいけない株主優待投資
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