国内外の株式市場は8月に入り最高値を更新するなど「サマーラリー」に沸いています。市場心理は強い一方で、PERなどの指標では割高感も。足元の株価上昇は、米国の利下げ期待や、これまで出遅れていた中小型株への物色の広がりなどが背景にありますが、果たしてこれは強気相場の新たなステージなのか、それとも終盤戦の始まりなのか。
※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の土信田 雅之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「相場は「強い」けど株価は「割高」?~サマーラリーとジレンマのはざまで~」
サマーラリー中の株式市場
連休明けで迎えた今週の株式市場は、日本株(日経平均株価と東証株価指数(TOPIX))が連日で最高値を更新する場面を見せるなど、上方向を目指す動きが活発化しています。さすがに14日(木)の取引では下落したものの、この日の日経平均終値(4万2,649円)は、昨年7月11日の高値(4万2,426円)を上回っていて、相場のムードはかなり強気に傾いていると言えます。
こうした株式市場の好調さは米国株も同様で、S&P500種指数とナスダック総合指数はともに、12日(火)と13日(水)に連日で最高値を更新したほか、ダウ工業株30種平均についても、昨年12月4日の取引時間中につけた高値(4万5,073ドル)まであとわずかに迫っています。
<図1>世界主要株価指数のパフォーマンス比較(2024年末を100)(2025年8月13日時点)
また、上の図1にもあるように、日米だけでなく、中国や欧州の株価指数も8月に入ってから騰勢を強めていて、国内外の株式市場は「サマーラリー」の様相を呈しています。
「相場は強いが、株価は割高」というジレンマ
このように、株式市場が勢いよく上昇する局面を迎えると、それに伴って浮上してくるのが、「この上昇はいつまで続くのか?」「今から乗っても大丈夫なのか?」という、期待と不安の入り混じった感情です。
実際に、足元の株価上昇に対する見解としては「株価はすでに割高なので、(上昇は)長くは続かない」という弱気の見方がある一方、「(状況が変わったので)まだまだ上値を追える」という強気の見方の両方が交錯している状況ですが、この両者は「株価が高いか安いか(バリュエーション)」から見た視点と「相場は強いか弱いか(モメンタム)」から見た視点の違いでもあります。
「株価は高い」というバリュエーションの視点
まずはバリュエーションの視点から見て行きますが、「株価が高い」根拠としては株価収益率(PER)が挙げられます。
日本株のPERについては、今週12日(火)付のレポートで言及していますが、米国株については下の図2で確認します。
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<図2>米S&P500(月足)と長期PER(CAPEレシオ)の推移(2025年8月13日時点)
上の図2のグラフは、米S&P500の月足と「CAPEレシオ」と呼ばれる長期のPERの推移を示したものです。
このグラフはこれまでのレポートでも何度か紹介したことがあり、実は紹介する度にこのCAPEレシオの数値が上昇しています。8月13日時点では35.52倍となっていますが、チャートをさかのぼっても35倍を超える場面は少なく、また、図の表示期間(約30年)の平均値(23.89倍)と比べても、現在のS&P500はかなり割高であることが分かります。
また、PERは「株価÷1株当たり利益(EPS)」で計算されるため、PERの上昇を抑えるには、株価が下がる、もしくはEPSが増えることが必要です。つまり、企業の「稼ぐチカラ」を今後も示すことができれば、現在の高いPERも正当化され、これについては時間を掛けて見極めて行くことになります。
もちろん、こうしたEPSの増加期待を先取りする格好で、しばらくの間は高いPERを維持したまま、株価が上を目指していく展開も考えられますが、現在の株価が割高であることに変わりはなく、いずれ株価の上値が重たくなってくることが予想されます。
「相場は強い」というモメンタムの視点
とはいえ、足元の株式市場は割高感が意識されながらも上昇基調をたどってきました。
例えば、先週末8日(金)の国内株市場は3連休前ということで、通常であれば、取引終了時刻が迫るにつれて手じまい売りに押されることが多いのですが、この日の手じまい売りは限定的で、結局、日経平均は前日比761円高と株高を維持して終えています。それだけ、現在の相場ムードと買い意欲の強さを感じさせる格好になっています。
このように、相場のムードが強くなった背景としては、米国の関税政策に対する過度な警戒感が後退したことや、米国の利下げ期待が高まったこと、米テック株の買い戻しの動きや物色の広がりが出始めたこと、そして、国内の決算発表がピークを迎える中、米関税の企業業績に与える影響が限定的にとどまりそうという見通しが優勢になったことなどが挙げられます。
もっとも、米国の関税をめぐっては「最悪の事態が回避された」「具体的な関税率が見えてきた」「景気や企業業績への影響が今のところ限定的」など、過度な不安が後退したことがポジティブ材料となっていますが、8月7日から実施された相互関税の上乗せ分の「第2波」がこれから景気や物価、企業業績などに反映されてくることや、米トランプ政権の急な方針転換の可能性などを踏まえると、先行きの不透明感はくすぶっており、本格的に強気に傾くには少し力不足な面もあります。
それでも相場のムードが強気を保っているのは、米利下げ期待の高まりと、物色される銘柄が広がっていることが大きいと思われます。
相場は「強い」けど株価は「割高」、ジレンマ相場の投資戦略は?(土信田雅之)
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