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トランプ関税の衝撃~スタグフレーションに対峙するFRB、利上げを停止する日銀~(愛宕伸康)

2025/4/9 8:00

トランプ大統領による2日の相互関税発表を受けて世界の株価が急落しました。しかし、市場はまだその影響を織り込めていません。関税引き上げは米国民に対する増税であり、米国経済がスタグフレーションに陥る可能性が高まっています。FRBはどう対応するでしょう。日銀も利上げをいったん停止し、見通しを再検討する必要がありそうです。

目次
  1. 市場はまだトランプ関税の影響を織り込めていない
  2. トランプ大統領の「解放の日」~相互関税の中身と衝撃~
  3. スタグフレーションにFRBはどう対処するのか
  4. 日銀は利上げをいったん停止~5月1日公表の「展望レポート」で見通し修正へ~

※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の愛宕 伸康が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
トランプ関税の衝撃~スタグフレーションに対峙するFRB、利上げを停止する日銀~

市場はまだトランプ関税の影響を織り込めていない

 トランプ大統領による2日の相互関税発表を受けて市場が大荒れです。発表後の3日間(3~7日)でニューヨークダウ工業株30種平均は4,259.7ドル(10.1%)、日経平均株価は4,589円(12.8%)の急落となりました。日経平均株価は8日に反発しましたが、これで底を打ったとは思わない方が良いと筆者はみています。

 というのも、今回の関税引き上げが物価・経済に及ぼす影響を、実際のデータでまだ誰も確認していません。大きく反応している市場も、物価や景気がこうなるだろうという想像の下で動いているに過ぎません。

 まるで1890年のマッキンリー関税法や、1930年のスムートホーリー関税法を模倣したかのような今回の相互関税は、歴史が物語っている通り、それが本当に実行されれば、米国経済だけでなく、世界経済や国際政治情勢にとてつもないショックを及ぼす可能性があります。

 ショックには「認知ラグ」がつきものです。2008年のリーマンショック然り。2020年のコロナショック然り。何かイベントが発生してそれが経済に影響を及ぼし、それをデータで確認するまでにはある程度の時間を要します。

 リーマンショックの時は、2008年9月15日にリーマンブラザーズが破綻し、日本の経済指標に激震が走ったのは、なんと2カ月後の11月になってからでした。今回も、関税引き上げの影響がデータに現れるのは、もう少し時間がたってからのことになります。

 今後しばらくはトランプ関税に関するニュースで右往左往する展開が続き、その影響がデータに表れ始めてから、市場は改めてその深刻さを織り込むことになるのだろうとみています。打ち出された関税率は想像を超えており、その影響をデータで確認するまでは予断を許すべきでないと考えています。

トランプ大統領の「解放の日」~相互関税の中身と衝撃~

 2日に発表された相互関税は、全ての国・地域に対し10%の「基本税率」をかけた上で、各国・地域が課している税率(「為替操作や貿易障壁も含む」)を基に、それと同水準まで関税率を引き上げるための「上乗せ税率」を設定するというものです。

 トランプ大統領が「割引した相互関税」というその上乗せ税率は、日本24%、欧州連合(EU)20%、中国34%、インド26%、韓国25%、タイ36%、ベトナム46%など、想像をはるかに超える水準でした。

 なぜ、トランプ大統領が「割引した」と言っているかというと、算定した相互関税の税率を半分にしているからです。しかし、この税率の算定根拠が極めて恣意(しい)的で、明らかな「ふっかけ」だから始末に負えません。

 後になって、算定する際のパラメーターに入力ミスがあったなど驚くべき報道も出ていますが、そもそも交渉のためのふっかけなのだから、間違っていたから撤回しますとは決してならないでしょう。

 トランプ大統領は2日の演説で、「我々の国家は何十年もあらゆる国家によって物色、略奪、陵辱(りょうじょく)されてきた。わが国とその納税者たちは50年以上にわたってぼったくられてきた。その心配はもういらない」と高らかに述べましたが、最も打撃を受けるのは米国経済です。

 端的に言えば、関税引き上げは自国民に対する増税と同じです。関税引き上げによって輸入物価が上昇し、それが国内価格に転嫁されれば消費者物価も上がります。消費者物価が上昇すれば消費が抑制され、景気が悪化します。

 仮に、関税引き上げ分が消費者物価に転嫁されなくても、企業が増税分を負担することになるだけであり、収益が悪化し設備投資や人件費が抑制されるため、結局景気は悪化します。

 米エール大学予算研究所(The Budget Lab at Yale)では、相互関税が発表された後、関税引き上げが経済・物価に与える影響を試算し公表しています。

 それによると、今年に入って実施された関税引き上げにより、米国の平均実行関税率は2.42%から22.44%に上昇し(1909年以来の高さ)、物価(PCEデフレーター)を短期的に2.3%押し上げ、2025年の実質GDP(国内総生産)を0.9%押し下げるという結果になっています。こうなれば、景気停滞(Stagnation)とインフレが同時に起こるスタグフレーションです。

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