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【徹底比較】金、プラチナ、銀、銅…それぞれの魅力は?

2025/8/5 7:30

 金(ゴールド)価格が歴史的な高値水準で推移する中、「高いから買えない」という声を耳にします。しかし、価格の方向性は、水準感だけで説明できるものではありません。他の金属と比較することで、金(ゴールド)に関する知識が増えます。そうすることで、水準感に頼らない分析ができるようになります。

目次
  1. 2010年以降、価格は長期底上げ中
  2. 生産国は西側と非西側に分かれている
  3. 需要は長期視点で増加する可能性あり
  4. 長期底上げの背景に「世界分断」あり
  5. 金(ゴールド)相場は長期視点で上昇へ
  6. [参考] 貴金属関連の具体的な投資商品例

※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の吉田 哲が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
【徹底比較】金、プラチナ、銀、銅…それぞれの魅力は?

2010年以降、価格は長期底上げ中

 以下のグラフは、長期視点の金(ゴールド)、白金(プラチナ)、銀(シルバー)、銅(カッパー)の価格推移を示しています。

図:主要四金属の価格推移(年足、1975年を100として指数化)

主要四金属の価格推移(年足、1975年を100として指数化)
出所:世界銀行のデータを基に筆者作成

 1970年代に発生したオイルショックの際に同時に反発したり、2010年ごろから長期視点の底上げが一斉に発生したりしていることが分かります。また、以下の図の通り、これらの金属の価格は、昨年(2024年)末に比べていずれも上昇しています。

図:主要銘柄の騰落率(2024年12月30日と2025年8月1日を比較)

主要銘柄の騰落率(2024年12月30日と2025年8月1日を比較)
出所:Investing.comのデータを基に筆者作成

 金(ゴールド)価格の方向性を展望する際、その他の金属の動きも同時に確認・展望することが重要です。金(ゴールド)相場にのみ注目すればするほど、高い・買えないという発想に至ってしまうと筆者は感じています。あえて、注目する領域を広げることが重要です。

生産国は西側と非西側に分かれている

 他の金属と比較する一つの切り口として、生産量(ここでは鉱山生産量)に注目します。以下は、これら四つの金属の鉱山生産量を比較した図です。

図:主要四金属の鉱山生産量比較(2024年) プラチナの生産量を1として比較

主要四金属の鉱山生産量比較(2024年) プラチナの生産量を1として比較
出所:World Gold Council、Johnson Matthey、Silver Institute、USGSのデータを基に筆者作成

 白金(プラチナ)の生産量を1として比較すると、金(ゴールド)は21、銀(シルバーは143、銅はおよそ12万9,000です。金(ゴールド)は白金(プラチナ)に比べると生産量は多いものの、銀(シルバー)はもとより、銅(カッパー)に比べて、生産量が大変に少ないことが分かります。

 また、以下の図は各金属の生産量が多い国の上位10カ国を示しています。金(ゴールド)は、銀(シルバー)、銅(カッパー)と同様、北米、中南米、アフリカ、旧ソ連、アジア、オセアニアなど、世界各地で幅広く生産が行われていることが分かります。

 例えば、中国やロシア、オーストラリア、米国、ペルー、メキシコといった主要な金(ゴールド)の生産国は、銀(シルバー)や銅(カッパー)の主要な生産国でもあります。「偏在」するプラチナと異なるこうした特性は、供給の動向を展望する上で重要な要素です。

 生産国が分散されていることが安定化に至らないケースも想定されます。後に「世界分断」の箇所で触れますが、民主度・自由度が低下しつつある国々で生産されているケースがあるためです。民主度・自由度が低下すると、自国優先の傾向が強まり、世界全体として、供給減少懸念が高まります。

図:主要四金属の鉱山生産国上位10カ国(数字は順位)(2024年)

主要四金属の鉱山生産国上位10カ国(数字は順位)(2024年)
出所:World Gold Council、Johnson Matthey、Silver Institute、USGSのデータをもとに筆者作成
注:プラチナは上位3カ国。「偏在」する金属であるため生産できる国は少ない

需要は長期視点で増加する可能性あり

 次に、需要面に注目します。以下は、これら四つの金属の需要の内訳を示した図です。

 金(ゴールド)は、投資、宝飾品に多く用いられています。また、金(ゴールド)は四つの金属で唯一、統計に「中央銀行」の項目が存在します。図のとおり、2024年は全需要の3割弱が中央銀行の積み上げ分でした。

