長らく続いたデフレが終わり、インフレに転換しつつある日本。物価が上がる時代に、家計を守り、資産を増やすために不可欠な「お金の護身術」を、元国税専門官のマネーライター・小林 義崇さんがシーン別に3回に分けて解説していきます。第1回となる今回は、初心者でも取り組みやすいNISA、iDeCo、ふるさと納税の基本を紹介します。
なぜインフレで家計が苦しくなるのか
「また値上げか…」「給料は上がらないのに、出ていくお金ばかり増えていく」。最近、こんなため息をついている方が多いのではないでしょうか。
そう、私たちの生活を今、じわじわと、しかし確実に苦しめているのが「インフレ(物価上昇)」です。スーパーで買い物かごに入れる商品の値段は上がり、ガソリン代や電気代も高止まり。一方で、給料の上がり幅は物価上昇に追いつかず、実質的な手取りは減っている――。これが、多くの人が直面している現実です。
銀行に預けているお金も、決して安泰ではありません。例えば100万円を預金していても、物価が2%上がれば、その100万円で買えるモノの量は実質的に2%減ってしまいます。つまり、何もしなければ、あなたのお金の価値はどんどん目減りしていくのです。
「国は何とかしてくれないのか!」という声も聞こえてきそうですが、残念ながら、国が個人の資産を直接的に増やしてくれるわけではありません。しかし、国は私たち国民のために、さまざまな「選択肢」を用意してくれています。それが、税金の負担を軽くする「節税」の制度であり、生活を支える「手当」の制度です。
これらの制度は、いわばインフレという荒波から生活を守るための「お金の護身術」。しかし、非常に重要なことですが、これらの制度のほとんどは、自分で調べて、自分で手続きをしなければ、その恩恵を受けることができません。
私は国税専門官としてさまざまな納税者の方々と接してきました。その中で痛感したのは、節税について「知っている人」と「知らない人」の間には、あまりにも大きな差が生まれてしまうという事実です。
そこで今回、拙著『僕らを守るお金の教室』(サンマーク出版)の内容をベースに、インフレ時代を賢く生き抜くために「これだけは押さえておきたい」節税や手当の活用法を、シーン別に具体的に解説していきます。
新NISA:インフレ対策の王道!「資産を増やす」護身術
ライフステージにかかわらず、全ての社会人の方に「今すぐ始めてほしい」と断言できるのが、「新NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)」「iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)」「ふるさと納税」の三つです。インフレでお金の価値が目減りしていく時代だからこそ、この三つはぜひ活用してほしい基本の制度となっています。
まず、インフレ対策の基本中の基本が「投資」です。インフレでモノの価値が上がるということは、見方を変えれば、モノを生み出す「企業(株式)」の価値も上がりやすいということ。現金を企業の株式などに換えておくことで、インフレによる資産の目減りを防ぎ、むしろ資産を増やせる可能性が生まれます。
この「投資」を、国が強力に後押ししてくれる制度がNISAです。通常、投資で得た利益(配当金、分配金、譲渡益)には約20%の税金がかかりますが、NISA口座内での取引であれば、この税金が一切かからなくなります。
特に2024年から始まった「新NISA」は、旧制度から大幅にパワーアップし、使わない手はないといえるほど魅力的な内容になりました。主な改正点は次のとおりです。
制度の恒久化・非課税保有期間の無期限化:いつでも始められ、期間を気にせず長期的な視点で資産運用ができます。
年間投資枠の拡大:「つみたて投資枠」で年間120万円、「成長投資枠」で年間240万円、合計で最大360万円まで投資が可能です。
生涯非課税限度額の設定:生涯にわたって非課税で保有できる上限額として、1,800万円の枠が設けられました。しかも、この枠は売却すれば翌年以降に復活するため、ライフイベントに合わせて柔軟に資金を引き出すことも可能です。
