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投資の王道S&P500。下落時は時間分散投資での買い場なのか

2025/4/11

相場は上がれば、大なり小なり下落は付き物。しかし暴落ともなれば、不安も高まります。ちまたでとかく聞こえるのは「上昇時にはまだ行ける、下落時も今こそ好機」と買い推奨ばかり。重要なことは、今起こっている相場の変化、自分が行っている投資の意味を正しく理解することに尽きます。

目次
  1. この急落の正体
  2. 相場下落時の時間分散投資
  3. ただし相場の基本では…

※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の田中 泰輔が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
【S&P500】相場急落に動じない、投資の王道

今回のサマリー

●トランプ関税の「とばっちり」でS&P500は急落
●しかし、現時点でファンダメンタルズを壊すほどの下落率ではない
●中期的に相場が持ち直すとの観点からは、筆者は急がずじっくりの買い目線
●時間分散投資では下げ局面こそ有利な買い場…という考え方には一定の合理性がある
●ただしこの機会に、時間分散投資の意味についてきちんと理解しておきたい

 当レポートは、米国の相互関税延期決定前に執筆したものですが、ロジックは一貫しており、変更はありません。

この急落の正体

 S&P500種指数は、2月の6,100台をピークに、3月中に5,500、4月の数日で一時5,000割れまで急落しています。そもそもの背景は、速く高く上がっていたAI(人工知能)相場の自律調整とDeepSeekショックからでした。そこに米景気指標の陰りが確認され、神経質さを増す相場を、トランプ砲がかく乱しました。

 極め付きは、4月2日にトランプ米大統領が公表した貿易相手国別の相互関税です。国別の「貿易赤字額/輸入額×0.5」という合理的根拠となり得ない、とっぴな関税率を見た市場は、内外景気悪化、インフレ高進、国際関係の緊張に不安を覚え、株式相場は崩落しました。

 テクニカルに見ると、S&P500は2月18日のピークから4月7日のボトムでマイナス21.4%です。以前の急落時と比較すると、2022年の金利急騰を嫌った逆金融相場は10カ月かけてマイナス27.5%、2020年のコロナ禍では1カ月強でマイナス35.3%でした。

 この下落率自体は、小さくはないものの、ファンダメンタルズを台無しにするほど「まだ」大きくはないという評価です。そもそもが、トランプ大統領の理不尽な高関税が招いた「人災」と言っても過言ではない事態です。それだけに、トランプ政策の小康で相場の売り一巡、ないし、市場支持への転換という人の手による立ち直りを待つ構えで観察しています。

 トランプ政策の基本観は、2025年には痛みを伴うことを覚悟して高関税を強行し、国際秩序を変え、国内製造業を強化し、税収を確保。その上で、2026年7月の米建国250周年、11月の中間選挙へ向けて、景気と相場の高揚感を取り戻すべく、減税や規制緩和を打ち出すという段取りです。

 リスクは、そんな無謀な政策が首尾よくいかず、相場はさらに手ひどい暴落を被り、景気も後退して、簡単には立ち直れなくなる事態です。ただし、私見では、このリスクシナリオになりそうなら、景況・市況の下支えにもなりふり構わず政策対応すると思うので、足元の不穏な相場急落は、2025年後半から2026年前半にかけて持ち直す流れをメインシナリオとしています。

相場下落時の時間分散投資

 2025年以降のS&P500について、この人災相場がいつどこで底打つかを予想する技術は存在せず、誰にも分かりません。すでに公表されたとっぴな高関税率に基づいて、米国は主要各国とのディールを始めており、足元の5,000付近がすでに底値圏かもしれません。ただし、この後、景気が悪化したり、国別の貿易交渉がこじれたりして、さらに下落する可能性も排除はされません。

 図1の赤線は、S&P500が今後数カ月で4,500まで低下し、その後2026年を通じて6,000まで回復に向かう道筋を描いています(予想ではなく、仮置きです)。2025年1月から毎月時間分散で1単位ずつ積立投資をしていく場合のポジション平均コストは青線、ドルコスト平均法(毎月同じ金額ずつ購入し、相場上昇時には購入株数を減らし、相場下落時には購入株数を増やす方法)でのコストが緑線です。

