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米国株サマーラリーの収束が近づく、「TACO」はタカを生むのか

2025/7/18 7:30

 米国株はサマーラリー(米国株が夏場に上昇しやすい現象)を続けている。市況が悪化すれば、トランプ大統領が関税政策での強硬姿勢を和らげるという意見も根強い。しかし、株高になるほどトランプ氏が政策を先鋭化する可能性もある。7月後半~8月上旬にラリーが一時収束することをベースシナリオとして、不確実性への柔軟な構えを維持したい。

目次
  1. サマーラリーは収束するか
  2. TACOがタカを生む
  3. 不確実性への「転ばぬ先の杖」

※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の田中 泰輔が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
【米国株】サマーラリー終盤 TACOがタカを生む危うさ

サマリー

●米株サマーラリーはAI半導体銘柄のけん引で依然しっかり
●市場は、株高を追認。トランプ関税の悪影響にも高をくくって「TACO相場」に
●TACO相場のワナは、株高になるほどトランプ政策が先鋭化しやすくなること
●筆者は、7月後半~8月上旬にラリーがいったん収束するリスクを踏まえてポジショニング

サマーラリーは収束するか

 米国株は、4月のトランプ関税ショックから立ち直り、5~6月の上伸を経て、7月前半も堅調を保っています(図1)。最近の相場の中身を見ると、決して全体が強いわけではありません。力強いテック株が足踏みすると、景気・バリュー株が浮上し、テック株内部でも、相場のけん引役である人工知能(AI)の中核銘柄がもたつくと、それ以外のテック株が盛り返すなど、恐る恐る進む様子がうかがわれます。

 市場には、トランプ関税が景気・物価にどう影響するかが、徐々に見えてくることへの警戒が見られます。3カ月近く続いているラリーが、8月の休暇シーズン前には利益確定売りによる調整反落があり得るとの見方も根強くあります。

 それでも、テック株、とりわけエヌビディアなどAI半導体株に、5月の好決算、6月の中東諸国との大規模ディール、7月の対中国輸出の一部承認など、好ニュースが相次ぎました。市場はAI需要の拡大に自信を強め、相場は好調を保っています。

 相場の上昇は、それ自体が利益確定売りの圧力を高め、自律反落の圧力を生み出します。低金利や好業績というファンダメンタルズの支援があれば、相場は自律的な波動リズムを刻みながらも、上昇トレンドをたどることができます。しかし、トランプ関税を受けた景気・物価の悪化に高をくくれる段階ではないはずです。

 それでもAI需要だけは強力で持続的として、2023~2024年のような、AI先導相場もあり得ないわけではありません。ただ、中期的に支持され得る相場でも、短期的に速いラリーに対する反落調整という小波動は、相場の基本力学として留意しておくべきと考えています。筆者は、7月後半から8月上旬にかけて、ラリーがいったん収束するとのベースシナリオを維持しています。

TACOがタカを生む

 市場の内部で、先行き慎重な反応が見られるとはいえ、米株相場は堅調を維持しています。市場における市況情報は、大半が相場追認のものばかりになりがちです。株高を追認すれば、好材料はことさらに強調され、悪材料は無視されたり、好材料のように曲解されたりするのです。

 このため、「潜在する相場の反落リスクを見なくなる」というワナに容易に陥りやすくなります。最近の経済指標は微妙に強弱マチマチで、まだ関税の悪影響が具体的には確認されません。この不確実で曖昧な状況では、相場の上でも下でも、都合よく解説できます。株高なら「景気への楽観によるもの」とし、株安なら「景気への不安が台頭」といった具合です。

 こうした相場追認の解説は、相場の動きの原因を語っているようで、その実、相場が動いた結果に原因らしく聞こえる材料を当てはめているだけです。つまり、相場を動かす因果関係の解説ではなく、単に、相場の動きを別の言葉に置き換えただけといえます。

 例えば、インフレ指標の伸び率が一見低めでも、株が高いと、「利下げ期待が高まった」と言い、株が安いと、「関税の影響が先送りされているだけだ」といった警戒調の解説になるのです。

 3~4月にエヌビディア株などAIテック株が急落した時には、「AI需要の限界」を唱える論調が強まりました。6月、7月とこれらの株価が上伸すると、AI需要はまだまだ何年も増大し続けると、当たり前のことのように語られます。

 投資家として熱心に、ただし無頓着に情報収集に励むと、この相場追認のワナにはまりやすくなるのです。筆者は、このワナに陥らないよう、投資ポジションを仕込んだら、相場追認の好都合な情報ではなく、当てが外れて損失を被るリスク要因を注視するアプローチに徹しています。

 そして、リスク要因が警戒するほど大きくないうちは、ポジションをホールドします。リスク要因が気になり始め、相場のリズムに乱れが生じたら、短期投資枠のポジションを減らすか解消します。

 この点で、最近警戒するのは、市場の「TACO(Trump Always Chickens Out:トランプはいつもビビって政策を取り下げる)」という高をくくった見方がもたらす帰結です。市場関係者が高をくくって相場が上昇するほど、トランプ大統領は強気になり、市場で「TACO」などと言わせないように、タカ(先鋭)的な政策を強行しかねません。

不確実性への「転ばぬ先の杖」

 筆者は、関税はディールによって多少引き下げられても、トランプ政権以前よりははるかに高い水準がしばらく続くとみています。2026年までの中期では、この関税の引き下げを含めて、相場を支援する「トランプ・プット」になるかもしれません。しかし、短期的には、景気・物価指標に悪化の兆しが出てくると、市場は高をくくっていられなくなるかもしれないと考えています。

 いざ相場が下がると、市場は相場を追認して悪材料を強調するでしょう。このことは、相場情報がいかに当てにならないかという問題とは考えないでください。市場は単に、上げ相場では好材料を、下げ相場では悪材料を強調し、相場の一波動を通して時間差で情報解釈のバランスをとるだけのことです。情報の性質、それが形成されるメカニズムを理解して、活用すれば良いだけです。

 筆者は、この不確実性の大きい環境において、サマーラリーとしての相場は、8月の休暇シーズン前には一服しやすいこと、そこに、関税の実行、景気・物価指標の悪化、金融政策の空白といった材料が重なり得ることを踏まえて、いったんポジションを軽くして、再参入の時機をうかがう構えをとっています。

 ロジックを持たずに相場に参加する投資家は、不確実性の下でストレスを高めると、存在するはずのない「正解」を求めるようになりがちです。技術的に存在しないズバリ予想を語る「専門家」を頼りやすくもなります。あるいは、私が、8月へ相場の調整リスクを語ると、それを「ズバリ予想」のように勝手に解釈する人がいるかもしれません。

 しかし、私は相場力学のロジックのみを語り、リスク要因を「転ばぬ先の杖」として解説しているだけです。存在しないズバリ予想を当てにするより、不確実性を前提に、リスク管理を徹底した相場テクニックを活用する方が、はるかに有効と考えています。

図1:米国株の主要4指数とAI・ビッグテック

米国株の主要4指数とAI・ビッグテック
出所:Bloomberg

■著者・田中泰輔の『逃げて勝つ 投資の鉄則』(日本経済新聞出版刊)が発売中です!

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