過去10年ほど長らく不振だった中国のプラチナ宝飾品製造が息を吹き返している。2024年の中国のプラチナ宝飾品需要は1%増えたが、深センの水貝では10箇所ものプラチナ宝飾品ショールームが新たにオープンし、2025年のプラチナ宝飾品製造需要は当初の予測、前年比でプラス5%から、プラス15%に上方修正され、15トンに上る見込みだ。
中国のプラチナ宝飾品市場は2013年にピークを迎えた後、2023年までは一貫して下落傾向にあった。プラチナ価格の下落や婚姻数の減少、買い取りの際の割引率が高いこと、さらには投資目的の消費者にも魅力的な24金の宝飾品のデザインが増えたことなどがプラチナ宝飾品の不人気に追い討ちをかけた。しかし今では、足元のゴールド価格の高騰は多少落ち着いたとはいえ、2025年第1四半期の平均価格よりも依然として約15%高いため消費者が遠のき、ゴールド宝飾品の需要は前年比で32%も減っている(図1)。ゴールド宝飾品を抱える業者は需要の低迷と在庫コストの上昇を背景に積極的に高額商品の売却を進め、主力をマージンの高いプラチナ宝飾品に移している。今年に入ってから深センの水貝では10箇所ものプラチナ宝飾品ショールームがオープンし、プラチナを主に扱う店舗数は3倍になった。
図1.2025年第1四半期の中国の宝飾品のトレンドは両極端

図2.中国のプラチナ宝飾品製造量は増えている

中国のプラチナ宝飾品卸売業者の約9割が集まる水貝地域は小売市場への窓口だ。ショールーム1ヶ所で100キロから500キロものプラチナ宝飾品在庫を抱えると言われているが、このところ卸売業者からの注文が集中しすぎたため、Dingyuanでは製造能力を超えて4月末に注文を一時保留せざるを得ない状況になった。さらに4月に中国が輸入したプラチナは12ヶ月ぶりに11トンという多さに達した(図3)。通常は価格が上がると取引量が減る上海黄金交易所(SGE)の取引量も、第1四半期中は価格が高止まりだったにも関わらず増え続けた(図4)。
プラチナ・ギルド・インターナショナル(PGI)は、2025年第1四半期中のパートナー各社の売上が前年比で50%増えたと報告しており、これは我々の『プラチナ四半期レポート』最新号で発表した増加率(前年比+26%)の2倍に当たる。この卸売需要が小売需要にも反映されれば、2025年のプラチナ宝飾品需要予測は65トン増えることになる(図7)。我々は以前にもゴールドからプラチナへ宝飾品需要が移る可能性について述べたが(プラチナ投資のエッセンス1月16日)、この傾向は第1四半期の中国以外の地域の需要の変遷にはっきりと表れている(図5)。PGIは、長期的には欧米で23トンから47トンのホワイトゴールド宝飾品の需要がプラチナ宝飾品に移る可能性があるとしている。
中国の宝飾品製造と卸売業者はゴールドとプラチナの価格差を利用しプラチナ宝飾品の在庫を増やしている。
世界のプラチナ宝飾品需要は構造的な下落から回復し2年連続で62トン以上の予測
投資資産としてのプラチナを支える背景
-WPICのリサーチによると、プラチナ市場は2023年から供給不足が続き、2029年までに地上在庫がなくなる可能性
-プラチナ供給は南アの鉱山供給減とリサイクル率の低下で問題多い
-リースレートの上昇とロンドン相対市場のバックワーデーションがタイトな市場を反映
-プラチナは世界のエネルギー転換に不可欠な水素経済で重要な役割を果たす重要鉱物
-プラチナ価格は長い期間過小評価が続きゴールドよりも大幅に安い
図3:4月の中国のプラチナ輸入は12ヶ月ぶりに多い11トン

図4:従来SGEの取引量は価格に反比例していたが、今年第1四半期は価格が下がらなかったにも関わらず取引量が増加

図5:今年第1四半期の世界のプラチナ宝飾品製造は前年比9%増加

図6:ゴールド価格の上昇でバイヤーが敬遠、宝飾品製造業者はプラチナにスイッチ

図7:2016年〜2023年の中国のプラチナ宝飾品需要は減っていたが、中国以外の地域の製造は2016年以来年平均で5%増加

図8:ゴールド価格の高騰で14金と18金のホワイトゴールド宝飾品の卸売価格がプラチナ950の価格を上回る

2025年5月2日現在の価格
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