「投資は怖い」と感じる方もいるかもしれませんが、新NISAの「つみたて投資枠」は、金融庁が厳選した長期・積立・分散投資に適した商品が対象です。毎月コツコツと同じ金額を積み立てていくことで、価格変動のリスクを抑えながら、世界経済の成長の恩恵を受けることが期待できます。
インフレで銀行預金の価値が下がっていくのを、ただ指をくわえて見ているだけではいけません。まずは月々5,000円、1万円といった少額からでもいいのです。無理のない範囲で新NISAを活用して、資産を「増やす護身術」を身につけましょう。
iDeCo:「じぶん年金」で老後に備えつつ、強力な節税を実現
新NISAが「資産を増やす」護身術なら、iDeCoは「老後に備えながら、現在の税金を減らす」という、一石二鳥の強力な護身術です。
iDeCoは、自分で掛金を拠出し、自分で運用方法を選んで、60歳以降に年金または一時金として受け取る「じぶん年金」制度。最大のメリットは、なんといってもその強力な節税効果にあります。
メリット1:掛金が全額「所得控除」の対象になる
これがiDeCoの最も特徴的なメリットです。所得控除とは、税金を計算する元の金額(課税所得)から、その金額を差し引ける仕組み。つまり、iDeCoに拠出した掛金に応じて所得税や住民税が安くなるのです。
例えば、年収500万円の会社員(所得税率10%、住民税率10%と仮定)が、毎月2万円(年間24万円)をiDeCoに拠出したとします。この場合、課税所得が24万円減るため、
所得税:24万円×10%=2万4,000円
住民税:24万円×10%=2万4,000円
となり、合計で年間4万8,000円もの税金が安くなります。これは、NISAにはないiDeCoならではの大きなメリットです。
メリット2:運用益が非課税
NISAと同様、iDeCoで得た運用益にも税金がかかりません。
メリット3:受け取るときも税制優遇がある
将来、年金として受け取る際は「公的年金等控除」、一時金として受け取る際は「退職所得控除」という大きな控除が適用され、税負担が軽くなるように設計されています。
iDeCoを利用する際に注意が必要なのが、「原則60歳まで引き出せない」という点です。しかし、これは裏を返せば、強制的に老後資金を準備できるということ。公的年金だけでは心もとないと言われる時代、NISAと並行してiDeCoを活用し、盤石な老後資産を築きながら、目先の税負担もしっかりと軽くしていく。これこそが現代を生きる社会人の賢い選択です。
ふるさと納税:実質2,000円で生活を豊かに
すでに多くの人が利用している「ふるさと納税」ですが、「手続きが面倒そう」と敬遠している方もいるかもしれません。しかし、インフレで家計が圧迫されている今こそ、このお得な制度をフル活用すべき時です。
ふるさと納税は、自分が応援したい自治体に寄付ができる制度であり、寄付した金額のうち、2,000円を超える部分については、翌年の所得税や住民税から全額控除(天引き)されます(控除には上限額があります)。そして、寄付の見返りとして、その土地の特産品などの「返礼品」を受け取ることができます。
つまり、実質的な自己負担はたったの2,000円で、さまざまな返礼品が手に入る、非常にお得な制度なのです。
インフレ下の今、おすすめしたいのは、お米や肉、魚、野菜、トイレットペーパーといった日用品を返礼品で受け取ることです。ふるさと納税の返礼品には宿泊クーポンや伝統工芸品などもありますが、あえて普段の生活で買うものを返礼品で手に入れることで、日々の食費や生活費の節約につなげることができます。
なお、自分の控除上限額を超えて寄付をしても、税金の軽減効果はありません。控除上限額はふるさと納税サイトのシミュレーターを使えば簡単に計算できますので、まずは自分の上限額を把握し、その範囲で寄付をするようにしましょう。
また、寄付をした後の手続きも重要です。原則として確定申告を行う必要がありますが、1年間の寄付先の自治体が五つ以内であれば、「ワンストップ特例」を使って確定申告をせずに手続きを済ませることも可能です。
インフレに負けない「お金の護身術」~NISA・iDeCo・ふるさと納税編~
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