世界的な貿易戦争勃発で先行き不透明感が強まっています。日経平均が高値を更新するような強い動きは期待しにくい状況ではありますが、長期投資の観点では、安定した配当を出している銘柄への関心を高めてはいかがでしょうか。今回は、4月に権利が取れる配当銘柄をご紹介します。
正念場を迎えた米国株市場
トランプ米大統領によるカナダ、中国や欧州など各国への追加関税政策をきっかけに、報復関税の応酬が繰り広げられています。株式市場の動向に敏感なトランプ大統領は、自分の関税政策によって世界的な貿易戦争が勃発し、米国株が下落している事実をどのように捉えているのでしょう。
3月上旬、ベッセント財務長官は「市場も経済も中毒になっていた。われわれは政府支出に病みつきになっていた」「この先はデトックス(解毒)の期間になる」と話しました。
トランプ大統領は所得税の減税を補う新たな財源に関税を充てる考えのようですが、3月14日時点のダウ工業株30種平均とS&P500種指数は52週移動平均線水準での攻防を迎え、ナスダック総合指数に至っては一足先にこの水準を下回りました。
基本的には、高値から10%以上下落した時点で「調整局面」と表現します。「次の上昇前の調整局面」となれば、ベッセント財務長官が言う「デトックス期間」と似たような意味になりますが、「調整局面を経て下落」という展開もあり得ますので、米国株は正念場を迎えたといっても過言ではないでしょう。
約2年間続いている「上昇トレンド」の一時的な「調整局面」なのか、はたまた、約2年間続いた「上昇トレンド」が「下降トレンド」に転じる前の「調整局面」なのか。米国株は微妙な時期を迎えたと考えます。
この微妙な時期の重要なカギを握っているのはトランプ大統領です。自身が火種となった世界的な貿易戦争をどのように集結させるのか? ビジネスマンでディールメーカーのトランプ大統領が、株式市場の「マエストロ」となれるのか、その手腕が試されます。
日本株が底堅い理由
このように正念場を迎えている米国株ですが、日本株は底堅い値動きがみられます。日経平均株価は、11日に一時3万6,000円台を半年ぶりに割り込む場面が見られましたが、3月10~14日の週間ベースでは前週比+0.45%とプラスになりました。
同時期のNYダウは前週比マイナス3.07%、ナスダックは同マイナス2.43%、S&P500は同マイナス2.27%とNYダウは2週続落、ナスダックとS&P500は4週続落ですので大違いです。
この違いは何でしょう?
理由はさまざまあると思いますが、主要因は「日本株は売る人が少なく、買う人が多い」であることでしょう。「何、当たり前のこと言っちゃってんの??」と思われる方がほとんどですので、少しご説明します。
米国市場は世界中から投資資金が集まっていますので、売る人もさまざまです。一方、日本市場は、頼みの外国人投資家が2024年後半から売りに回っていますので、外国人投資家が投機的な取引である「空売り」を行わない限り、日本株はさほど下がらない状況にあります。
そして、自社株買いを行う上場企業の存在が非常に大きいです。多くの上場企業が、株主還元を行うために自社株買いを実施しています。2023年は9兆6,000億円、2024年は17兆9,000億円と過去最高を更新しました。
これは、2023年3月、プライム市場とスタンダード市場の全上場会社を対象に、東京証券取引所が「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の要請を実施したことが大きな要因です。
2025年もホンダ(7267)が1兆1,000億円の自社株買いを実施(発表は2024年12月23日)しているほか、セブン&アイホールディングス(3382)が2030年度までに総額2兆円の自社株買いを実施することを発表するなど、大企業による大規模な自社株買いの実施や発表が相次いでいます。
こうした企業による自社株買いのほか、日本株が下落した局面では、NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)を通じて日本株を購入する個人投資家も一定数います。短期的な値上がり重視で購入している方もいらっしゃれば、高配当・優待銘柄を5年、10年保有する目的で購入する方もいらっしゃるでしょう。
2024年にスタートした新しいNISAは、旧NISAにあった非課税期間(一般NISAは5年、つみたてNISAは20年)という制約が一切なくなり無期限となりました。30年、40年という長期間、NISAで銘柄を保有することが可能ということです。