 他の三つの金属は、産業用の割合が大きい傾向があります。主な産業向けの用途について、白金(プラチナ)は自動車の排ガス浄化装置、銀(シルバー)は太陽光発電システムを含む電子機器、銅(カッパー)は電線や交通などのインフラ、建物、電気自動車などです。

図:主要四金属の需要内訳(2024年、銅は2023年)

出所:World Gold Council、Johnson Matthey、Silver Institute、USGSのデータを基に筆者作成     

 

 こうして確認すると、四つの金属の需要動向を確認・展望する際は、金(ゴールド)は中央銀行の方針、白金(プラチナ)、銀(シルバー)、銅(カッパー)の三つは世界全体の脱炭素の流れに注目する必要があることが分かります。

 中央銀行の方針も、脱炭素の流れも、長期視点でとらえるテーマです。金(ゴールド)でいう有事や株・ドルとの逆相関、他の三つの金属でいう目先の景気動向などの短期的なテーマとは別の、長期視点のテーマです。

 こうした長期視点のテーマに関わるデータが以下です。金(ゴールド)は中央銀行の買い越し量、白金(プラチナ)は自動車排ガス浄化装置向け需要、銀(シルバー)は太陽光発電装置向け需要が、それぞれ長期視点の増加傾向にあります。

 銅(カッパー)のクリーン技術(電気自動車などの環境配慮を推進する技術)関連の需要は長期視点で増加する見通しが示されています(国際エネルギー機関)。

 これら四つの金属価格は、それぞれの主要な需要項目の長期視点の増加によって、「底上げ」継続、長期視点の価格上昇が起きると考えられます。

図:主要四金属の主要需要の推移(銅は見通し)

主要四金属の主要需要の推移(銅は見通し)
出所:World Gold Council、Johnson Matthey、Silver Institute、国際エネルギー機関のデータを基に筆者作成

長期底上げの背景に「世界分断」あり

 筆者は、中央銀行などが金(ゴールド)を購入する動機になったり、資源を持つ非西側が資源を武器として利用する動機になったりする「世界分断」は、今後さらに深まると考えています。世界の民主主義の後退がより深刻化すると考えているためです。

 V-Dem研究所(スウェーデン)は「自由民主主義指数(Liberal democracy index)」を算出・公表しています。同指数は、行政の抑制と均衡、市民の自由の尊重、法の支配、立法府と司法の独立性など、自由や民主主義に関する多くの要素を考慮しています。

 0と1の間で決定し、0に近ければ近いほど、その国は自由度・民主度が低く、1に近ければ近いほど、自由度・民主度が高いことを意味します。以下のグラフは、世界の自由民主主義指数(人口加重平均)の推移です。

 2010年ごろに同指数の低下が始まりました。つまり、2010年ごろに世界の民主主義の後退が始まったといえます。世界の民主主義が後退し始めた原因に、新しい技術・考え方の「マイナス面」が目立ち始めたことが挙げられます。

図:世界の自由民主主義指数(人口加重平均)

世界の自由民主主義指数(人口加重平均)
出所:V-Dem研究所のデータを基に筆者作成

 確かに、人類が開発を進めてきた技術(SNSやAIなど)や推進してきた考え方(ESGやDEI)は、社会にプラスの影響をもたらしました。しかし、行き過ぎてしまったことで「マイナス面」が目立ち始めました。

 SNSはデマ、誹謗(ひぼう)中傷、感情噴出が横行する場となり、AIは人間から思考を奪い、ESGは資源国を窮地に追い込み、DEIはキャンセルカルチャー(好ましくないと考える人や組織を一方的に批判したり、不買運動を行ったりすること)の温床となりはじめました。これらのマイナス面はいずれも民主主義を停滞させる原因となり得ます。

 民主主義の停滞は、世界分断を加速させ、そして世界分断は、戦争の勃発・悪化の一因となったり、資源を持つ非西側諸国に資源の武器利用(出し渋り)を促し、さまざまな品目の価格を高騰させて長期的な高インフレの環境をつくり出したりしました。

 新技術・考え方は人類の善意から生まれたため、撤回される可能性は低く、今後も長期的に、これらがもたらすマイナス面が世界の民主主義を後退させ続ける可能性があります。

 こうした中長期・超長期的な流れにより、金(ゴールド)価格は、長期上昇トレンドを維持する可能性があります。資源の武器利用(出し渋り)は、白金(プラチナ)、銀(シルバー)、銅(カッパー)価格の長期視点の底上げを後押しする要因でもあります。

