高配当株と言っても、どの指数に連動するタイプがいいの?
ひと口に米国の高配当株に投資するインデックスファンドと言ってもいろいろあって、どう選べばいいか迷うかもしれません。そこでここからは、いくつかの選定ポイントを見ていきましょう。
まず一つ目は、利回り、割安度、成長力といった観点。今回は米国の高配当株ファンドの投資対象の例として、「SCHD」「VYM」とS&P500を比べてみます。
SCHDは米国に上場しているETF(上場投資信託)「シュワブ・米国配当株式ETF」、VYMはバンガード・米国高配当株式ETFです。それぞれ、ダウ・ジョーンズUSディビデンド100インデックス、FTSEハイディビデンド・イールド・インデックス(円換算ベース)という高配当株指数に連動するように作られたETF。ディビデンド(dividend)=配当です。
少しややこしいですが、実際に投資するファンドは、高配当株指数に連動するように作られたETFに投資する投資信託、ということになります。
ではまず、配当利回りですが、高配当株という名前の通り、SCHD、VYMともS&P500よりも相対的に高い利回りが期待できます。
次に、割安度(PER:株価収益率、PBR:株価純資産倍率)の観点でも、SCHD、VYMがS&P500よりも割安な銘柄で構成されています。SCHDはVYMと比べても、より高い配当利回り、より割安な銘柄(PERの観点)で構成されています。
逆に、利益成長の観点では、SCHD、VYMともS&P500を下回る傾向にあります。これは主に業種構成の違い(情報技術セクターの組み入れが低いこと)に起因しています。株価の上昇は長期的には企業の利益成長に連動するので、高配当株は株価上昇力ではS&P500に負ける可能性があることには注意が必要です。
また、ROE(自己資本利益率)を見ると、特にSCHDのROEが高くなっています。ROEは持っている資本でどのくらい効率的に利益を生み出す力を持っているかを見る指標です。つまり、SCHDの方がVYMよりも効率的な経営を行っている企業が多く含まれていると分かります。
このような特徴は必ずいつもそうであるとは限らず、市場環境によって変わる可能性はありますが、SCHDが銘柄数を約100銘柄まで絞り込んでいる分、VYM(約500銘柄)よりも、顕著に出やすいと考えてよいでしょう。
表1:SCHDとVYMとS&P500のポートフォリオ特性の比較
※配当利回りは30日SEC利回りを採用。基準日は2025年1月末時点。
なんで割安度と収益力に違いが出るの?業種構成の違い
高配当株とS&P500の業種構成を比較すると大きな違いがあります。S&P500の業種構成の最大の特徴は情報技術セクターが30%を超えていることです。これに対してSCHDとVYMの同セクターの構成比は10%に届かず、S&P500に比べて20%以上も少ない(アンダーウエート)ことになります。
逆にSCHDとVYMが共通してオーバーウエートしているセクターは、金融、資本財、生活必需品、エネルギー。これらのセクター構成比の違いが、高配当株とS&P500の割安度、収益力、ひいては運用成績の優劣をつける大きな要因となるわけです。
さらに、SCHDとVYMの構成比の違いとしては、SCHDの方がヘルスケア、生活必需品などの比率が高く、VYMの方が金融セクターの比率が高くなっています。このため、SCHDの方が景気に対してやや影響を受けにくい=ディフェンシブで、VYMの方が金利の変化に対してやや敏感な傾向があります。
図1:業種構成比と乖離幅
銘柄数や企業規模の違いも、パフォーマンスに影響する
SCHDとVYMは銘柄数の違いからも、ポートフォリオの特性に若干の違いが出ます。SCHDの銘柄数は約100銘柄とVYMの500銘柄よりも絞り込まれています。このため組み入れ上位10銘柄の構成比もSCHDの方が40%超と集中していて、個別銘柄(特に上位銘柄)の影響を受けやすくなります。
言い換えれば、SCHDの方がより集中した、VYMの方がより分散された銘柄構成となっている(もちろん100銘柄に分散していれば、分散投資の観点では十分と言えます)。
また、企業規模の構成で見ると、SCHD、VYMともにS&P500と比べて超大型株の比率が低くなっています(特にSCHD)。これは高配当株が情報技術セクターの比率が低く、大型ハイテク株を組み入れていないことが理由です。
一方で、高配当株の方が中小型株の比率が高く、特にSCHDはVYMと比較してもその比率が高くなっています。高配当株とS&P500では大型株と中小型株の値動きの違いがそれぞれのパフォーマンスに影響を与えることを覚えておきましょう。
表2:銘柄数と企業規模構成比の比較









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