株の長期保有といえば、数年以上保有することでより充実した株主優待を受けることができる「長期保有特典制度」を設けている優待銘柄があります。新しいNISAで優待銘柄に投資する場合は「成長投資枠」を使い、年間で240万円まで投資することができます。旧NISAよりも投資枠が増えたので、保有できる優待銘柄の選択肢が広がりました。
【利回り3%以上】4月権利の中小型株5選
世界的な貿易戦争勃発で先行き不透明感が強まっており、日経平均が高値を更新するような強い動きは期待しにくい状況ではありますが、長期投資の観点では、安定した配当を出している銘柄への関心を高めてはいかがでしょうか。
今回は、4月に権利が取れる配当銘柄をご紹介したいと思います。プライム市場の時価総額数兆円規模が名を連ねる3月権利取り銘柄とは異なり、知名度はそこまで高くない銘柄が多いですが、予想配当利回り3%以上での中小型株がそろっていますので、ぜひ参考にしてみてください。
なお、4月の権利取り最終日は、29日(火)が祝日となっている関係上、25日(金)と少々早めになりますのでご注意ください。
銘柄名 | 証券コード | 株価(円) (3月18日終値) |
特色 |
---|---|---|---|
日東製網 | 3524 | 1,623 | 漁網の製造販売最大手。海外で養殖事業を拡大 |
ダイサン | 4750 | 582 | 住宅建設用足場の設計施工を手掛ける |
巴工業 | 6309 | 4,180 | 遠心分離機のトップメーカー |
萩原工業 | 7856 | 1,513 | 合成樹脂繊維の大手。ブルーシートが主力 |
ファースト住建 | 8917 | 1,070 | 関西を地盤に、戸建て住宅建設を展開 |
日東製網<3524>
定置網や底引き網、養殖網などさまざまな漁網を展開する漁網の最大手企業です。日本の漁業生産量は1984年にピークを迎え、現在はピーク時比較の3分の1ほどですが、養殖事業は世界的に拡大しており、年率5%のペースで拡大し2030年には4,000億ドルに達すると予想されています。
同社は東南アジアなど海外の養殖事業支援に取り組んでいますので、こうした市場規模拡大のメリットを受けると考えます。2025年4月期は、経常利益と当期純利益が減益見通しとなっていますが、これは、前期に連結子会社で漁獲共済保険の受取金が発生したことなどで営業外収益を計上したことが要因です。営業利益はしっかり増益見通しですので、さほど心配はいらないでしょう。
ダイサン<4750>
住宅建設の施工などを行う際に組み上げるビケ足場では国内トップクラスです。コロナ期や賃金引上げなど人件費高騰などに苦しみましたが、東南アジア市場の回復などが奏功し、2025年4月期は黒字転換を見込んでいます。
コロナ期は業績不振に伴う減配もありましたが、足元の業績回復を受けて配当も安定してくるでしょう。また、大口取引先である大和ハウス工業(1925)の業績が安定していることも、安心材料の一つと考えます。
巴工業<6309>
遠心分離機を展開する国内トップメーカーです。同社は10月決算銘柄ですが、中間配当を実施しています。
更新需要期に入ったことなどもあり、機械製造販売事業が好調に推移しており、2024年11月-2025年1月期(2025年10月期第1四半期)の各利益は前年同期比50~60%の増益で着地しました。2025年10月期見通しに対する各利益の進捗(しんちょく)率は35%前後ですので、通期業績見通しの上方修正余地もあるでしょう。
萩原工業<7856>
ポリエチレンの粒を加工した糸状の素材(フラットヤーン)を開発・製造しており、国産トップクラスのブルーシートメーカーです。同社は10月決算銘柄ですが、中間配当を実施しています。
2024年11月-2025年1月(2025年10月期第1四半期)工場の新規設備稼働に伴う減価償却費増加および基幹システム更新費用の計上が影響して、営業利益、経常利益は伸び悩みましたが、足元の機械製品事業の受注残高が持ち直していますので、今後の業績寄与に期待できます。
ファースト住建<8917>
関西を基盤に戸建て建設などを展開するパワービルダーの一社です。同社は10月決算銘柄ですが、中間配当を実施しています。2025年10月期売上高、営業利益、経常利益は前期比で大幅な増収増益を見込んでいますが、当期純利益のみ前期比減益となっています。
これは、前期に負ののれん発生益を14億円計上したことが要因です。この経理処理を除くと今期も大幅な増収増益見通しと好業績ですので、当期純利益の減益見通しはさほど気にしなくてもいいでしょう。
【利回り3%以上】4月権利の中小型株5選!業績好調、安定高配当に期待
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