30歳で月額約1万円の社員寮を出なくてはいけないことから、自由に使えるお金が減ることに危機感を感じ、元手300万円から株式投資をスタートしたkenmoさん。初期投資の300万円から追加資金を投入することなく、5年で資産1億円。追加投入ナシで資産を増やせた秘けつを伺った。
kenmoさんプロフィール
X:kenmo@湘南投資勉強会
YouTube:湘南投資勉強会オンライン
『5年で1億貯める株式投資 給料に手をつけず爆速でお金を増やす4つの投資法』/2025年04月23日発売/ダイヤモンド社/1,870円(税込)
ボーナスで貯めた300万円を5年で1億円に。追加入金ナシってホント?
トウシル:著書を拝見して非常に印象深かったのが、元手300万円から、追加資金を投入せずに、わずか5年間で資産1億円を達成したという点です。種銭をまず5年で1億円に育て、その後5年で資産3億円に到達とは、タイパが良すぎて驚愕なのですが…一方で「順調すぎて、自分が再現するのは難しい…」と思う人もいるかもしれません…。
kenmoさん:いえいえ、実は悔しい思いや失敗もたくさんしていて、昨日も今日も損切りしています。今日も、昨日売った銘柄が6%高になっているのを見て、「なんと腹立たしい…」と歯ぎしりしながら家を出てきました(笑)。
トウシル:失敗もされていると聞いて、逆にほっとしました(笑)。しかし退場に関わるような致命傷はくらっていない、ということですよね?
kenmoさん:退場こそしていないのですが、2020年のコロナショック時の大損害はなかなかシビアでした。それまで育て上げた資産の1億3,000万円が、8,000万円くらいまで一気に減りました。
トウシル:マイナス5,000万円ですか…。それはなかなか大打撃ですね。何がいちばん痛かったのでしょうか?
kenmoさん:1銘柄だけで3,500万円の損失が出ました。株式の新規公開(IPO)直後で、株価収益率(PER)が20倍という銘柄だったのですが、注目の*不動産テック銘柄だという理由で、将来性を見込んでホールドしていました。が、値動きが不穏なので、改めて企業情報を調べてみると、不動産テックというよりも、普通の「不動産会社」の要素が強いことが分かったんです。不動産銘柄のPERは一般的に20倍よりもずっと低いことが多く、相当割高な状態で買ってしまったことになります。そこにコロナ禍で業績が一気に崩れて、3,500万円ほどの損失になりました…。
| ▼不動産テックとは ITやAIなどテクノロジーを、不動産売買や賃貸に活用し新しい仕組みを作り出す取り組み。消費者側から見ると「ローン借り換え査定」や「不動産検索(マッチング)」などが身近。不動産企業側から見ると不動産登記情報をデータベース化して閲覧を簡易化したり、不動産に特化したチャットサービスなどが業務効率を上げる。昨今では、空き物件を、民泊や会議室、レンタルスペースなどに提供する「スペースシェアリング」の検索・予約などの仕組み化などの技術も注目されている。 |
トウシル:著書を拝見すると、kenmoさんは、株主優待の権利付き月に向かって株価が上昇するタイミングで優待銘柄を売却することで利益を出す「株主優待需給投資」や、中小型銘柄が急成長するタイミングで売買する「成長株投資」で資産を増やしてきた方です。
ロジカルな企業分析力で、上昇銘柄をズバリ見抜いてきた様子がよく分かるのですが、そんな読み違いもあるんですね。
kenmoさん:私は、中小型成長株が、年初来高値や昨年来高値といった「新高値」を更新した時点で銘柄を買い、上昇が続く間はホールドor買い増しし、下落の気配が見えた時点で利益確定する「新高値ブレイク投資」で資産形成の考え方を整理できたのですが、それでも最初のころは企業分析が甘かったり、コロナショックなど予想外な出来事に対応できず、失敗もたくさんしています。
この銘柄で大損失を出したときは「もう株は引退だ!」と絶望して、1カ月くらい憂鬱を引きずっていたのですが、時間がたつにつれ、「やっぱりこのままでは終われん!」と奮起しました。ちなみに、その後の売買で損失は全て取り戻しましたし、今は新たな中期経営計画も出して、これからもっと面白くなっていく企業だと思っています。
C = Current Quarterly Earnings (当期利益は良いか)
A = Annual Earnings Increases(通年の利益は良いか)
N = New product or service(新製品・新サービスを出しているか)
S = Supply and Demand(その銘柄の需給関係は良いか)
L = Leader or Laggard?(その銘柄は主導銘柄か、停滞銘柄か)
I = Institutional Sponsorship(機関投資家に好まれているか)
M = Market Direction(市場の方向性を見極められるか)
投資を始めたきっかけは「推し活」と「独身寮退出」
トウシル:そもそもkenmoさんが、投資を始めたのは何歳くらいで、何がきっかけだったのでしょうか?
