優待内容引き上げや株式分割で少額投資が可能になった「隠れ優待拡充銘柄」

 最近より多くの個人投資家に株主になってもらうために優待内容を拡充した3月優待株が増えています。

 その中には株式分割を実施したことで、より少額資金で投資できるようになったにもかかわらず、100株優待を据え置いたり、新たに株式分割後の100株優待を設ける「隠れ優待拡充銘柄」も多数あります。

 株式分割を行う企業が増えた背景には、新NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)の成長投資枠年間240万円(最大1,200万円)を使って日本の個別株に投資する個人投資家が増えていることがあります。

 また、1ドル150円台の円安進行でドル建てで見ると日本株は安くなり、外資系ファンドや外資系企業などが日本の大企業の株式を買い占め、買収攻勢や株主還元要求、経営改革を迫る時代です。

 時価総額約6.2兆円のコンビニエンスストア世界最大手セブン&アイ・ホールディングス(3382)がカナダの同業他社から買収提案を受けるぐらいですから、もはや、どの企業が外資にM&A(買収や合併)されてもおかしくありません。

 そうした背景の中、個人投資家が少額資金でも購入しやすいように株式分割を実施した上で、さらに優待を新設・拡充することで個人の安定株主を増やそうという動きが拡大しているというわけです。

 今回は、2025年3月末から優待内容のお得度がアップしたり、株式分割でも100株の優待内容据え置きもしくは新設の有望銘柄を独自の基準で選んだ上で紹介します。

 楽天証券・国内株式欄の「適時開示情報」の検索機能を使うと、優待を新設・拡充した銘柄を1年前までさかのぼって探すことができます。

適時開示情報の検索機能画面

優待内容が格段にアップ!拡充銘柄1位は力の源HD(3561)

 株式分割などとは関係なく単純に優待内容がより使いやすく、お得度が高いものに拡充されたのが博多発祥のラーメンチェーン「一風堂」などを運営する力の源ホールディングス(3561)です。

力の源ホールディングスの株主優待内容

 同社は2025年1月22日に優待拡充を発表。

 従来は3月・9月末に500株(※投資金額約62万9,500円)保有で1枚につき対象商品1杯(同伴者がいる場合は2杯)が無料になる優待券2枚贈呈。100株保有では1年以上継続保有すると優待券1枚が贈呈される継続保有優待しかありませんでした。

※本記事の株価、投資金額、2025年3月期の予想配当利回りなどは2025年2月14日終値を使って計算。以下同。

 今回2025年3月末からは100株の通常優待が新たに新設され、3月・9月末に100株保有で1枚1,000円分として全商品に利用できる優待券2枚が贈呈されます。

 さらに100株を1年以上継続保有すると、優待券が4枚(4,000円分)に増額され、同社ECサイトクーポン券1枚(4,000円分)なども選べるようになりました。

 500株保有では3月・9月末に優待券8枚かECサイトクーポン券2枚(ともに8,000円分)と優待券の枚数が4倍増になり、1年以上継続保有すると優待券10枚もしくはECサイトクーポン券2枚(ともに1万円分)に増額されます。

 この太っ腹な優待拡充の発表が好感を与え、同社の1月22日の株価は前日比15.0%も急騰。その後も続伸しています。

 同社はインバウンド需要による国内店舗の売り上げ増加や値上げ効果で今期2025年3月期は売上高、純利益ともに前期比約10%の増収増益予想です。

 来期2025年3月期は今期低迷した成長分野である海外事業の持ち直しに期待したいところ。

 株主優待拡充で株価の調子もいいため、「一風堂」のラーメンが大好きなら、今後の海外事業の既存店売上高の推移などに注意しつつ投資を考えてみるのもいいでしょう。

2.王将フードサービス(9936)

 株式分割でも100株優待内容据え置きで投資金額に対するお得度が実質3倍アップした銘柄が中華料理チェーン「餃子の王将」を運営する王将フードサービス(9936)です。

王将フードサービスの株主優待内容

 同社は2024年9月30日を基準日に株式を3分割しましたが、株式3分割直前の2024年9月末株主には保有株数を3倍にした株数に応じた優待が贈呈されました。

 今回2025年3月末からの優待は、100株(株式分割前の約33株)で3月・9月末に2,000分の優待食事券、3月末には飲食会計が5%割引になる株主優待カード贈呈となり、100株の優待内容を据え置き。

 300株(投資金額約91万5,000円)保有では3月・9月に贈呈される優待食事券が3,000円分となり、昨年2024年3月末より実質1,000円分アップになります。

 また、優待券は金額に応じてコース別になった自社商品詰め合わせ(ラーメンパックや餃子の王将辣油など)と交換も可能です。

 同社は持ち帰り用モバイル注文の導入やアプリでの販促効果もあって2024年4月から2025年1月の既存店売上高が105~118%と常に100%を超えるなど業績は絶好調。

