JR東海は新幹線事業が好調で2025年3月期に経常最高益を更新した。しかし、リニア中央新幹線の工事ストップが嫌気され、PBR1倍を大きく割り込んでいる。リニア新幹線リスクを考慮しても売られ過ぎと判断し、投資判断を「買い」に引き上げる。
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著者の窪田 真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「JR東海を「買い」に引き上げ PBR0.7倍、株価割安と判断」
リニア中央新幹線の先行きが懸念されるJR東海
JR東海(東海旅客鉄道:9022)は前期(2025年3月期)、JR4社(東日本、東海、西日本、九州)の中で、いちはやく経常最高益を更新しました。今期(2026年3月期)は、6.4%の経常減益を予想していますが、それでも利益は高水準です。
JR4社の連結経常利益推移:2018年3月期~2026年3月期(会社予想)

JR各社は、新幹線事業・観光事業が好調で、コロナ前の最高益に近づいています。トランプ関税による混乱でグローバル企業が買いにくくなる中、内需好業績株として注目されています。ただし、JR東海だけは業績好調にもかかわらず、株価が低迷しています。
JR4社株価と日経平均の比較:2019年末~2025年5月末

JR東海はこれまで新幹線を中心に成長、最高益を更新していく「美しい成長株」でした。ところが、さらなる成長を懸けて建設中の、リニア中央新幹線の工事が静岡県で止まっている【注】ことが重大な経営リスクとして意識され、2024年に株価が大きく下がりました。
【注】リニア中央新幹線の工事が静岡県でストップ 大井川水資源への影響をめぐる議論から、JR東海が進めるリニア中央新幹線の工事が、静岡県で長らく差し止められています。JR東海は当初、品川~名古屋間を2027年に開業する予定でしたが、2034年以降に開業延期を発表しました。大阪まで2045年までに開業の予定ですが、それも遅れる見通しです。 |
リニア全線が開業すれば、航空便の代替を含め、新規需要の拡大が期待されます。国内で実績を積めば、将来は海外へ、リニア新幹線技術の輸出も期待されます。ところが、開業が大幅に遅れる見通しとなったことで、JR東海の成長期待が低下するだけでなく、コスト負担が極めて重くなる不安が出ています。
解散価値といわれるPBR1倍を割り込む
2025年5月末でJR4社の株価指標(株価収益率[PER]・株価純資産倍率[PBR])を比較すると、以下の通り、JR東海が一番低い評価となっています。驚くべきことに、JR東海の株価は、解散価値といわれるPBR1倍を割り込むところまで売り込まれています。
JR4社のPER・PBR:2025年5月末時点

PERやPBRには、株式市場での企業の評価が表れます。成長性が高いと思われている銘柄はPERやPBRが高くなるのが普通です。成長性が低いと思われていると、PERやPBRが低くなるのが普通です。
JR東海は成長性の高い東海道新幹線を保有することから、JR4社の中でPERやPBRが相対的に高いのが普通でした。ところが、リニア中央新幹線工事がストップしていることが重大なリスクと思われるようになってから、逆にPERやPBRが一番低い銘柄となっています。
2024年3月29日にリニア中央新幹線の品川~名古屋間開通を2027年から2034年以降に延期と発表してから、JR東海の株価下落が顕著になりました。リニア中央新幹線への投資が重大なリスクとして意識されるようになったためです。
JR東海とJR東日本の連結PBR比較:2019年末~2025年5月末

リニア中央新幹線の先行き不安が解消されるまで、JR東海に対する株式市場の評価は低いままにとどまる可能性があります。私は、環境への影響に対する不安が解消され、早期に静岡県での工事が再開され、日本がリニア技術で世界トップを走り続けることが可能になることを強く期待しています。
JR東海「買い」に引き上げ、大規模自社株買いとPBR0.7倍を評価(窪田真之)
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