<2025年3月11日18時00分情報更新>
日経平均急落、一時3万6,000円割れ。なぜ起きた?
11日の東京株式市場で、日経平均株価が急落した。前日比の下げ幅は一時1,000円を超え、心理的節目の3万6,000円を下回った。前日の米国株式市場で景気後退懸念が強まり、投資家の間でリスク回避の売りが広がったため。新NISAで長期投資を始めた人は、連日の波乱相場にどう対応するべきか。専門家や個人投資家に長期投資の心構えを聞いた。
10日の米国株市場は、ハイテク株比率が高いナスダック総合株価指数が4%安となるなど、主要3指数が軒並み下落した。トランプ氏の発言が米国の景気後退入りの可能性を否定しなかったと市場に受け止められ、米国株の急落につながった。
米国株安を受け、11日の日本株市場でも半導体関連株や小売り、金融株など幅広い銘柄が売られた。日経平均は一時3万6,000円を下回る場面があった。午後は下げ幅を縮小し、終値は235円(0.6%)安の3万6,793円だった。
米関税政策を巡る「トランプ不況」の影響に、市場関係者の注目が集まっている。トランプ関税の影響について、楽天証券経済研究所の窪田真之は「輸入関税は、かける国とかけられる国の両方にダメージがある『諸刃の刃』。関税によって生活必需品の価格が上昇すると米国の消費者に重い負担を強いることになるほか、海外からの輸入部材に依存している米国の製造業にとってもダメージが大きい」と説明する。
関連動画:【速報】3/11 トランプ不況懸念で日米大幅株安。トランプ関税が与える影響とは?(窪田 真之)【楽天証券 トウシル】
新NISAの積立資産が大きく減る理由
新NISAを機に積立投資を始めた個人投資家にとっては、試練の時だ。米国や全世界の株価指数に連動するタイプの投資信託は投資初心者からの人気が高く、今回の米国株急落の影響を大きく受けることになる。
さらに、為替の円高によって収益が目減りする「為替ヘッジなし」の商品を選んだ人にとっては、足元の円高もマイナス要因だ。株安と円高のマイナス影響が重なれば、大幅に資産を減らすこともあり得る。
今後も株式市場の不透明感は続くが、資産形成では長期で投資を継続することが重要だ。積立投資には、価格が安い時に多く買い、高い時には少なく買えることでリスクを分散できるメリットがある。今回の下落局面がいつ終わるのかは予測できないからこそ、短期的な値動きに一喜一憂しない視点が求められる。
長期積立投資を続けるなら、どうすればいい?
長期で資産形成を続けていくための心得について、専門家や個人投資家の先輩に聞いた。
ウェルスペント代表
ファイナンシャルプランナー 横田健一氏
全世界の株式に投資する「オール・カントリー」は、2018年の設定以来のリターンが約158%、投資金額は6年半ほどで約2.6倍に増えました。これまでが出来すぎだったと言え、長期でみれば一時的に大きく下落することは十分にあり得ます。
大切なことは、今後数年以内に使う予定のお金や、生活費の半年~1年分程度の生活防衛資金を投資に回さず、しっかり預貯金などで確保しておくことです。こうすることで、投資資産の評価額が大きく下がったとしても、売却することなく生活できます。
一番もったいないのは、一時的な下落局面で怖くなってしまい、売却してしまうこと。その後、再開するタイミングを探るのは難しく、投資から遠ざかってしまう可能性もあります。一時的な価格の変動に振り回されることなく、長期積立投資をしっかり継続していきましょう。
楽天証券経済研究所 客員研究員
ファンドアナリスト 吉井崇裕
株式市場の変動が高まっていますが、積立投資で資産形成の過程にいる方は慌てる必要はありません。株式市場は短期的に上下を繰り返しながら、長期的には成長していくと言われています。むしろ市場が大きく下がるときは安く買えるチャンスと捉え、粛々と積立投資を続けましょう。
一方で、大きな資産が積み上がった方や、近い将来運用資産を使う予定がある方は、ここで今一度自分が許容できるリスクや分散投資について考えてみましょう。大きく積み上がった資産が一時的に下落しても困ることはないか?回復を待てる十分な時間があるか?米国株式に集中したり、偏った投資をしていないか?もし気がかりなことがあるなら、今のうちに自分が許容できる変動幅の運用や、より広範な分散投資を検討してみると良いでしょう。
個人投資家 YouTuber
BANK ACADEMY 小林亮平氏
こういった下落トレンドの時こそ、長期投資家なら「気絶投資」がおすすめです。すなわち、投資しているのを忘れてるくらいほったらかしで、相場が落ち着くのを待てばOKです。歴史的に下落相場はどこかで終わりを迎え、最高値を更新し続けてきたので、相場とはほどよい距離感をもってリラックスしていきましょう。
個人投資家
虫取り小僧氏
この程度の急落は年に1~2回くらいあるものです。なんてことはありません。ただし、今後さらに下げたり、数年に及ぶような停滞相場になってしまう可能性はあります。
でも、国際分散積み立て投資を行っている人は、「そういうこともある」ということは織り込み済みというか、長い時間をかけてマーケットの上げ下げを肥やしにして資産形成を行うスタイルを選択しているわけです。つまり、完全に想定内ということ。
マーケットの歴史を見るかぎり、バブルは必ず発生し、そして弾けています。その繰り返しの中で、積み立て投資家の資産は少しずつ底上げされていく…という前提をもてるなら、長い目で見れば上手くいく可能性が高いと思っています。
個人投資家
水瀬ケンイチ氏
長期投資の本当の力は「続けること」で得られます。歴史的に見れば、株式市場は常に上下しながらも長期的には成長してきました。このサイクルを理解して、下落局面でも投資を続けられる投資家が、最終的には成功を収めてきました。
実際、多くの研究が示すように、市場のタイミングを当てることはとても難しいものです。しかし、過去30年間の米国株式市場で最も良かったたった10日間を逃すと、全体のリターンは半分以下になるというデータがあります。下落を恐れて市場から離れると、その後の回復局面も逃してしまう可能性が高いでしょう。つまり、どんな時でも「続けること」が重要です。
私は今までそうしてきましたし、これからもそうします。
個人投資家
たぱぞう氏
相場の大幅下落に慣れている人はワクワクするでしょうが、ボラティリティーが高い相場展開が苦手な人は、相場と距離を置くのもあり。いずれ落ち着きます。良いアセットが安く買えるにすぎません。
ただし、資金管理が大事。突っ込み過ぎないことです。私はそれで身動きが取れなくなったことがあります(反省)。右肩上がりのインデックスファンド(指数連動型投資信託)をコアにしている人は、何ら心配することなく積み立てを共に続けましょう!
個人投資家
ぽんちよ氏
現状の米国株相場は、トランプ氏の日々の発言ひとつで大きく変動する。企業の業績は「この商品が売れてるから、A社の業績は良さそう」と推測できるだろう。
ただ一方で、気分屋とも見えるトランプ氏の言動を予想することは困難。このような相場で無理して相場の上下を追って取引をしようとしても、翻弄されるだけで良い結果はでにくい。むしろ証券口座の資産額画面と少し距離を置いて、淡々と積立をしていくほうが吉といえる。
また、そのうえで円高×株安というのは、米国株(S&P500)を割安に買える絶好のチャンスだ。積立設定日にちょうど株価が下がっていたり円高になっていれば、「ラッキー」と捉えるぐらいのメンタルでいられると、長期投資も続けられ、将来の資産拡大につながるだろう。
※順不同。随時記事を更新します。