お金と上手に向き合えていて、経済的に良好な状態にある「ファイナンシャル・ウェルビーイング」を実現している人はどのような人なのでしょうか。今回は、具体的な例でご説明します。
収入や資産が多いからといって幸せとは限らない?
前回の「幸せな人生のため、お金と上手に向き合う「ファイナンシャル・ウェルビーイング」とは?」では、ファイナンシャル・ウェルビーイングとは
「当面の支払いを着実に行うことができ、将来のお金について安心しており、人生を楽しむためにお金の面で幅広い選択ができる状態」
であることをご説明しました。一般的には、「収入や資産など、お金がたくさんあるほど、幸せになれる(ファイナンシャル・ウェルビーイングを実現できる)」と考えている人が多いのではないかと思います。実際のところ、どうなのでしょうか。
次のグラフは、年収(横軸)と幸福度(縦軸)の関係を調べたものです。年収が低いうちは幸福度の上昇が大きいですが、ある程度の水準になると幸福度の上昇は限定的になっています。

これは米国での調査結果であり、年収7万5,000ドル(現在の為替レート:1ドル=150円だと日本円換算1,125万円)あたりで、幸福度は横ばいになっていく結果となっています。
年収300万円の人が年収400万円に上がった時の幸福度の変化と、年収1,200万円の人が年収1,300万円に上がった時の幸福度の変化を想像すると、前者の方が大きいのは感覚的にも理解できると思います。
次は日本を対象にした調査結果で、保有している金融資産額(横軸)と現在もしくは将来の満足度(縦軸)の関係を示しています。どちらの満足度も金融資産額が増えるにつれて右肩上がりに上昇している様子が確認できます。

ここで注目していただきたいのは、グラフが三つあり金融リテラシーの高さごとに左から、低、中、高と分かれていることです。金融資産を3,000万円以上持っていて金融リテラシーが低い人の満足度と、金融資産は1,000万円未満であるものの金融リテラシーが高い人の満足度がほぼ同じ水準になっています。
3,000万円以上持っていたとしても老後にいくら必要か把握できておらず漠然とした不安を抱えている人もいる一方、金融資産は1,000万円未満であっても自分なりの生活費や年金収入を把握し、それなりに満足できている人もいる、そのように解釈できるのではないかと考えています。
金融資産を1,000万円未満から3,000万円以上に増やすことは容易ではなく、できたとしても時間がかかるでしょう。一方で、お金の勉強をしてリテラシーを高めていくことは比較的取り組みやすいのではないでしょうか。
お金についての不安第一位は老後資金
お金については何らかの不安を持っている人も多いと思いますが、不安がある人はどのようなことに不安を感じているのでしょうか。次のグラフはお金に関する不安要因について調査した結果ですが、18歳以上69歳以下の全世代にわたって、ダントツの一位が老後資金となっています。

逆に言えば、老後資金についての不安が解消されれば、お金についての不安の大部分が解消されると言えるかもしれません。
老後資金といえば、老後収入の中心的な役割を果たすのは公的年金や企業年金ですが、これらについてはどの程度理解されているのでしょうか。次のグラフは、公的年金・企業年金の金額感をどの程度イメージできているかについてです。一つ目が全年代、二つ目が年金への注目度が最も高まっていると思われる50代を対象にした結果です。

50代であっても公的年金の水準をイメージできている人は2人に1人程度であり、企業年金にいたっては4割程度の人しか知らないという結果です。
この結果を見る限り、まずは公的年金がどのくらいの水準か大まかにでも把握、さらに会社員の人はお勤め先独自の企業年金や退職金についてもきちんと把握することで、ファイナンシャル・ウェルビーイングを高めていけそうですね。
年収300~700万円でファイナンシャル・ウェルビーイングが高い人の特徴は?
ファイナンシャル・ウェルビーイングが高い人にはどのような特徴があるのでしょうか。次のリストは、調査結果をもとに年収300~700万円でファイナンシャル・ウェルビーイングが高い人の特徴をまとめたものです。

「『ファイナンシャルウェルビーイングと金融リテラシーに関する意識と実態調査』(2024年)より、年収が高いのにファイナンシャル ウェルビーイング度が低い人はどんな人?年収が低いのにファイナンシャル ウェルビーイング度が高い人はどんな人?」太字は筆者による。
全てのポイントを満たすことはそれほどやさしいことではないかもしれませんが、一つ一つを見ていくと、必ずしも達成困難な内容ではなく、ライフプランを立て、家計の収支を把握し、将来の年金の水準感を理解しているなど、比較的基本的な内容と言えそうです。
とはいえ、このような形でファイナンシャル・ウェルビーイングを実現していくためにどのように取り組んでいけばよいのか、次回以降、具体的な考え方や取り組み方法などについてご説明していきます。
【関連リンク】
著者・横田健一が監修した 「ファイナンシャル・ウェルビーイング検定」が始まりました!
資産が多くても幸せとは限らない?「ファイナンシャル・ウェルビーイング」を実現している人の特徴
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