図1:S&P500と時間分散投資コスト(2025年初起点)

S&P500と時間分散投資コスト(2025年初起点)
出所:Bloomberg、田中泰輔リサーチ

 時間分散投資の場合、赤線が青・緑線を下回っている場合はその格差が含み損、赤線が上回るとその格差が含み益となります。下落過程で積立投資を続けると、相場が8月に4,500まで下落し、その後持ち直し始める場合でも、2026年初頭という比較的早くに損益分岐点に至ることが分かります。

 仮に2025年1月に一括投資した場合、赤線そのものがポジションコストになります。この仮置きの計算事例では、2026年中には損失解消には至りません。

 経済は長期的に実質・名目で上向きに成長し続けるとの見方には、一定の合理性があります。そして、相場では、速い高い上昇には相応の下落も付き物というのも基本です。ここから、長期上昇トレンドを信じる限り、積立投資は継続し、相場が下落した時ほど割安に購入できる好機とする考え方が導かれます。

ただし相場の基本では…

 しかし、相場下落時を時間分散投資の「買い場」として一般化する前に、留意すべき基本を解説しておきます。

 図2は、図1と同様に、S&P500を赤線、時間分散買いのポジションコストを青線、ドルコスト平均法の場合を緑線で描いていますが、違いは、出発点を2023年1月の上昇局面に入る初期にしていることです。

図2:S&P500と時間分散投資コスト(2023年初起点)

S&P500と時間分散投資コスト(2023年初起点)
出所:Bloomberg、田中泰輔リサーチ

 図2で、初期の一括投資のポジションコストは4,000付近にあり、赤線の上昇でピーク6,000付近では50%ほどの含み益を得ています。この時、時間分散投資のポジションコストは5,000付近にあり、6,000との格差部分で示される含み益は20%となります。

 その後の相場下落に際しても、時間分散投資は赤線が下回る期間には含み損になりますが、一括投資の赤線は、含み益の下落率は大きくても、マイナスにはならず、10%以上の含みを残しています。

 長期投資における時間分散の積み立て購入と一括購入を比較すると、優劣を語れないことが分かります。一括購入は、これから相場が上昇するという時にポジションをつくると、メリットが大きくなります。高値で購入しても、10年、20年、30年の長期なら、十分に利益を得られるはずであり、割に合うという考え方になります。

 実は、時間分散の積立投資も、時間の経過とともにポジションが大きくなると、新規購入分のコストが保有ポジション全体の平均コストを動かす度合いは小さくなります。このため、一括投資と同様に、相場が長期トレンドに沿って増大していく含み益に多くを依存する構図になります。

 総括をすると、時間分散であれ、一括であれ、安い時に(できればより多く)買うことが望ましいということに尽きます。ただし、相場のタイミングを計るのは、熟達した投資家でなければ困難であり、そういった意味では、時間分散によってタイミング狙いの悩みが軽減されることは、一般投資家のメリットになります。時間分散買いは、相場急落時の不安に駆られて安値売りする失敗を、一瞬立ち止まって「売っていいのか」と考える行動ルールになるのです。

 なお、長期的には、時間分散投資の割安買いの効果は薄れます。従って、長期の投資を経て、ポジションを積み上げるにつれ、10年、20年に一度級で起こり得る相場下落リスクには、最大限の注意を払う必要があります。

 この点で、現在の相場下落率はここ最近の2年に一度級であり、トランプ政権も、FRB(米連邦準備制度理事会)も、政策対応余地を有しています。相場に「絶対」はなく、「まさか」を排除することはできませんが、私は、割高だった米国株が買いやすい水準にせっかく調整されたものとして、急がず焦らず買い目線で臨んでいます。

■著者・田中泰輔の『逃げて勝つ 投資の鉄則』(日本経済新聞出版刊)が発売中です!

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