kenmoさん:実は、学生時代から現在も「推し活」に全力投球しています。大学院を卒業して会社員になってからも、推し活にかけるお金は削りたくないと思っていました。
トウシル:すごく興味があります。どんな「推し活」だったんですか?
kenmoさん:声優で歌手の水樹奈々さんです。ファンクラブ1期から会員なので、もうファン歴23年になります。ライブがあるたびに、抽選で当たった会場は全国遠征していました。今年も冬にライブツアーがあるので、当たったら時間が許す限り遠征します。
トウシル:スゴイ! 全力の「推し活」ですね。
kenmoさん:はい。これまでおそらく200公演以上ライブに行っているので、総額1,000万円くらいは推し活につかった計算になるでしょうか。あまり計算したくないですね(笑)。ただ、20代は自由にお金を使えていたのですが、30歳を超えたら月額1万円の独身寮を出ていかないといけないルールで、タイムリミットが迫ってきていました。
そこで、普通のサラリーマンがお金を増やすにはどうすればいいか…を真剣に考え始め、「起業」「出世」「投資」の3択の中から「投資」を選んだことが株式投資を始めたきっかけです。
トウシル:この3択の中に、「投資」という選択肢が出てきたのはなぜでしょう?
kenmoさん:学生時代に、『金持ち父さん 貧乏父さん』(ロバート・キヨサキ著)という本を読んだ経験がベースにあると思います。ベストセラーだったので、投資や経済に興味がない学生でも、さすがにあの本は読んでいました。
本の中では、働く人々が「労働者」「自営業者」「ビジネスオーナー」「投資家」という4種に分類されていたんですが、会社員として働いてはいたものの、この先40年以上ずっと働き続ける…という実感はありませんでした。どちらかというと「楽したい」という気持ちの方が強かったですし、「労働者」で「出世」してお金持ちになるという選択肢は真っ先に消えました。
かといって事業リスクを取ってまで世の中を変えたい、というモチベーションもなく、自分自身にそこまでの器があるとも思えませんでした。したがって「起業」(ビジネスオーナーや自営業者)もナシ。残ったのが「投資家」だったんです。
たかが1,300円、だけど大きな一歩を踏み出した
トウシル:資産形成の手段として「投資」を選んだkenmoさんの「初投資」について教えてください。
kenmoさん:2011年、初めて東北電力(9506)の株を購入しました。ネット証券で口座を開設し、投資デビューしました。
初めて株式を買う時は、さすがに「このワンクリックでお金が減るかも…」という緊張感がありました。購入前に数日間、値動きを見ていて「今なら安そうだな」と感じたところで買い、少し利益が出たのでその日のうちに売却し、1,300円ほどの利益を得ました。
トウシル:少額でしたが、今の3億円につながる大きな一歩ですね。
kenmoさん:はい。ただ、実際に「投資」を実践してみて「こんなに簡単にお金が増えるんだ…」という驚きと同時に「逆に、簡単にお金が減るリスクもあるんだな…」とも感じました。直感に頼って適当に買ったり売ったりするだけではお金持ちになれるはずがない、と思ったので、「投資をやるならば、やはり、きちんと基礎から勉強しなければ」と思いました。
トウシル:初投資を体験した後、どんな勉強をしましたか?
kenmoさん:まずは、株で失敗した人、破産した人の特徴を徹底的に調べました。
トウシル:成功した人ではなく?
kenmoさん:はい。私は1982年生まれで、これまでの学生時代を、バブル崩壊やリーマンショック、就職氷河期など、日本の株価が下がり続ける環境で過ごしてきました。今の若い人は違うのかもしれませんが、私には「株を持っていると無限に損をする」というイメージがまず頭にあったので、そう簡単にもうかるわけがないと思ったんです。
株価が上がる銘柄を選ぶ方法を基礎からきちんと身に付けるため、さまざまな本を読みました。その中で、ウィリアム・オニール氏が提唱した「新高値ブレイク投資」に出会い、「これだ!」と納得したんです。
ボーナスで貯めた300万円を中小型1銘柄に集中投資
トウシル:「新高値ブレイク投資」の実践編として購入したのはどんな銘柄ですか?
