日米通商交渉の「歴史的合意」報道で、市場に安ど感が広がり、日経平均が急騰しました。しかし、その裏には、日本にとって「吉」と出るか「凶」と出るか予測不能な80兆円もの対米投資の約束が潜んでいます。日本経済を押し上げる起爆剤となるか、それとも新たなリスクの種となるか。現時点の見通しと、日経平均予想を解説します。
※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の窪田 真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「日米に続き、米EUも関税合意、どうなる日経平均?」
トランプ関税、日本へ15%
トランプ大統領は22日(日本時間23日)、日米関税交渉で歴史的合意に達したと発表しました。石破茂首相も合意が成立したと発表しています。合意内容の詳細について両者でやや食い違いがありますが、大枠では合意が成立したと考えられます。概要は以下の通りです。
<日米通商交渉の合意内容>
日本への相互関税15%・自動車関税15%は、現時点で米国の貿易主要相手国の中で、一番低い税率です。その通りとなれば、日本にとって大きなメリットがあります。
自動車関税について、もし日本だけ15%に下げ、欧州連合(EU)や韓国の税率が下がらないとすると、米国市場において日本車がドイツ車や韓国車に対して相対有利になります。EUや韓国はそれでは困るので米国との関税交渉で合意を急ぐ必要が生じます。
対日関税15%は、このように日本にとってメリットが大きいものの、その見返りとして日本が約束したと発表された内容は、けっこう重いものです。対米投資5,500億ドル(約80兆円)を約束したことになっています。また、自動車、トラック、コメ、一部農産品で日本の市場開放をするとしています。
対米投資と市場開放について、大筋合意したものの、詳細は詰められていません。細かい内容について、双方に思い違いがないか、今後、検証されることになります。
米国のベッセント財務長官は23日、日本が市場開放について合意内容を履行しているか四半期ごとにチェックし、日本の対応にトランプ大統領が不満の場合は、日本への相互関税が25%に戻る可能性があると話しています。
対米投資80兆円、吉と出るか凶と出るか
対米投資5,500億ドル(約80兆円)は極めて重い内容です。日米合意がなくても、日本企業はこれまでもこれからも、成長市場である米国へ積極的に投資していくことは明らかです。80兆円くらいはやっていくと考えられます。
問題は、その中身です。トランプ大統領の発表では、「大統領の指示による投資」とされています。その通りならば、民間企業が「リスクが高過ぎる」としてちゅうちょする投資もトランプ大統領の指示により日本企業が実行しなければならないことになります。
ホワイトハウスのレビット報道官の発表によると、日本による投資をトランプ大統領は「エネルギーや半導体、重要鉱物、医薬品、造船などに振り向ける」としています。うまくいけば、日本企業が米国で大きな成長を手にする可能性がある半面、失敗すれば巨額の損失を被るリスクもあります。
当然、日本企業に技術力がある分野で、投資の要請が来るはずです。その要請に日本企業がそのまま応じられるか分かりません。リスクが高いとして日本企業がちゅうちょする場合、日本政府が何らかの公的融資や保証(損失が出た場合に日本政府が穴埋めする仕組み)をつけることによって、実行を促すスキームになると考えられます。
それでうまくいく場合と、そうでない場合があります。
トランプ大統領が投資を要請する案件には、以下三つのカテゴリーが考えられます。
<トランプ大統領が要請する可能性がある対米投資:三つのカテゴリー>
上の表で、カテゴリー1に該当する投資が要請されれば、日本企業にとって大きなチャンスです。良い投資案件があっても、米国政府の許認可を得るのが難しい場合があります。米国政府からの要請で投資するならば、スムーズに投資が進められる利点があります。
カテゴリー2に該当する案件も、日本政府が思い切って保証をつけることで投資が進めば、良い結果がもたらされることもあります。
問題は、カテゴリー3です。このカテゴリーでは投資を強行できません。こういう投資要請が次々と来る場合は、なぜ投資できないか日本政府は合理的に説明する必要があります。その説明にトランプ大統領が納得するか、分かりません。
トランプ関税、着地見えた?日経平均、年末4万4,000円の予想維持(窪田真之)
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