<指数パフォーマンス比較~バリュー株orグロース株どっち優勢?~>

指数パフォーマンス比較~バリュー株orグロース株どっち優勢?~

2月の中小型株ハイライト「トランプリスクとの希薄さが強みに」

 2月は月初と月末に急落する不思議な展開でした(日経平均株価でいえば、月初3日が1,052円安、月末28日が1,100円安)。月初安と月末安の影響で日本の主要な株価指数が月間マイナスとなる中、東証グロース市場250指数は月間プラスで着地。同指数は、昨年11月から今年2月まで4カ月連続の月間プラスに。

 これは、2017年10月から2018年1月までの4カ月連続プラス以来、7年ぶりのこと。ボロボロだった東証グロース市場に安定感が出てきたとはいえそうです。

 2月も、前月に発生した中国の新興企業ディープシークによる半導体株ショック安の影響が尾を引く格好に。また、月末の下げの原因は米エヌビディア株が決算後に急落したことでした。個人投資家に人気の半導体株が大きく値下がりする中…東証グロース市場には半導体株が無いことが強みに(半導体株が大盛り上がりだった時期は蚊帳の外だったため、その逆バージョン)。

 また、米トランプ大統領が矢継ぎ早に関税引き上げの表明を出すことにも市場は困惑。輸入自動車への関税を4月2日に引き上げると表明したことで、自動車株が「買えない業種」扱いに。また、半導体、医薬品、鉄鋼などにも新たな関税を課す計画があると述べたことで、「トランプ関税リスク」が上値の重しに。

 いくら足元業績が堅調だろうが、関税を巡る先行き不透明感につぶされてしまうのが先読みゲームの株式市場です。ただ、ここでも、そうした関税影響を受ける業種がほぼ皆無の東証グロース市場にとっては無関係。

 2月でいえば、日本銀行のタカ派化から3月会合における追加利上げへの思惑が高まりました(円買い要因)。

 米国でも、トランプ関税への不透明感は強いようで、センチメント系の経済指標が軒並み下振れ(ドル売り要因)。2月のドル/円は月間で4円も下落しましたが、東証グロース市場には輸出関連株がほぼ無し。急激な円高進展も無風扱いとなったことも大きかったといえそうです。

【東証グロース】 2月に上がった株

コード 銘柄名 2月
騰落率
時価総額
(億円)
4892 サイフューズ 179% 108
3195 ジェネレーションパス 148% 62
4435 カオナビ 114% 513
7084 SmileHD 90% 54
278A Terra Drone 84% 837
5597 ブルーイノベーション 73% 43
4165 プレイド 61% 542

【東証グロース】2月に下がった株

コード 銘柄名 2月
騰落率
時価総額
(億円)
4436 ミンカブ・ジ・インフォノイド ▲37% 85
4583 カイオム・バイオサイエンス ▲35% 108
141A トライアルHD ▲33% 2,217
3491 GA technologies ▲30% 436
3185 夢展望 ▲30% 25
4259 エクサウィザーズ ▲30% 299
2586 フルッタフルッタ ▲29% 93

 エヌビディア株の下落、トランプ関税リスク、円高といった逆風にさらされる中で、「それと[縁遠い]所に資金を向けよう」といった雰囲気が強い1カ月でした。

 プライム市場では、任天堂やソニーグループ、カプコン、バンダイナムコホールディングス、そしてサンリオなどのコンテンツ関連が一番人気に。東証グロース市場も「縁遠い」扱いでIPO(新規公開株)や宇宙関連、ドローン関連株、個別の材料株などで循環物色が広がりました。

 ただ、2月中旬は3カ月に1度の決算発表シーズン。指数としてはプラスだった東証グロース市場ですが、決算ネガティブ銘柄のリアクションがひどかったのも特徴でした。

 東証グロース市場の2月の値下がり率上位では、今期業績予想を下方修正したミンカブ・ジ・インフォノイド、上期予想が減益着地となった時価総額トップ(だった)トライアルホールディングス、第3四半期が赤字だったエクサウィザーズなどが想定以上の急落に。

 また、グロース市場で流動性ナンバーワンのカバーも、通期予想を上方修正しながら、市場予想に届かなかったことで翌日はストップ安…。値動き良好な中小型株がデイトレ対象になったことはポジティブでしたが、業績を理由とした長期資金の流入は相変わらず乏しい印象でした。

新NISAで中小型株!今月の銘柄アイデアは…「3月の高配当株~中小型株バージョン2025~」

 不安定感こそありながら、循環物色は継続している中小型株市場。日本株の主要指数の中で、2月は東証グロース市場だけ月間プラスで着地できたことも前向きに捉えたいところ。

 エヌビディアの調整、トランプ関税、日銀利上げ懸念…こうした不透明感は3月も引き継ぎますが、これらとの距離が遠いのが中小型株市場でもあります。中小型株が大型株をアウトパフォームする可能性は高いのでは?

