トランプ関税と米国景気の悪化懸念に、世界の株式市場が揺れています。先行き不透明な状況が続く時だからこそ、大事にしたいのは長期投資の目線。4月に権利が取れる株主優待の中で、筆者が気になる5銘柄を厳選します。
貿易戦争勃発、米国株市場は「スタグフレーション」を警戒
世界的な貿易戦争が勃発しています。トランプ米大統領は日本時間3日早朝、相互関税についての詳細を公表する予定です。同日午後には、輸入自動車に対する追加関税も発動します。ここ数カ月、聞かない日はないぐらい登場頻度が高い「関税政策」は、いよいよ現実の政策としてスタートしますので、今後は世界的な経済に与える影響を見極める必要があります。
足元の日経平均株価やダウ工業株30種平均、ナスダック総合指数、S&P500種指数の米主要3指数はさえない動きです。3月28日時点の米主要3指数の史上最高値からの下落率は、ナスダックがマイナス14.1%、NYダウはマイナス7.6%、S&P500はマイナス9.2%です。
基本的に高値から10%以上下落した時点で「調整局面」と表現しますので、「米主要3指数そろって調整局面」の可能性は非常に高まっています。米国株が弱いと日本株にも当然ながら波及しますので、米主要3指数の方向性は気がかりなところです。
今、米国で警戒されているのは、インフレでもデフレでもない「スタグフレーション」です。あまり聞きなれない用語だと思いますので、簡単にご説明します。
スタグフレーションは、高いインフレと高い失業率が併存する状況を指します。つまり不況にもかかわらず、物価が継続して上昇している経済状況のことで、「stagnation(景気停滞)」と「inflation(インフレーション)」の合成語です。
スタグフレーションは、1970年代の日本や米国で発生しました。1973年、第4次中東戦争によって、OPEC(石油輸出国機構)が原油価格を大幅に引き上げたことで、消費者物価指数が急騰し個人消費が低迷、株価も下落という状況が日米で発生しました。2020年のコロナショック後の世界経済の減速と物価高の状況も一時的なスタグフレーションだったと言えるでしょう。
トランプ関税の不確実性
トランプ関税によってインフレが再加速する可能性が高まっている中、景気悪化懸念も意識されたことで「スタグフレーション」が警戒視され、米国株が売られているという構図です。
この状況を打破する重要なカギを握っているのはもちろんトランプ大統領です。今回の追加関税は、世界各国から米国内に工場を誘致するための政策と私は理解していますが、そんなに簡単にいくでしょうか?
工場を誘致しても生産ラインが稼働するまでの2~3年間、米経済はスタグフレーションに陥る可能性があります。明確な主張を行う米国国民がこうしたリスクを黙殺することは考えにくいでしょう。関税に対する何かしらの譲歩策が各国から出た場合、トランプ大統領はあっさりと追加関税方針を撤回するのではないかと私は思います。
先行き不透明なマーケット、NISAで長期保有できる優待銘柄が魅力
とはいえ、貿易戦争勃発で先行き不透明感が強まっており、日経平均やプライム市場の時価総額が大きい銘柄の方向性もさえない状況は今しばらく続くでしょう。であれば、長期投資の観点で、優待銘柄の関心を高めてはいかがでしょうか。
2024年にスタートした新しいNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)は、旧NISAにあった非課税期間(一般NISAは5年、つみたてNISAは20年)という制約が一切なくなり無期限となりましたので、30年、40年という長期間、NISAで銘柄を保有することが可能ということです。
株の長期保有といえば、数年以上保有することでより充実した株主優待を受けることができる「長期保有特典制度」を設けている優待銘柄があります。新しいNISAで優待銘柄に投資する場合は「成長投資枠」を使い、年間で240万円まで投資することができます。旧NISAよりも投資枠が増えたので、保有できる優待銘柄の選択肢が広がりました。
4月の株主優待5選
今回は、4月に権利が取れる優待銘柄をご紹介したいと思います。時価総額は小さいながらも優待銘柄としての知名度が高い中小型株もありますので、ぜひ参考にしてみてください。
なお、4月の権利取り最終日は、29日(火)が祝日となっている関係上、25日(金)と少々早めになりますのでご注意ください。
銘柄名 | 証券コード | 株価(円) (4月2日終値) |
特色 |
---|---|---|---|
アイ・ケイ・ケイHD | 2198 | 814 | フレンチの鉄人のお店で使える優待券 |
伊藤園 | 2593 | 3,123 | 東証上場唯一の「優先株」も選択肢の一つに |
くら寿司 | 2695 | 3,110 | 最近いろいろとにぎやかな人気優待銘柄 |
テンポスHD | 2751 | 3,580 | 遊び心ある優待食事券の抽選制度も導入 |
