米国株市場の上昇はまだ続く?

 先ほどは、日足チャートで米国株市場の先高観について見てきましたが、ここでは視点を変えて米国株の強さについて探って行きます。

 最初の視点は、こちらのレポートでも触れた「相場のムードから見た上昇トレンドの波とポイント」です。

<図4>相場のムードから見た上昇トレンドの波とポイント

相場のムードから見た上昇トレンドの波とポイント
出所:筆者作成

 一般的に、上昇トレンドの局面は大きく、「序盤」「中盤」「終盤」の三つに分けられます。

序盤:株価の底打ちや悪材料の出尽くし感などで買いが入る
中盤:不安の後退や、今後の期待感で買いが入る
終盤:過度な楽観と、流れに乗り遅れることの恐怖で買いが入る

 では、足元の米国株市場は「どこに位置しているのか?」ですが、トランプ関税の影響や米景気減速懸念を先取りする格好で急落し、4月7日に底を打ったあたりからが序盤、その後の関税交渉の進展期待や、米経済の堅調な推移と利下げ観測の高まり、根強いAI需要によるテック株への期待などを背景にして戻り基調を描いていたのが中盤と捉えると、現在は「中盤の終わり」、もしくは「すでに終盤入り」している微妙なところに位置していると思われます。

 仮に、すでに終盤入りしているのであれば、次の展開は下落ということになりますが、そのバロメーターとして注目されるのが銘柄の物色動向になります。最近までの株価上昇のけん引役は、AI関連や半導体関連などのいわゆるテック系の銘柄でした。

<図5>米「マグニフィセント・セブン」銘柄のパフォーマンス比較(2025年7月2日時点)

米「マグニフィセント・セブン」銘柄のパフォーマンス比較(2025年7月2日時点)
出所:MARKETSPEEDIIデータを基に作成

 上の図5は、昨年末を100とした「マグニフィセント・セブン」銘柄のパフォーマンス比較ですが、これまで相場をけん引してきた、メタ・プラットフォームズ(META)マイクロソフト(MSFT)エヌビディア(NVDA)の3銘柄が今週に入って下落したり、伸び悩んでいる半面、アルファベット(GOOG)アップル(AAPL)など、これまで出遅れていた銘柄が上昇している様子がうかがえます。

<図6>注目の米AI関連銘柄のパフォーマンス比較(2025年7月2日時点)

注目の米AI関連銘柄のパフォーマンス比較(2025年7月2日時点)
出所:MARKETSPEEDIIデータを基に作成

 同様に、その他のテック系銘柄のパフォーマンスについても、オラクル(ORCL)クラウドストライク(CRWD)など、勢いを保っている銘柄がある一方で、パランティア・テクノロジーズ(PLTR)が大きく失速する場面を見せるなど、勢いに陰りが生じている銘柄も出てきています。

 このように、テック系銘柄の中でバラツキが出始めているわけですが、他の業種へ買いが広がっている動きも見られ、その代表格が米銀行株です。

<図7>米大手銀行株のパフォーマンス比較(2025年7月2日時点)

米大手銀行株のパフォーマンス比較(2025年7月2日時点)
出所:MARKETSPEEDIIデータを基に作成

 上の図7は米大手銀行のパフォーマンス比較です。いずれの銘柄も自己資本規制が緩和される観測が高まった6月下旬から上昇に勢いが出ていることが確認できます。とりわけ、ゴールドマン・サックス・グループ(GS)シティグループ(C)JPモルガン・チェース(JPM)のパフォーマンスは、図5のマグニフィセント・セブン銘柄を上回っています。

 このように、「買える銘柄」が存在・継続しているあいだは、上昇相場が思ったよりも続く可能性がありますが、以前から指摘してきたように、米国株はかなりの割高の状況であることに変わりはありません。

<図8>米S&P500(月足)と長期PERの推移

米S&P500(月足)と長期PERの推移
出所:Bloombergデータを基に作成

 もっとも、今月の中旬以降になると決算シーズンが本格化します。

 期待を先取りする格好で相場をけん引してきた企業が期待以上の業績や明るい見通しを示すことができれば、現在の高株価収益率(PER)も正当化されることになりますが、反対の結果だった場合には、売りに押されることが想定されます。

 いずれにしても、答え合わせのタイミングが2~3週間後に控えていますので、そろそろ値動きが落ち着いてくるかもしれません。