2月28日、日経平均一時3万6,000円台へ

 2月28日、日経平均株価は半年ほど続いていた3万8,000~4万円の狭い値幅(レンジ)を下に放れ、一時3万6,000円台に突入する場面も見られました。株式市場で言う「下放れ(したっぱなれ)」です。

 下落の主な要因は、米半導体大手エヌビディアの株価下落を受けて日本株市場でも関連銘柄が売られたことや、トランプ大統領による欧州やカナダ、メキシコ、中国などへの関税政策への懸念が日増しに強くなったことがあげられます。

 為替が1ドル=148円台に入るなど、円高が進行したことも影響しました。

 信越化学工業(4063)第一三共(4568)住友金属鉱山(5713)ダイキン(6367)サイゼリヤ(7581)ニトリホールディングス(9843)など幅広い業種が昨年来安値(年が明けて3月までは昨年来安値を使用するケースが多いです)を更新しました。

 サイゼリヤとニトリHDは本来円高に振れた方が業績へのメリットが大きい業態ですが、こういった銘柄もそろって売られています。

 トランプ関税や円高進行など外部環境の悪化を受けて、日経平均がレンジを下放れたことから、投資家のセンチメント(投資意欲)が悪化し、積極的な買いが手控えられているようです。

投資意欲悪化「どこまで下がるか分からないので、積極的に買うのはやめておこう」

 2月28日は、MSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)が世界規模で運用しているスタンダードインデックス構成銘柄の定期見直し(年1回、2月に発表および実施)を実施(リバランス)したことで、6兆2,000億円ほどの売買代金ができましたが、このリバランスに関する売買は2兆円規模だったと推測します。

 前場の日経平均の値幅が約850円と非常に大きかったにもかかわらず、売買代金は2兆1,000億円ほどにとどまりました。日経平均は後場一段安となりましたが、前引け時点と同じ水準で取引を終えましたので、後場の取引時間中もさほど押し目買いは入っていなかったでしょうから、リバランスを除きますと、2月28日の売買代金は4兆円少しだったと試算します。

 値幅が非常に大きかったにもかかわらず、売買代金が増加していないということは、「売りに比べて買いが少なかった」状態だったと考えます。つまり「どこまで下がるか分からないので、積極的に押し目を買いに行くのはやめておこう」という投資家心理が働いたと推測します。まさにこれが投資家のセンチメント悪化です。

 今後、3月上旬の早いタイミングで、3万8,000円台、そして、3万9,000円台の回復を目指したいところですが、日本株を押し上げる外国人投資家は様子見姿勢を強めたまま、買いに動く兆しは感じられません。

今注目は「高配当銘柄」「優待銘柄」NISAとも相性◎

 この場合、自社株買いを積極的に実施している事業法人と、NISA (ニーサ:少額投資非課税制度)を通じた個人投資家の買いに期待するしかなさそうです。

 今月27日には3月決算企業などの権利取り最終売買日を迎えますので、高配当利回り銘柄や人気優待銘柄の動向は注目です。

 日経平均を押し上げるには、値がさ半導体株などの上昇が必要ですが、こうした銘柄は、NISAを通じて日本株を購入する個人投資家の買いは期待できません。投資の最低金額が大きいからです。つまり、足元の弱い東京市場で注目するのは、高配当利回り銘柄や人気優待銘柄と考えます。

 新しいNISAは、旧NISAにあった非課税期間(一般NISAは5年、つみたてNISAは20年)という制約が一切なくなり無期限となりました。30年、40年という長期間、NISAで銘柄を保有することが可能ということです。

 特に、数年以上保有することでより充実した優待を受けることができる「長期保有特典制度」を設けている優待銘柄があります。投資枠も一般投資枠が120万円から240万円に倍増しましたので、新しいNISAでは保有できる優待銘柄の選択肢が広がりました。

 先行き不透明感が強まっており、日経平均株価の強い動きは期待しにくい状況ではありますが、長期投資の観点では、好業績や特色がある優待制度を設けている銘柄への関心を高めてはいかがでしょうか。

廃止リスクに注意!優待銘柄の選び方

 今回は、3月決算企業で「これは!!」というような優待制度を設けている銘柄を5銘柄ご紹介します。

 なお、優待に関する注意事項をお伝えします。日本の優待制度は世界でも類を見ない導入社数を誇っています(「日本独自の制度」と紹介している金融情報サイトが散見されますが、米バークシャー・ハサウェイでは出資先のチョコレートを特別価格で販売するなど、世界でもさまざまな「株主特典」は存在します)。

 今後約1年間で注意したいのは、上場維持基準に未達の銘柄です。2022年、東京証券取引所の市場再編以降、上場維持基準の経過措置期間が続いていましたが、2025年3月から順次終了します。