ヤーマン | 6630 | 862 | 美容家電の先駆者は長期保有特選制度も導入 |
アイ・ケイ・ケイHD<2198>
九州を基盤に地方都市でゲストハウス・ウェディング形式の挙式・披露宴などを企画・運営しています。同社は10月決算企業ですが、優待の権利確定は4月末としています。
優待制度は、同社の特選お菓子のほか、フレンチの鉄人である坂井宏行氏が手掛けるレストラン「ラ・ロシェル」の3店舗(福岡店、南青山店、山王店)や同社レストラン施設「キュイジーヌ フランセーズ ラ・シャンス」などの8店舗(富山支店、佐世保支店内、広島支店内、岡崎支店内、大阪支店、神戸支店、東京支店、水戸支店)において、対象コースを優待料金で利用できる制度などです。
保有株数が増えることで受けられる優待内容が増えるほか、2026年10月期からは、長期保有特典制度も導入する予定です。少々先の話ですが、長期投資家を優遇する姿勢は評価したいところです。
伊藤園<2593>
「お~いお茶」ブランドを展開するほか、野菜ジュースやコーヒーなどの清涼飲料水も扱っています。傘下には「タリーズコーヒージャパン」もあります。
同社は東京証券取引所に上場している銘柄では唯一『優先株』を上場させています。伊藤園第1種優先株式(25935)です。優先株(第1種優先株式)とは、議決権がない(原則)一方、1株につき、普通株式への1株当たり配当金の125%をもらえる権利がついています。
普通株主に対して金銭配当を行わないときは、1株につき15円の配当金がもらえます。株主総会における議決権はありませんが、その分、配当金が高いのが優先株の特徴です。もちろん株主優待制度も普通株式同様あります。
優先株を購入する投資家のメリットとしては、株主総会への出席や経営方針への口出しができない分、高い配当金をもらえる点です。
一方、デメリットは、議決権がないため機関投資家が購入しないほか、TOPIX(東証株価指数)に組み入れられていないためにTOPIXのETF(上場投資信託)の買いなどが入らないことから、普通株式よりも相対的に株価が低い点でしょう。メリット・デメリットともにありますので、長期保有する上で何を優先するかを明確にすればよろしいかと思います。
くら寿司<2695>
寿司チェーン店を運営しており、コンセプトは「安心・美味しい・安い」です。同社は2024年12月に「株主優待廃止」を発表しましたが、2025年2月に優待制度を再開し、市場の注目を集めました。
同社は株主優待を廃止する理由について、配当を含めた株主への公平な利益還元のため、と説明。制度廃止を発表した2024年12月より前の株価水準は3,900円でしたが、発表から3カ月で株価は4割ほど下落しました。
そして、今年2月、4月末からの株主優待制度を再開することを発表しました。ただ、株価は優待廃止発表前の昨年12月の水準まで回復していません。一部市場では、優待廃止直後、創業家の副社長が、自ら代表を務める資産管理会社に個人保有の同社株を移管させたことを投資家が嫌がっているとの声も聞かれます。
決して違法という対応ではないですが、優待銘柄として人気の同社が優待制度を廃止することで株価がどのような反応を示すのかは容易に想像がつきます。4月権利取り最終日の4月25日にかけて、株価がどのような評価をされるのか含めて注目します。
テンポスHD<2751>
厨房機器販売で国内トップを誇っており、新品・中古の厨房機器販売を主力に、集客支援や物件紹介など、飲食店経営をサポートする事業も展開しています。傘下の「ステーキのあさくま」など自社グループと支援先の飲食店などで使える食事券で、100株以上保有していれば、年1回8,000円分の優待食事券が受け取れます。利用できる飲食店は全国950店舗ほどあります。
2024年からは、中間期の10月末時点に、優待食事券の抽選制度を設けています。1万円分、2万円分、3万円分の優待食事券をそれぞれ100人(合計300人)に贈呈するというもので、当選しなくても、500円分の優待食事券が受け取れます。ユニークな優待制度を楽しんでみてはいかがでしょうか。
ヤーマン<6630>
家庭用美容健康機器や化粧品などを展開しており、美容家電の大手です。美容家電になじみのない人もいるかもしれませんが、同社は美容家電業界の先駆者的存在で、大きな市場シェアを占めています。
同社の優待制度は、保有株数で同社の直営店もしくは公式通販サイトで利用可能な株主優待割引券の金額が変わるほか、長期保有特典制度も設けていますので、長く保有することでメリットがあります。美容に関心のある人に同社株をプレゼントするというのもいいかもしれません。なお、くれぐれも贈与などにはお気を付けください。
伊藤園、くら寿司…NISA成長投資枠で「4月株主優待」。トランプ関税に揺れる今こそ長期投資!
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