トランプ米政権は相互関税の対象からスマホや半導体製造装置を除外しました。ハイテク株に対する警戒感後退で、目先は割安株(バリュー株)よりも成長株(グロース株)に焦点が当たりそうです。とりわけ、日本にとっては自動車関税の影響が大きなマイナス要因として残るため、自動車関連の高配当利回り銘柄の反発力は弱いとみられることに留意が必要です。
アナリスト評価◎の割安高配当株TOP15

※コンセンサスレーティング…アナリストによる5段階投資判断(5:強気、4:やや強気、3:中立、2:やや弱気、1:弱気)の平均スコア。数字が大きいほどアナリストの評価が高い。
※移動平均線乖離(かいり)率…株価が移動平均線(一定期間の終値の平均値を結んだグラフ)からどれだけ離れているかを表した指標。この数値がマイナスならば、移動平均線よりも現在の株価が安いということになる。
上表は、長期投資に適した銘柄の高配当利回りランキングと位置付けられます。
4月11日時点での高配当利回り銘柄において、一定の規模(時価総額1,000億円以上)、ファンダメンタルズ(コンセンサスレーティング3.5以上)、テクニカル(13週移動平均線からの乖離率20%以下)などを楽天証券の「スーパースクリーナー」を使ってスクリーニングしたものとなっています。配当利回りはアナリストコンセンサスを用いています。
なお、上場市場は各社ともにプライム市場となっています。
トランプ政権の関税策に対する懸念から株式市場は大幅安に
3月21日終値~4月11日終値までの日経平均株価(225種)は10.9%の下落となりました。
トランプ政権の関税政策による世界景気の先行き懸念が株式市場の重しとなりました。為替市場でドル安円高が進行したことも、東京市場にとっては懸念材料とされました。
また、関税策を巡るトランプ発言に振り回される格好から、市場のボラティリティ(変動率)が非常に高まる状況となっており、4月第2週は全営業日で前日比騰落幅1,000円以上(うち3営業日はマイナス)を記録しています。
こうした中、ランキングTOP15銘柄も全面安、大半の銘柄が10%以上の下落となっています。高配当利回り銘柄にとっては、3月決算末を通過したことで、配当権利落ちの影響も強まる形となりました。
下落銘柄では、コスモエネルギーホールディングス(5021)が最大の下落率となっています。米中貿易戦争の激化が原油需要に影響を与えるとの見方から、原油相場が大きく下落したことが響きました。ジェイテクト(6473)、三ツ星ベルト(5192)、TOYO TIRE(5105)などの自動車部品株、ホンダ(7267)などは自動車関税の影響が懸念されています。
アステラス製薬(4503)は米国売上構成比が高い医薬品株として、今後想定される医薬品関税への警戒感が先行しました。
半面、サンゲツ(8130)、東洋建設(1890)などの内需株は、米国の関税策の影響が乏しいとみられ、相対的に下げ幅は小幅にとどまっています。
自動車関連株が関税の影響懸念で株価下落、利回りは上昇し多くランキング入り
今回、新規にランクインしたのは、三ツ星ベルト(5192)、ホンダ(7267)、ジェイテクト(6473)の3銘柄。除外となったのは、JFEホールディングス(5411)、インフロニア・ホールディングス(5076)、大和工業(5444)となっています。
新規3銘柄はそれぞれ自動車関連銘柄であり、自動車関税の影響懸念から相対的に下落率が大きくなって、利回り水準が上昇しました。
半面、JFEHDは米系証券において投資判断格下げの動きが観測され、コンセンサスレーティングが基準未達となっています。内需関連のインフロニアHD、米国の鉄鋼関税がプラスと期待される大和工業は株価下落率が小さく、相対的に利回り水準が低下しました。
アナリストコンセンサスが会社計画の配当予想を大きく下回っている銘柄としては、マネックスグループ(8698)が挙げられます。会社計画ベースでの配当利回りは6.08%となっています。最低配当額30円を明示しているほか、株式譲渡資金を原資とした特別配当実施も発表しているので、2025年3月期の会社配当計画が下振れる余地は小さそうです。
ただし、2026年3月期を基準とすると、特別配当10円の一巡を考慮した場合、4.57%に利回り水準が低下することには注意が必要です。
THK(6481)は会社側で配当予想を公表していません。年間配当金254円レベルがコンセンサスとなっているようです。会社側ではDOE(株主資本配当率)8%を基準としており、2024年12月期末の株主資本からみて、コンセンサスは妥当でしょう。
スマホや半導体製造装置を関税対象から除外
トランプ米政権は相互関税の対象からスマートフォンや半導体製造装置など電子関連製品を除外しました。スマートフォンやパソコンは中国への依存度が高く、大幅な関税が課されることへの影響が強く警戒されていました。
また、高関税による半導体製造装置や記憶装置の輸入減少は、米国内での半導体工場やデータセンター建設に対して打撃を与えるとの見方も強かったとみられます。今回の除外決定を受けて、ハイテク株に対する過度な警戒感は大きく後退することでしょう。
さらに、先に相互関税の上乗せ分発動延期も発表されているため、トランプ大統領の関税に対する強硬姿勢はかなり崩れたとの見方も成り立ちそうです。
関税の影響懸念が後退したことで、目先は高配当利回り銘柄などのバリュー株よりも、グロース株のリバウンドへ相対的に焦点が当たりそうです。
とりわけ、日本にとっては、自動車関税の影響が部品各社や設備投資関連銘柄に幅広く波及する状況に変化はないため、関連の高配当利回り銘柄の反発力は弱いものになると考えられます。高配当利回り銘柄の物色に関しては、この点に留意が必要となります。
配当利回りランキング4月~スマホ関税免除でハイテク株上昇、割安株よりも成長株優位に
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