トランプ大統領の発言やFRBへの利下げ圧力により、トリプル安に見舞われたものの、政権からの沈静化発言でいったんは落ち着きを取り戻しました。しかし、利下げ圧力は続くことが予想され、再び起こるかもしれないトリプル安に市場は身構えている状況です。
トランプ大統領の利下げ圧力、関税交渉…ドル/円の重たい状況は続く
17日の赤沢亮正大臣の訪米の成り行きが注目されていましたが、突然のトランプ大統領との会談も乗り切り、その後の閣僚級会合でも為替問題は議題に上らなかったとの報道でいったん円安に振れました。しかし、為替問題は加藤勝信財務相・ベッセント米財務長官会談(24日で調整)で協議になることから、ドル/円の頭の重たい状況が続いています。
さらに、週明け21日(月)早朝、トランプ大統領が自身のSNSで非関税障壁の不正行為の例として、一番に「為替操作」(Currency Manipulation)を挙げたことも影響し、円高が進んで22日には1ドル=140円割れとなりました。日米財務相会談を前にトランプ大統領からの圧力も高まっていると市場は捉えているもようです。
また、トランプ大統領からのFRB(米連邦準備制度理事会)パウエル議長の解任圧力が強くなっていることもドルのネガティブ材料となりました。
解任の法的根拠はないのですが、NEC(米国家経済会議)のハセット委員長は18日、パウエル議長の解任について「トランプ大統領とそのチームがパウエル議長の解任を可能にする『新たな法的分析』があるかどうかを検討する」と明言しています。
パウエル議長は2026年5月の任期満了まで議長職を務める意向であると表明していますが、トランプ大統領からの解任圧力そのものがドルの信任を揺るがしており、ドルの上値を重くしている状況となりました。
さらに、トランプ大統領は21日、SNSでFRBに即時の利下げを要求しました。早期利下げに慎重なパウエル議長を「遅すぎる男」(Mr. Too late)と痛烈に批判し、「今すぐ金利を引き下げなければ、経済が減速する可能性がある」と利下げ圧力を強めました。
この投稿を受け、中央銀行の独立性が脅かされるとの懸念が広がり、21日のダウ工業株30種平均は一時1,300ドル超と大幅に下落しました(終値マイナス971.82ドル)。そして米国債も売られ、米長期金利は上昇しました。
しかし、想定以上のトリプル安(米株安、米債券安、ドル安)を受けて、これを阻止しようとする発言がトランプ政権から相次ぎました。ベッセント米財務長官が「米中間の緊張緩和はごく近い将来に訪れると確信している」と述べたことや、トランプ大統領が「パウエル議長を解任する計画はない」と発言しました。
これらの発言を受けて、米中貿易対立激化懸念やFRBの独立性を損なうのではないかとの懸念が和らぎ、22日はトリプル安を巻き戻す動きとなり、NYダウは1,000ドル以上の上昇、ドル/円は23日の東京市場早朝には一時1ドル=143円の円安となりました。
ただ、トランプ大統領は「FRBは利下げをすべきだ」と改めて要求しており、利下げ圧力は続くことが予想されます。
トランプ政権からの市場の沈静化を図った発言が相次ぎ、米市場のトリプル安はいったん落ち着いた格好となっています。しかし、今後の関税交渉が実際にどのように進展していくのか、実体経済にどの程度の影響を及ぼすのかを見極めるまでは、再び起こるかもしれないトリプル安に市場は身構えている状況に変わりはないかもしれません。
ドル/円は1ドル=139円台への円高となりましたが、今回の動きは円全面高ではなくドル全面安の動きとなっています。ドル/円は1ドル=140円を割れましたが、ユーロ/円などのクロス円の動きは緩やかな円高の動きとなっています。
その背景は、ドル安によってユーロが上昇しているため、ユーロ高圧力によってユーロ/円の円高が抑制的な動きになっています。従って、140円割れへの円高の動きも、それまでの円高スピードと比べると緩やかになっています。
今後、米国だけでなくユーロ圏の景気後退懸念によってFRBやECB(欧州中央銀行)の利下げ観測が高まると、ドル安、ユーロ安となってユーロ/円が円高に動きやすくなれば、ドル/円の円高スピードも高まるかもしれません。
金融政策の行方は。24日の日米財務相会議に注目
22日、IMF(国際通貨基金)は世界経済の成長見通しを前回1月時点の予測から0.5%下方修正し、2.8%としました。トランプ政権の高関税の影響で大幅な成長の減速をもたらすとの見方を示しました。米国は1.8%(マイナス0.9%)、ユーロ圏は0.8%(マイナス0.2%)、日本は0.6%(マイナス0.5%)の下方修正となりました。
米国は、消費者センチメントなど先行して発表されているソフトデータ(心理を測るデータ)の悪化が相次いでいますが、今後、トランプ関税引き上げ前の駆け込み消費や前倒し需要が一巡すれば雇用や消費などのハードデータ(実際の経済活動を反映しているデータ)が悪化してくることが予想されます。
そうなれば、利下げ慎重姿勢のパウエル議長も、トランプ大統領の圧力に屈するという形ではなく、利下げ慎重姿勢を変えてくることも予想されます。
日本銀行は現在利上げ姿勢を維持しています。足元のCPI(消費者物価指数)が鈍化しているFRBやECBと異なり、足元のCPIが上昇傾向にある日銀が利下げなどの金融緩和に一気に転ずることは難しいのではないかと思われます。利上げ維持姿勢から利上げ慎重姿勢、そして利上げ見送りに転じていくなど、当面は現状維持を示すことになる程度だろうと思われます。
日銀の早期利上げ観測は後退するかもしれませんが、FRBやECBの利下げ期待が高まることによって円高圧力は続くことが予想されます。
また、次回の4月30日~5月1日の日銀金融政策決定会合では利上げ見送りとの見方が大勢ですが、展望レポートで経済成長率を下方修正するのかどうか、物価見通しを上方修正するのかどうか注目です。修正があっても利上げ姿勢は継続されるのかどうかにも注目です。
今週は24日の日米財務相会議に注目です。トランプ大統領は、非関税障壁の不正行為の例として、一番に「為替操作」(Currency Manipulation)を挙げました。
「為替操作」とは、米国に対する輸出を有利にするために自国の通貨を安くするということです。日本の場合だと、1ドル=160円の円安にして米国に対する輸出を増やし、その結果米国は貿易赤字になったということです。
そのような円安は「為替操作」であり、「けしからん、不正行為だ」と米国は主張するのかどうかということになります。日本は意図して円安に持っていったのではないのですが、第1次トランプ政権就任時のドル/円レート1ドル=110~120円と比べると、160円から140円の円高になっても、トランプ大統領から見れば、20~30円の円安水準になっているということになります。
ただ、日本は「為替操作」をしておらず、むしろ円安を阻止するために為替介入(ドル売り・円買い)を実施しているとの説明を行い、米国も理解すると思われるため、今回の協議では「為替操作」が核心の問題点とはならないと思われます。
しかし、円安是正は間接的に仄めかしてくるかもしれません。円安是正の水準を示すのではなく、例えば日銀の金融政策の正常化を進め、為替水準の適正化を求めるという形で円安是正を求めてくるかもしれません。ドル/円は一時1ドル=143円の円安となりましたが、24日の為替協議が終わるまでは頭の重たい状況が続きそうです。
ドル/円、再びのトリプル安へ警戒。トランプ政権の揺さぶりと為替協議の行方
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