図:2010年ごろ以降の世界分断と高インフレ(長期視点)の背景

2010年ごろ以降の世界分断と高インフレ(長期視点)の背景
出所:筆者作成

金(ゴールド)相場は長期視点で上昇へ

 以下のグラフのとおり、金(ゴールド)相場は長期的に見て、国内・海外ともに史上最高値圏で推移しています。とかく、金(ゴールド)相場は「戦争」などの有事で語られることが多いですが、金(ゴールド)価格を押し上げている材料は、戦争だけではありません。目立った戦争が起きていない時期でも、金(ゴールド)相場が上昇しているためです。

 筆者は長年、金(ゴールド)相場の動向を説明したり見通したりする手法を検討し続けていますが、今のところ、以下の七つのテーマに沿うことが、現代の金(ゴールド)相場分析に資すると考えています。ここでいう現代とは、S&P500種指数の極端な上昇が目立ち始めた2010年ごろ以降をイメージしています。

図:海外金(ゴールド)現物価格と国内地金大手小売価格の推移(1975年1月~2025年8月)

海外金(ゴールド)現物価格と国内地金大手小売価格の推移(1975年1月~2025年8月)
出所:LBMAおよび国内地金大手のデータを基に筆者作成

 例えば、有事の金、株との逆相関、ドルとの逆相関、といった伝統的なテーマは、短中期的な時間軸に分類できます。ここでは「有事ムード」「代替資産」「代替通貨」としています。そして、中長期、超長期という金(ゴールド)相場を長期的に底上げしているテーマが、「中央銀行」と「世界分断」です。

 これらの複数のテーマに起因する上昇・下落の圧力が金(ゴールド)相場に同時に影響し、それらが相殺されながら、価格が決定されているといえます。2010年ごろ以降については、一つのテーマだけで金(ゴールド)相場は動いていない、と考えなければならないと筆者はみています。

 足元、史上最高値圏で推移しているのは、時間軸が異なる複数の上昇圧力が重なっているためだといえます。有事や逆相関だけでこうした高値圏で推移していることを説明することは困難です。分かりやすいから、という理由で単一のテーマのみに注目すべきではないのです。

 また、実際のお取引の際は、注目するテーマの時間軸と取引手法の時間軸を整える必要があります。有事ムードに注目し、長期の資産形成を目的として積立投資を行うことは、あまり正しい選択とはいえないと筆者は考えています。

 例外として、注目した有事(戦争)が、長期視点のプロジェクトである資産形成が想定する、数年間あるいは十数年間、場合によっては数十年間という長期間にわたって継続するとお考えであれば、有事に注目をした資産形成は問題ないと考えます。

図:金(ゴールド)の国際相場に関わる七つのテーマなど(2025年8月時点)

金(ゴールド)の国際相場に関わる七つのテーマなど(2025年8月時点)
出所:筆者作成

 2010年ごろ以降の傾向を考えれば、資産形成に金(ゴールド)を用いる場合は、「中央銀行」「世界分断」に注目するべきであると、筆者は考えています。

 今回のレポートでは、白金(プラチナ)、銀(シルバー)、銅(カッパー)と、価格推移、生産量、需要の内訳などを比較しながら、金(ゴールド)への理解を深めてきました。

 金(ゴールド)価格が歴史的な高値水準で推移し、「高いから買えない」と感じる方も、こうした情報を考慮することで、価格の水準感に頼らない冷静な分析ができるようになると、思います。市場環境が年々複雑化する今だからこそ、感覚ではない、データや理論に基づいた分析が必要です。

[参考] 貴金属関連の具体的な投資商品例

長期:

純金積立(当社ではクレジットカード決済で購入可能)

純金積立・スポット購入

投資信託(当社ではクレジットカード決済、楽天ポイントで購入可能。以下はNISA成長投資枠対応)

三菱UFJ 純金ファンド
ピクテ・ゴールド(為替ヘッジあり)
ゴールド・ファンド(為替ヘッジあり)

中期:

関連ETF(NISA対応)

SPDRゴールド・シェア(1326)
NF金価格連動型上場投資信託(1328)
純金上場信託(金の果実)(1540)
NN金先物ダブルブルETN(2036)
NN金先物ベアETN(2037)
SPDR ゴールド・ミニシェアーズ・トラスト(GLDM)
ヴァンエック・金鉱株ETF(GDX)

短期:

商品先物

国内商品先物
海外商品先物

CFD

金(ゴールド)、プラチナ、銀、パラジウム

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