(おまけ)米ドル安の流れと新興国株

 また、米国市場では気になる動きもあります。その一つが、「米ドル安が続いている」ことです。

<図9>米ドル指数と10年債利回り(日足)の動き(2025年7月2日時点)

米ドル指数と10年債利回り(日足)の動き(2025年7月2日時点)
出所:Bloombergデータを基に作成

 米ドル指数と10年債利回りの推移を上の図9で見ていくと、両者はおおむね連動して動いているのですが、今年の3月あたりからドル安が進行するかたちで乖離が目立つようになり、米国株が最高値を更新している現在でもその傾向が続いています。

 こうしたドル安の理由としては、米トランプ政権の関税政策の影響や米財政不安などの警戒感によって、これまでの「米ドル1強」が揺らいでしまい、米国外の投資家による「為替ヘッジ」のニーズが高まったことが考えられます。

 現時点ではまだ積極的に米国資産が売られているわけではありませんが、米国の景気減速への見方も根強い中、今後もドル安傾向が続き、輸入物価の上昇などで米国のインフレが収束しない状況となれば、米国がスタグフレーション的な状況に陥ることも考えられるため、注視する必要があります。

<図10>米ドル指数とMSCI新興国株指数(月足)の動き(2025年7月2日時点)

米ドル指数とMSCI新興国株指数(月足)の動き(2025年7月2日時点)
出所:Bloombergデータを基に作成

 ちなみに、米ドル安の局面では新興株が上昇しやすいという傾向があります。

 今週30日(月)に掲載された、楽天証券経済研究所の今中のレポート([動画で解説]『国際分散投資のススメ(世界が多極化する中、投資も多極化へ)』)でも、米国株以外の投資先を考えることの有効性について指摘されています。上の図10で2000年からの米ドル指数とMSCI新興国株指数の動きを見ても、米ドル指数が低下傾向の場面で新興国株が上昇していることが分かります。