kenmoさん:ちょうど私が株を始めた2011年は、まず東日本大震災があり、日本経済も大打撃を受けていて、投資する銘柄の選択肢がほぼない状態でした。
銘柄を選ぶ際のルールとして、「売上高10%以上」、「利益率20%以上」を条件としていたのですが、景気が悪すぎて、条件を満たす企業はほとんどなくて…。唯一、景気に関係なく自社製品だけで利益を伸ばしていたのが、ジンズホールディングス(3046)だったんです。
当時は、給料が入ったら、必要な生活費以外のほとんどを水樹奈々さんの推し活に投入していたものの(笑)、給料以外のボーナスは貯金に回していました。その300万円の元手を全て、ジンズにつぎ込んだのが、本格的な投資デビューと言えます。
トウシル:ジンズが成長する、と判断した理由を教えてください。
kenmoさん:ジンズは、わずか5年で上場した、急成長した企業でしたが、リーマンショックで株価が急落し、瀕死の状態でした。ただ、社長主導でさまざまな改革を行い、「ビジョン再構築」が進んでいる点に注目しました。
瀕死の状態のときは株価が39円くらいと、底辺をはっていたのですが、改革が進んでいくうち、600円台、800円台、1,200円台とぐんぐん上昇し、最高値を更新し続けていました。
さらに、PCから目を守る「度付きのブルーライトカットメガネ」の発売を発表したタイミングで積極的に売買をし、資産を大きく増やすことに成功しました。元手の300万円が、最終的には760万円に増えました。
トウシル:一見、大勝負に見えますが、ビギナーズラックはなく、理論→実践→利益につながった投資デビューですね。ただ、新高値をマークした銘柄が、すぐに下がってしまうのか、そのまま上昇し続けるのかは、簡単には見抜けないと思いますが…。
kenmoさん:おっしゃるとおりこのモメンタム(勢い)が一瞬なのか、今後も続く兆しなのかを知るためには、その企業の成長性を正確に分析する必要があります。実際の月次や店舗の視察によって、数字の根拠を探りにいき、確度を高めていった形になります。
ただ、当時は今のようにECが主流ではなかったので店舗の視察である程度業績予測ができたものの、最近はECが台頭してきてなかなか店舗を見て業績予測をする難しさも感じているところです。
トウシル:業績が揺れやすい中小型株の成長力を、自分なりに分析する方法をアップデートしていく必要があるんですね。
kenmoさん:ちなみに、景気が良い時は「新高値ブレイク投資」が機能しやすくなります。全体の景気が良くて、含み益の投資家が多いので、利益確定したお金がどんどん再投資に回っていきます。
ただ、選択肢が山ほどあるという状態になり、結果的に「どれを買っても株価は上がった」という状況が生まれてきます。あえて新高値ブレイク投資をやらなくてもお金が増える状況です。
一方で、少し世の中が不景気で不透明感があると、一部の成長している銘柄にお金が集まりやすく、消去法的な銘柄選択によって「新高値ブレイク投資」がより機能しやすくなるという一面もあります。
トウシル:今はどうですか?(取材時:2025年5月)
kenmoさん:今は景気に不透明感が強いので、急成長する中小型株を探すには絶好の機会かもしれません。東証によるグロース改革の動き(上場から5年経過した企業に時価総額100億円以上を求めるなど、グロース市場の上場維持基準の見直し方針を東証が発表)もあり、中小型株にはかなり資金が入ってきている印象はあります。
トランプ関税の影響や7月の参議院選挙の先の先といった不確実性の高いイベントがあるものの、チャンスは狙っていきたいと思っています。
トウシル:後編では、300万円→1,000万円→3,000万円→5,000万円→1億円と、資産額ごとに、投資で「やるべきこと」「やってはいけないこと」や2018年にkenmoさんが立ち上げた「湘南投資勉強会」の活動について伺います。
▼後編はこちら
情報戦で個人投資家が機関投資家に勝つには?中小型成長株投資家・kenmoさんインタビュー[後編]
企画/取材/編集/執筆 金井雪子
元手300万円&追加入金ナシ。5年で1億円達成の秘けつを教えて!中小型成長株投資家・kenmoさんインタビュー[前編]
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