 さて、先月の振り返りにもなりますが、2月の値上がり銘柄の中に今後の中小型株市場を期待したくなるような収穫がありました。

 まず、2月の上昇率3位の人材管理サービスを手掛けるカオナビ(4435)。こちらの上昇材料は、大型案件から小型案件まで昨年来、発表が相次いでいる「TOB」でした。そのTOBですが…これまでの多くは、例えばPBR(株価純資産倍率)が1倍を大きく下回るようなバリュー株が被買収企業になる事例でした。

 ただ、カオナビはバリバリのグロース株(TOB発表の2月13日時点の予想PER(株価収益率)は38倍台、PBR9倍台、無配)。

 そのカオナビを、米投資ファンドのカーライル・グループ(傘下のキーストーン・インベストメント・ホールディングス)が1株4,380円でTOBすると発表しました。この買い付け価格、発表した2月13日終値(1,980円)の2.2倍でした!

「そんな高く買うの?」「そんな価格を提示しなくてもTOBは成立したのでは?」という感想を持った投資家が多かったのではないでしょうか。買収する側なりの勝算がなければ提示しないはずで、うがった見方をしなければ、東証グロースのニッチながら高シェアを持つベンチャー企業にもプロの目で見たら「安い!」株がゴロゴロあるのかも?という連想が広がる事例でした。

 もうひとつが、2月の値上がり率4位で保育園を運営するSmile Holdings(7084)。2月25日、今期(2025年3月期)から配当を開始することを発表したのですが、その初配の配当額が度肝を抜くレベルで…。

 収益基盤が固まったことで配当可能な環境となり、配当の目安としてDOE(株主資本配当率)で4~5%といった目安を提示。結果、2025年3月期末の配当を1株95円にするとしました。

 で、発表した2月25日時点の同社株の株価は899円ということで、このままなら配当利回り10.6%! 当然、株価が爆上げし、配当利回りで5~6%水準に落ち着いたわけですが…こんな配当を出せる東証グロース上場の小型株が出てくるとは衝撃でした。それだけ、今市場で付いている株価が激安ということかもしれません。

 この3月末以降、2022年4月の市場再編時に決まった上場維持基準の経過措置が順次終了していきます。上場維持のため、「時価総額(=株価)を上げないといけない!」という小型株はスタンダード、グロース市場に多くあります。こうした株価にポジティブなニュースが増えそうなことは楽しみです。

 本来であれば投資対象から外してしまうような、無配の企業とか、株主優待を設定していない企業からニュースが出た方がサプライズは大きいことになりますね。

 また、3月といえば、1年で最も配当株狙いが活発になるシーズン。今年の権利付最終売買日(3月27日)に向け、高配当株への資金流入が予想されます。とくに、昨年の新NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)開始から、その動きは活発化。NISA口座経由で最も買われたカテゴリーが「高配当株」であることも確認されています。

 今回は、新NISAの成長投資枠にもおすすめの3月高配当株を、中小型株に絞ってスクリーニングしてみます。対象は東証スタンダード、グロース銘柄としますが、高配当株はスタンダード偏重となってしまうことはご容赦ください。

3月期末の配当利回り激高!な中小型株
【条件】(1)PBR1倍未満
(2)売買代金25日移動平均0.3億円以上
(3)時価総額50億円以上
(4)3月期末分の配当利回り4%以上
※期末配当利回りの高い順

コード 銘柄名 期末配当
利回り
3月期末配当
(予想)
7084 SmileHD 5.95% 95
1972 三晃金属工業 5.83% 350
7991 マミヤ・オーピー 5.82% 90
6360 東京自働機械製作所 5.50% 240
6675 サクサ 5.02% 165
6989 北陸電気工業 4.98% 80
6899 ASTI 4.94% 110
1384 ホクリヨウ 4.84% 70
3611 マツオカコーポレーション 4.77% 90
6337 テセック 4.45% 70
7305 新家工業 4.17% 200

 スクリーニング条件は厳しめにしましたが、それでも高い利回りの銘柄はたくさんあります。条件に合致した銘柄は11銘柄でしたが、その中で東証グロース上場銘柄は前述のSmileHDだけでした。表示されている期末配当利回りは、3月末に出る期末配当分だけで計算した利回り(中間配当を含む年間配当利回りとは違い、実際この3月分の配当だけで見込める利回り)です。

 年初から日本株が下がっていることもあって、2025年に入ってリセットされた新NISA枠での押し目買い銘柄を探す投資家は多そう。その投資家が、あえて3月の時期に動く場合、当然「3月決算企業の期末配当」これが重要ファクターとなりそうです。