 その後、1年の改善期間を経ても未達の場合は上場廃止という流れのため、基準に未達なので流動性を高めたい(売買を増やしたい)銘柄が、優待を新設するケースが増えると想定します。

 つまり、業績がさほど順調でもないのに無理して優待制度を導入した結果、コスト増加などが影響して、結局、優待制度を廃止するといったケースがあり得ます。また、QUOカードなど自社製品とは無関係のものを優待に設定している銘柄は「目的が流動性向上」というケースが多くみられ、優待廃止リスクが高いため注意が必要です。

【3月優待】安心して長期で持ちたい!田代くん注目の5選

 私は、優待制度とは「自社のファンを一人でも増やし、長い間保有してもらうこと」が基本理念だと考えます。ですので、今回の5銘柄は「自社商品」「安定した業績」「長期保有特典制度を設けている」といった点に着目しています。

 優待を金額に換算した額を、優待を受けるのに必要な投資額で割って算出する「優待利回り」の観点は一切考慮しておりませんので、あしからず。

銘柄名 証券コード 株価(円)
(3月4日終値)
特色
トリドールHD 3397 3,925 「丸亀製麺」、継続保有制度も導入
FOOD&LIFE COMPANIES 3563 4,229 「スシロー」、好業績で株価の強い動きが目立つ
オリエンタルランド 4661 3,109 「ディズニー」、日本が世界に誇るエンタメ施設を運営
ゼンショーHD 7550 7,999 「すき家」「はま寿司」、未使用優待券との代替制度も導入
東京メトロ 9023 1,781 「メトロ」、MSCI定期見直しで国内株では唯一新規採用

トリドールHD<3397>

「丸亀製麺」のほか、焼鳥などさまざまな食のブランドをチェーン展開しており、海外展開も積極的です。100株以上で優待の権利は得られますが、200株を1年以上保有すると追加で優待が得られる継続保有株主優遇制度を導入していますので、長期保有のメリットがあります。

 上場来高値4,850円をつけたのは1年前で、その後は3,500~4,000円の狭いレンジで推移しています。レンジ下限の3,500~3,600円水準まで下がってきた局面で買いを入れるようなスタンスはいかがでしょう?

FOOD & LIFE COMPANIES<3563>

「スシロー」や「京樽」などを日本やアジアで展開しています。2024年10-12月期の純利益は前年同期比88%増の61億円と、すでに通期純利益見通しの4割を稼ぎました。好決算発表を材料に、株価は2022年1月以来の高水準まで上昇するなど日経平均の調整などどこ吹く風といった強さです。

 優待は100株以上から権利が得られますが、3年以上継続保有すると使用できる割引券の枚数が増えますので、長期保有のメリットもあります。

オリエンタルランド<4661>

 日本が世界に誇るエンタメ施設「東京ディズニーリゾート」を運営しており、優待ファンは多いでしょう。「1デーパスポート」の優待を得るには、500株以上の保有が必要ですが、3年以上継続して保有するともう1枚追加されますので、優待狙いのディズニーファンは長期保有をお薦めします。

 一方、同社の筆頭株主である京成電鉄は、モノ言う株主より経営資源の効率化の一環としてオリエンタルランド株の売却を求められています。今後、京成電鉄が全株式を売却する可能性がありますので、その売却方法次第では同社の株価が大きく下落する可能性はあります。ただ、下がった局面でも根強い優待狙いのディズニーファンの買いが入るかもしれません。

ゼンショーHD<7550>

「すき家」「なか卯」「はま寿司」「ジョリーパスタ」などおなじみのチェーンを展開している外食最大手です。インバウンド需要を取り込んでいるほか、コスト増加を値上げなどでカバーしたことから業績は好調に推移しています。

 優待の権利は100株から得られるほか、定められた期限内に未使用で最新の優待券を返送することで、優待券3,000円分1冊につき、「すき家牛丼の具」「なか卯親子丼の具」「トロナジャパンお弁当用おかず」などいずれか1セットと代替が可能な制度も設けています。

 仮に有効期限内に優待を使いきれなくても、こうした制度も利用できますので、近所にあったお店が無くなっても大丈夫です。

東京メトロ<9023>

 昨年プライム市場に上場したばかりですが、2月のMSCI定期見直し(文中参照)では唯一日本株で新規採用されました。1万株以上から全線定期乗車証がもらえるほか、「地下鉄博物館」の無料招待券や「そば処めとろ庵」のかき揚げトッピング無料券など東京メトロを利用しているユーザーにとっては使い勝手のいい優待を用意しています。

 一方、東京メトロを利用しない方や都内在住者ではないと優待券を有効活用するのは難しいかもしれません。東京メトロに限らず、鉄道株を優待狙いで購入する際は利用する頻度が多い銘柄を選んだほうが優待の利用価値は高まるでしょう。