2025年の「ゴールドラッシュ」、宝飾品チェーンへの恩恵は限定的か
国際金価格は2025年の年初から再び高騰していたが、地政学的な緊張や関税引き上げへの警戒感を背景に、人民元建ての金価格の上昇幅はさらに大きい。こうした中、BOCIは2024年に低迷していた中国人消費者の金購入意欲が再燃しつつあるとしながらも、国内マクロ経済の不確実性が高まる中、マスマーケットは引き続き圧力下にあるとの見方。金の需要増は投資商品や高価格帯商品にほぼ限定されるとみている。また、全国展開の宝飾品チェーンに関しては、2025年も販路整理の動きが続き、収益の足かせとなる可能性を指摘。金価格の上昇は粗利益率の点からポジティブだとしながらも、短期的には香港系の大手宝飾品チェーンに対して慎重な見方を維持するとし、セクター全体に対する中立見通しを継続している。
2024年に続き、世界の金需要は2025年も好調を維持する見込み。WGC(ワールド・ゴールド・カウンシル)によると、2024年10-12月期の需要は前年同期比1%増の1,297.41トン。2024年通年では金額ベースで前年比24%増の3,820億米ドルに達した。その多くは投資需要(2024年に25%増)であり、特に中国人民銀行による金準備の積み増しが世界需要の押し上げに寄与したという。WGCは個人や機関投資家による投資需要が2025年も堅調に推移するとみている。
中国国内の金価格は2024年に35%を超えて上昇し、2025年2月には1オンス当たり2万元の大台を突破した。その影響で、2024年の国内宝飾品消費は11%減。BOCIは仮に価格がさらに上向くようであれば、金製品消費全体には逆風になるとしている。
現在の「ゴールドラッシュ」について、BOCIは一般宝飾品市場には関係性が薄いとの見方だ。金価格の高騰が一部需要を刺激しているものの、その対象は金塊や金貨などの投資商品や、老鋪黄金(06181)が扱うような1点当たり1万元超の高級品にほぼ限られるとした。多くの一般消費者は2023年のゼロコロナ政策解除後のブーム時に金製品を購入済み。現在のマクロ経済環境の下では購入を手控える可能性が高いという。
周大福珠宝(01929)や六福集団(00590)などの宝飾品チェーンは販路再編を迫られ、2024年10-12月期には店舗数が純減となった。実店舗の来客数の減少やフランチャイジーの収益性の悪化を考慮すれば、2025年もチャネルの調整を継続する可能性が高い。
BOCIは短期的に、カバー銘柄の周大福珠宝、六福集団にとって、収益の縮小圧力が続くと予想。店舗数と既存店売り上げの縮小により、2025年の増収率は最良でも1桁台前半にとどまる見通しを示した。それでも、金価格の上昇は金小売事業者の粗利益率にはプラスに働く可能性があり、在庫ヘッジの方法次第では金在庫損失も縮小すると指摘。ファンダメンタルズの点では魅力に欠けるとしながらも、両社の株価の先行きに対して中立見通しを維持し、高配当が株価を下支えする可能性に言及している。