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本当にあった怖い実例:企業の粉飾決算を見抜く:キャッシュ・フロー読み方講座Vol.4(最終回)

2025/8/21 11:00

 実際にあったケースをモチーフにした事例研究により、粉飾決算がキャッシュ・フロー計算書にどのようなゆがみをもたらすかを確認してみましょう。損益計算書だけを見ていては見誤る可能性があることが分かるでしょう。

目次
  1. 損益計算書の推移から何が分かるか?
  2. 貸借対照表から何が分かるか?
  3. キャッシュ・フロー計算書からはどんなことが読み取れるか
  4. 損益計算書とキャッシュ・フロー計算書の間のゆがみを見抜く

損益計算書の推移から何が分かるか?

 今回はキャッシュ・フロー計算書の基礎知識4回目(最終回)として、事例研究を通じて、キャッシュ・フロー計算書の読み解き方を見ていきます。

 実際に粉飾決算が行われたケースをモチーフに事例を作成しました。

 2020年3月期から2024年3月期の損益計算書、貸借対照表、キャッシュ・フロー計算書の主要項目を抜粋したものが下記の表です。

項目 2020年3月 2021年3月 2022年3月 2023年3月 2024年3月
売上高 94,000 116,000 140,000 210,000 225,000
当期純利益 1,300 1,700 1,900 3,300 ▲ 54,000
総資産額 9,800 10,800 14,000 23,000 ▲ 34,000
自己資本比率 20.0% 18.0% 19.0% 22.0% ▲60.0%
営業キャッシュ・フロー ▲ 6,700 ▲ 6,900 ▲ 2,700 ▲ 5,200 ▲ 22,000
投資キャッシュ・フロー ▲ 400 ▲ 600 ▲ 1,000 ▲ 300 ▲ 600
財務キャッシュ・フロー 10,000 8,900 3,500 12,000 15,000
現金および現金同等物の
期末残高
5,400 6,700 7,400 15,000 8,800
※実例をもとに、凡例として著者が作成

 売上高、当期純利益の推移から、どのような印象を受けますか? おそらく、2020年3月期から2023年3月期まで、売上高、当期純利益ともに順調に増加しており、今後もさらに業績が伸びていくと考えた方が多いのではないでしょうか。

 ところが実際は、2024年3月期に突然、大赤字になりました。これは、回収できずに積み上がっていた売掛金について貸倒引当金を計上した(つまり、会社側が回収できないと判断した)ことが原因です。

貸借対照表から何が分かるか?

 上記の表では情報が不足していますが、貸借対照表の総資産額を見ると、毎期順調に総資産が増加しており、順調に企業規模が拡大しているように見えます。また、自己資本比率も水準は低いものの安定しており、財務面での悪化はうかがえません。

 しかし、2024年3月期に突然の大赤字となり、一気に債務超過に転落しました。

 実は、上記の表には掲載していませんが、2023年3月期までの間に売掛金が年々積み上がり、それと同時に借入金残高も膨れ上がっていました。

 つまり、回収できない売掛金が年々積み上がり、現金化できないため、借入金を増やして急場をしのいでいた状況だったのです。

キャッシュ・フロー計算書からはどんなことが読み取れるか

 では、キャッシュ・フロー計算書からはどのようなことが読み取れるでしょうか? もっとも異彩を放つのが、営業キャッシュ・フローが毎年マイナスとなっている点です。

 もし、損益計算書の利益も毎年赤字であれば、営業キャッシュ・フローもマイナスであることに驚きはありません。

 しかしこの会社は、当期純利益が毎年黒字であるにもかかわらず、営業キャッシュ・フローが大幅なマイナスになっていたのです。

 図表には載せていませんが、営業利益も毎期当期純利益を上回る水準でした。また、営業キャッシュ・フローの目安として、「営業利益+減価償却費」とおおむね同じような水準になることが多いのですが、この会社は2023年3月期の営業利益+減価償却費の合計が5,700でした。しかし営業キャッシュ・フローはマイナス5,200であり、大きくかけ離れていたことが分かりました。

損益計算書とキャッシュ・フロー計算書の間のゆがみを見抜く

 さらに、この会社の財務キャッシュ・フローをみると、毎年かなり大きなプラスになっていることが分かります。

 これは、大幅な営業キャッシュ・フローのマイナスを補うため、銀行からの借入金で賄っていたということです。

 毎年順調に利益を上げ続けている会社が、なぜ利益を大きく上回るマイナスの営業キャッシュ・フローとなっていて、銀行から毎年借り入れを増やしているのか? これが損益計算書とキャッシュ・フロー計算書の間に表れているゆがみなのです。

 実際、この会社は粉飾決算で売上を水増ししていました。水増しした売上の分だけ売掛金が増えますが、当然ながらこれは回収できないため、粉飾すればするほど売掛金が増えていきます。

 そして、粉飾した売上の分だけ利益は上がりますが、この分の現金は当然ながら入ってこないため、損益計算書では利益を上げている一方で、キャッシュ・フロー計算書の営業キャッシュ・フローは大幅なマイナスになるのです。

 最終的に、2024年3月期に回収不能となった(そもそも粉飾しているので回収はできない)売掛金について貸倒処理を行い、多額の損失を計上し、債務超過に転落、経営破綻しました。

 このように、損益計算書とキャッシュ・フロー計算書の間のゆがみの存在は、粉飾決算の可能性を示唆するだけでなく、粉飾をしていない場合でも業況悪化のシグナルとなります。

 くれぐれも、損益計算書の数値だけを見るのではなく、キャッシュ・フロー計算書の数値も確認し、両者の間にゆがみが生じていないかを確認した上で銘柄選定を行うようにしましょう。

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