配当金の課税方法は三つあることをご存じですか?
今回のコラムも、確定申告シーズンということで、前回に引き続き有価証券の確定申告の注意点につき解説していきます。
今回は、確定申告時の「選択ミス」に要注意、という話です。具体的には配当金の課税方法の選択です。
配当金の課税方法は以下の三つがあります。これらのうち、納税者自身が選択することができます。
1.何もしない
配当金の受け取り時に、20.315%の税率で源泉徴収がされています。これにより、納税者自身が何もしなくても、課税関係を終了させることができます。
2.総合課税で確定申告をする
専業主婦など、他の所得が少ない方は、源泉徴収されている20.315%の税率だと高すぎるので、総合課税で確定申告をすれば還付を受けることができます。
3.申告分離課税で確定申告をする
当年中の譲渡損失と配当金、もしくは前年以前から繰り越してきた譲渡損失と配当金を相殺したいときは、配当金につき申告分離課税で確定申告をすることで、配当金受け取り時に源泉徴収されている税額の還付を受けることができます。
(源泉徴収ありの特定口座かつ配当金受け取り方法を株式数比例配分方式としている場合は、証券会社が当年中の譲渡損失と配当金を相殺してくれるので確定申告が不要となることもあります)
後日誤りに気付いても修正ができないケースに注意
では、例えば次のようなケースではどんな扱いになるのでしょうか?
- 確定申告そのものをしなかったが、配当金につき総合課税で確定申告をした方が有利であると確定申告の期日後に気が付いた場合
- 確定申告書を提出した際に、配当金については何も申告をしなかったが、配当金を総合課税で確定申告した方が有利であると確定申告の期日後に気が付いた場合
(1)と(2)は似ていますが、実は(1)のケースは後日確定申告書を提出することで対応可能です。一方(2)のケースは、配当金を総合課税で確定申告する形に修正することはできません。
なぜなら、一度選択した配当金の課税方法は、後日修正できないことになっているからです。
(1)のケースは、確定申告をしていないため、どの方法を選択したかの意思表示をしていない状態とされます。従って、期限後申告書の提出期日内であれば、配当金につき総合課税で申告することが可能です。
しかし(2)のケースは、確定申告をした際、配当金については「何もしない」ことを選択したと見なされてしまうので、後日になって配当金につき総合課税での申告に修正することができないのです。
これは定められたルールですので、「知らなかった」と主張しても認められません。税法の世界は、知らないと損をすることが多々ありますので、最低限の知識は身に付けておくようにしましょう。
譲渡損失の繰り越しの失念にも要注意
もう一つ、ミスとして多いのが「譲渡損失の繰り越しの失念」です。株式の売却損などの「譲渡損失」は、最大3年間繰り越しができ、その間の譲渡益や配当金と相殺することで節税につなげることができます。
ただし、譲渡損失の繰り越しのためには確定申告が必要となります。
この点、特に源泉徴収ありの特定口座を使っている人は、「全て証券会社の方で対応してくれる」と勘違いしていることが多いです。
でも、譲渡損失の繰り越しは、たとえ源泉徴収ありの特定口座であっても、納税者自身が確定申告する必要があるのです。
では、もし源泉徴収ありの特定口座を使っていて、譲渡損失の繰り越しを失念してしまったらどうなるのでしょうか?
確定申告そのものをしていなければ、後日期限後申告という形で対応が可能です。
しかし、確定申告をしていて、その際に譲渡損失の繰り越しについては反映させていなかった場合は、申告期日を過ぎてしまうと修正は認められません。
ですから、譲渡損失の繰り越しの失念には十分に注意してください。
申告期日前に誤りに気が付いた場合は?
このように、申告期日を過ぎてしまうと、修正ができないケースがいくつかある点には細心の注意が必要となります。
では、もし申告期日前(2024年分であれば、2025年3月17日まで)に誤りに気が付いた場合はどうなるのでしょうか?
この場合、確定申告書を出し直すことで対応が可能です。このことを「訂正申告」と呼んだりします。
申告期限内であれば、最も後に提出した確定申告書が有効なものとして扱われます。ですから、ご自身が選択した配当金の課税方法よりも、他の方法の方が有利ではないか、あるいは譲渡損失の繰り越しを失念していないか、といった点につき、今のうちに確認しておくことをお勧めします。
(参考:国税庁HP「【申告が間違っていた場合】」)