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円安再開?関税引き上げ、参院選、利下げ…複雑に絡みあうドル/円

2025/7/9 17:07

 ドル/円相場は、米国の関税政策、日本の政局、FRBの金融政策などに翻弄(ほんろう)される7月を迎えます。円安再開の可能性を探りつつ、各要因が及ぼす影響に注目していきます。

目次
  1. 日米貿易交渉の行方。与党敗北なら円安がさらに加速?
  2. 利下げ期待でドル売りが強まる?FOMCと15日のCPIに注目

日米貿易交渉の行方。与党敗北なら円安がさらに加速?

 相互関税の延長期限である9日まで相場は様子見になりそうだと思っていたところ、7日正午(日本時間8日午前1時)以降、貿易相手国に対して新たな関税率を通知する文書の送付を始めたことが報道され、さらにトランプ大統領はSNSで日本と韓国に対して25%の税率を課すと明らかにしました。

 これらの動きをみて市場では、関税による物価上昇が嫌気され長期金利が上昇しドル高の動きとなりました。株はそれまでに最高値を更新する動きになっていたこともあり、金利上昇と景気への悪影響を警戒して下落しました。長期金利の上昇は、4日に米国下院を通過した減税法案を嫌気した面もあるようです。

 ドル/円は、関税による物価上昇からくる金利上昇と米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ観測後退によってドルが買われ、また、関税による日本企業の業績悪化によって日本銀行の早期利上げ観測が後退したことから1ドル=146円台への円安となり、9日には1ドル=147円台の円安となりました。

 また、7日の午後には、トランプ大統領は相互関税交渉期限を7月9日から8月1日に延長する大統領令に署名しました。相互関税の発動日まで相場は動きづらいかもしれません。

 石破茂首相は、4月公表の相互関税税率24%と比べると、今回公表の25%は「実質据え置き」であり、かつ協議の延長を示すものだとして協議の継続を指示しましたが、交渉は難航しそうです。

 日本にとって景気に悪影響にならないような合意となればよいのですが、どんな形での合意であれ、日本の輸出品に対する関税率は現状より上がることが予想されます。もし、20日の参院選で敗北となれば、日本は政治・経済面でダメージを受ける可能性があります。

 高関税による企業業績の悪化や日本の景気後退による日銀の早期利上げ観測の後退、そして日本の政局混迷によって円売りが強まる可能性があるかもしれません。

利下げ期待でドル売りが強まる?FOMCと15日のCPIに注目

 3日に発表された6月米雇用統計がよかったこともドル買い要因となっています。非農業部門雇用者数が14.7万人増加と予想を上回り、失業率が4.1%に改善しました。ただ、この内容は慎重にみた方がよいとの分析もあります。雇用者増は季節要因で増加したとの見方です。

 つまり、州・地方自治体による教育関連の雇用が6万人超増え、夏休みに入る時期(6月は米国の学校では学年末)と集計期間の関係で教員の数が多く出たとの分析や、失業率の低下は、6月の労働参加率が62.3%に低下し2022年12月以来の低水準となっており、職探しをする働き手の減少(職探しをしない人は失業者として数えられず、「隠れ失業者」が増加)という側面があるとの分析もあります。

 従って、雇用統計発表後、FRBの利下げ期待は7月見送りとなりましたが、雇用統計発表後も9月利下げ期待は続いている状況になっています。

 これまでのところ関税による価格上昇分は日米企業が吸収してきたため、米物価の上昇はあまりみられませんでしたが、そろそろ民間の努力も限界に来ているとの指摘もあります。

 来週15日に発表される米6月消費者物価指数(CPI)によっては、相場の見方が変わるかもしれないため注目したいと思います。前月よりも上昇予想が多いようですが、もし、予想通りもしくは予想を上回った場合、トランプ関税の影響が出始めてきたと市場は捉え、金利は上昇し、ドルが一段と高くなるかもしれません。

 そしてFRBの利下げ観測は後退するのですが、もし、物価上昇によって消費がより慎重になり、景気が悪化するのではないかと市場が警戒し始めると、金利上昇は抑制的になり、FRBの利下げ期待が復活するかもしれません。そうなると、ドル買いよりもドル売りの方が勝る可能性があります。このようなシナリオも想定しておいた方がよいかもしれません。

 逆に、予想を下回った場合、関税の影響は小さいと市場は捉え、これまでの動きの反動がみられるかもしれません。金利は低下し、株は上昇し、FRBの利下げ期待が高まりドルは売られるかもしれません。

 トランプ関税によって、FRBの追加利下げや日銀の追加利上げが遅れるとの見方からドル高・円安の動きとなっていますが、特に日本は米関税による輸出の減少によって貿易赤字が拡大し、消費税減税や現金給付などで財政支出が拡大する懸念や、景気悪化による日銀の利上げ時期後退観測などの円売り材料によって円安に動きやすい環境となっています。

 5月や6月の円安水準を抜くのかどうか注目です。

 5月には英国や中国との貿易協議の合意を受けて1ドル=148円台半ばまで円安が進み、6月は米国の核施設攻撃によって1ドル=148円近辺への円安となりました。しかし、その後は抑制的な米物価の動きや他の経済指標の伸び悩みからFRBの利下げ観測が高まり、ドルの上値を抑える動きとなっています。

 現在、ドル/円は1ドル=148円まであと1円ほどの円安となっていますが、関税交渉や合意を受けて1ドル=148円に届く勢いがあるのか、あるいは関税交渉が煮詰まってきていることから関税の影響を受けた物価高懸念や、景気後退懸念の方が勝り、FRBの利下げ期待がくすぶり続けることによってドルの上値が重たくなるのかどうかに注目したいと思います。

 トランプ大統領からの利下げ圧力は強まってきています。FRB高官からも7月利下げを示唆する発言が相次ぎましたが、実際に6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)でどのような議論がされたのか、9日発表のFOMC議事要旨に注目です。

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