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著者の吉田 哲が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
トランプ氏とOPECプラスの「二馬力インフレ」!?

原油は上下の圧力に挟まれて「高止まり」

 足元、原油相場の国際指標の一つであるWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油は、70ドル台で推移しています。この数年間続いている、80ドルを挟んだプラスマイナス15ドル程度のレンジ相場の真ん中からやや下に位置しています。長期視点では「高止まり」です。

図:米CPIのエネルギー(実数値)とNY原油先物(月足 終値)

米CPIのエネルギー(実数値)とNY原油先物(月足 終値)
出所:米セントルイス連銀および世界銀行のデータより筆者作成

 レンジ相場とは、上昇圧力(ここでは上図の赤い上向き矢印)によって形成された下限と、下落圧力(青い下向き矢印)によって形成された上限に挟まれることで形成される相場のことです。この数年間の原油相場は、上昇圧力と下落圧力に挟まれながら、長期視点の高水準を維持しているのです。以下は、その上昇圧力と下落圧力を示した資料です。

図:足元の原油相場を取り巻く環境(2025年1~2月)

出所:筆者作成

 1月20日に米大統領に就任したトランプ氏は、世界全体にさまざまな影響を及ぼしています。それに呼応するように、主要な産油国のグループであるOPECプラス※の動きも、目立ち始めています。

※OPECプラスは、OPEC(石油輸出国機構)に加盟する12カ国と、非加盟の産油国11カ国の合計23カ国で成り立つ、産油国のグループです。そのうち減産に参加する国は合計19か国で、その生産シェアはおよそ46%に上ります。(2025年2月現在)

 トランプ氏、OPECプラスそれぞれが、原油相場に多岐にわたる上下の圧力をかけていることが分かります。こうした圧力に挟まれて、レンジ相場で推移していると、考えられます。

 また、冒頭の「図:米CPIのエネルギー(実数値)とNY原油先物(月足 終値)」のとおり、原油相場が高止まりしていることを受けて、米国のCPI(消費者物価指数)のエネルギー部門の実数値も、高止まりしています。

 原油相場の動向は、米国の消費者物価指数、引いては、金融政策に大きな影響を与えます。その原油相場の動向に、トランプ氏とOPECプラスが深く関わっています。