 株価も2024年9月30日の株式3分割直前の2,849円(分割考慮後の株価)からさらに上昇して3,050円で推移するなど長期上昇トレンドが続いています。

3.イエローハット(9882)

 株式分割で実質優待拡充となる銘柄には、カー用品販売で国内2位のイエローハット(9882)もあります。

イエローハットの株主優待内容

 同社は2025年3月31日を基準日に株式を2分割する予定ですが、それにともなって株主優待の内容が変更されます。

 今回の3月31日時点の株主に対しては100株保有で同社店舗などで利用できる買い物割引券3,000円分(税込1,000円以上の買い物に300円割引券1枚利用可能)と「油膜取りウォッシャー液2.5L」1本の商品引換券1枚が贈呈されます。

 株式2分割後は、1年以上という継続保有条件がつきますが、3月・9月末に100株(分割前の50株)で従来の100株と同じ優待内容(2025年9月末優待に関しては継続保有条件は半年以上)になります。

 2025年3月31日までの100株に相当する200株(投資金額約28万5,100円※)保有だと3月・9月末に買い物割引券4,500円分と商品引換券1枚に優待内容が拡充されます。

※2024年2月14日終値で計算した株式2分割前の100株購入金額

 同社はオイルやバッテリーなど消耗品の販売が堅調で今期2025年3月期は増収増益予想。営業減益だった前期からの業績回復が鮮明です。

 株主配当も前期比4円増の1株当たり70円を予想しており、予想配当利回りは2.46%。同社は自己資本比率が72%超に達する高財務を背景に株主還元にも積極的です。

 株価も株式2分割を発表した直後の2025年2月4日に上場来高値2,957円をつけるなど長期的な右肩上がりが続いています。

4.グンゼ(3002)

 紳士肌着で国内トップの肌着メーカー、グンゼ(3002)も2025年3月31日を基準日とした株式2分割を予定。次回2025年9月末優待からは新たな100株優待が導入されます。

グンゼの株主優待内容

 今回の2025年3月末までは100株保有で3月・9月末に同社の通販カタログ商品が30%割引になる特典と、9月末に2,000円分のオンラインクーポンもしくはインナーウエアなど自社商品が選べました。

 2025年9月末からは分割前の50株に相当する100株保有で9月末に1,000円分のオンラインショップクーポンが贈呈されます。クーポンは3年以上継続保有で2,000円分、5年以上継続保有で3,000円分に増額されます。

 200株(株式分割前の100株・投資金額約52万3,000円)保有では9月末に2,000円分のオンラインクーポンが贈呈されます。5年以上の長期保有で贈呈されるクーポンが4,000円から5,000円に増額される他は分割前の100株の優待内容と変わりません。

 同社は主力のアパレルが円安によるコスト増で苦戦していますが、コピー機や半導体向け機能性プラスチック素材、手術後に体内に吸収される縫合糸など医療部材が成長分野になっています。

 株価もここ4年ほどは復調が続いているものの、いまだPBR(純資産倍率)が0.71倍と非常に割安です。

 そのため株主還元にも積極的で、2024年11月には総額26億円の自社株買いを発表した他、今期2025年3月期の株主配当も前期比4円増の1株当たり157円を予定。予想配当利回りは3.00%に達しています。

5 .味の素(2802)

 同じく2025年3月31日を基準日に株式2分割を実施する調味料界トップクラスの味の素(2802)も分割後に新たな100株優待が新設され、従来の株数に対して優待内容が実質拡充される隠れ優待拡充銘柄です。

味の素の株主優待内容

 今回2025年3月末までは、3月末に100株を半年以上継続保有で「ほんだし」「コンソメ」「アミノバイタル」など自社商品1,500円相当が贈られます。

 来年の2026年3月末以降は100株(株式分割前の50株)を半年継続保有で500円相当の自社商品贈呈という新たな100株優待が導入される他、分割後の200株保有では自社商品の金額が従来の1,500円相当から2,000円相当にグレードアップされます。

 同社は調味料、食品、コーヒーなどの海外販売が好調で今期2025年3月期も過去最高益更新予想。食品以外の成長分野である電子部材では、電気を通さない絶縁材料がデータセンターなどに導入され、世界シェアトップを走っています。

 株主還元にも積極的で今期2025年3月期も4期連続増配となる前期比6円増配の1株当たり80円の株主配当を予定。

 好業績を背景に株価は2024年12月に6,590円の上場来高値をつけるなど、2019年2月安値の1,624円から約6年間で4倍高。

 さすがに上がり過ぎで高値つかみが心配なため、購入を検討するなら株価がいったん調整するのを待ったほうがいいかもしれません。