プラチナ価格は年初から55%も上がって10年来の高い水準になったが、過去のデータを見ると、プラチナの供給も需要も短期間のうちに価格に反応したことはない。したがって今年残りの期間も、我々はプラチナの需給の状況には大きな変化は起きず、プラチナ不足は予想通り30トンに達すると考える。

 プラチナ価格は約900ドル/オンスから1,100ドル/オンスの間のレンジ相場が長く続いたが、6月18日に1,300ドル/オンスを超え、2014年以降で最も高い水準にある。しかし、この状況にあってもプラチナの供給も需要も短期間で大きく変化することはないだろう。5月に発表した『プラチナ四半期レポート』では、供給も需要も前年比マイナス4%としたが、我々のこの予測に変更はない。

 図1が示すように、プラチナ価格の変動がすぐに供給と需要に変化をもたらしたことはなく、何らかの反応が顕在化するのは数年後だ。供給サイドの価格弾力性が低いのは、プラチナの約85%はPGM生産の一環として生産されているという構造的な理由による。PGM鉱山の収益の中でプラチナは最大だが、新たな生産に関する決定はベースメタルの副産物を含むバスケット全体の展望にかかっている。2017年から2023年にバスケット価格が83%上昇した際にも供給全体には影響がなく、実際、その時期は7%生産が減った(図2)。価格の高騰が新たな供給に結びつくとしても、ほとんどの鉱山はフル稼働に8年から9年を要する(図3)。リサイクル供給の方は価格に幾分敏感ではあるが、リサイクルが供給全体に占める割合は少ない(図4)。自動車触媒のリサイクルは2015年から2021年の間に約50%増えたが、PGM価格が下がるとともに2023年には減少に転じた(図5)。

図1.これまでプラチナの需給は、短期間では価格にほとんど反応してこなかった

図1.これまでプラチナの需給は、短期間では価格にほとんど反応してこなかった
出典:ジョンソン・マッセイ(1975年~2012年)、SFA(オックスフォード)(2013年~2018年)、メタルズフォーカス(2019年~2025年予測)

図2.PGMバスケット価格が急騰しても、それによって供給が大きく増加することはなかった

図2.PGMバスケット価格が急騰しても、それによって供給が大きく増加することはなかった
出典:ジョンソン・マッセイ(1975年~2012年)、SFA(オックスフォード)(2013年~2018年)、メタルズフォーカス(2019年~2025年予測)

 需要の方も価格が上がったからといって短期で減ることはないだろう。自動車、宝飾品、工業、投資の各分野の過去の需要データを見れば価格弾力性が低いことがわかる(図6)。例えば2003年から2008年にPGM価格は約600ドル/オンスから約2000ドル/オンスに上がったが、自動車触媒の需要は25%以上増え、世界金融恐慌で不況になって初めて安価なパラジウムへの代替が始まった(図7)。工業の需要は価格との間に時間が経ってから逆相関関係が見られるものの、四半期というよりは数年かかって需要の調整が起こる。宝飾品の需要は構造的にもう少し価格に敏感だが、現在はゴールドに比べてプラチナが相対的に低価格なため需要は減っていない。ゴールドとプラチナの価格比は2025年5月には3.5倍、2015年来最大となり、プラチナに乗り換えた中国の宝飾品メーカーもある(図8)。こういった需要のパターンと柔軟性を欠く供給のおかげで、我々が5年間の展望レポートで述べたように、2029年までプラチナの不足が続くだろう。

プラチナ市場は価格変動に大きく遅れて反応する。現在の上げ相場が需給に影響を及ぼすには数年かかる。

供給サイドは構造的に柔軟性がなく生産までに年月を要する。需要サイドは今まで価格高騰局面にあっても需要は拡大。

投資資産としてのプラチナを支える背景

-WPICのリサーチによると、プラチナ市場は2023年から供給不足が続き、2029年までに地上在庫がなくなる可能性
-プラチナ供給は、鉱山生産、リサイクルともに課題多い
-リースレートの上昇とロンドン相対市場のバックワーデーションがタイトな市場を反映
-プラチナは世界のエネルギー転換に不可欠な水素経済で重要な役割を果たす重要鉱物
-プラチナ価格は長い期間過小評価が続きゴールドよりも大幅に安い

図3:PGM価格が高くても、生産までにかかる時間、初期投資、技術的問題が新たなPGM生産の開始の妨げとなる

図3:PGM価格が高くても、生産までにかかる時間、初期投資、技術的問題が新たなPGM生産の開始の妨げとなる
出典:ノーザム、Ivanhoe、Wesizwe、Tharisa、イムプラッツ、シバニェ・スティルウォーター

図4:3Eの供給全体に占めるリサイクル供給は小さい

図4:3Eの供給全体に占めるリサイクル供給は小さい
出典:ジョンソン・マッセイ(1975年~2012年)、SFA(オックスフォード)(2013年~2018年)、メタルズフォーカス(2019年~2024年)

図5:2015年~2021年にバスケット価格の上昇で自動車触媒のリサイクルによる3E供給が増えたが、供給全体への影響は限定的

図5:2015年~2021年にバスケット価格の上昇で自動車触媒のリサイクルによる3E供給が増えたが、供給全体への影響は限定的
出典:メタルズフォーカス、WPICリサーチ(2025年以降)注:2025年予測は最新スポット価格を採用

図6:プラチナの主な需要分野の短期的な価格弾力性は低い

図6:プラチナの主な需要分野の短期的な価格弾力性は低い
出典:ジョンソン・マッセイ(1975年~2012年)、SFA(オックスフォード)(2013年~2018年)、メタルズフォーカス(2019年~2024年)、WPICリサーチ(2025年以降)注:2025年予測は最新スポット価格を採用

図7:自動車触媒の代替パターンは短期的価格変動よりも構造的な要因を反映

図7:自動車触媒の代替パターンは短期的価格変動よりも構造的な要因を反映
出典:プラチナはジョンソン・マッセイ(2005年~2012年)、SFA(オックスフォード)(2013年~2018年)、メタルズフォーカス(2019年~2025年)、WPICリサーチ(2026年以降)、パラジウムはジョンソン・マッセイ(2005年~2012年)、メタルズフォーカス(2013年~2024年)、WPICリサーチ(2025年以降)注:2025年予測は最新スポット価格を採用

図8:ゴールド価格の上昇でコスト高に、中国の宝飾品メーカーはプラチナに乗り換え

図8:ゴールド価格の上昇でコスト高に、中国の宝飾品メーカーはプラチナに乗り換え
出典:ブルームバーグ、WPICリサーチ

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