S&P500のETFを全て売却したバークシャーのフォーム13F

 著名投資家ウォーレン・バフェット率いる投資会社バークシャー・ハサウェイ(BRK.B)が14日、SEC(米証券取引委員会)に12月末時点の上場株ポートフォリオを報告するフォーム13Fを開示した。

 それによると、バークシャーは10-12月期に保有するバンク・オブ・アメリカ(BAC)シティグループ(C)の持ち高を圧縮する一方、石油大手のオクシデンタル・ペトロリアム(OXY)の保有株数を増やした。

バークシャー・ハサウェイの12月末時点の保有銘柄と9月末時点の保有銘柄

バークシャー・ハザウェイの12月末時点の保有銘柄と9月末時点の保有銘柄
出所:フォーム13Fより石原順作成

オクシデンタル・ペトロリアム(週足)

オクシデンタル・ペトロリアム(週足)
(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター

 また、SPDR S&P500 ETF、Vanguard S&P500 ETF、アルタ・ビューティー(ULTA)を全て売却する一方、ビール会社のコンステレーション・ブランズ(STZ)を新たに買い入れ、12月末時点で保有する上場株式数は35銘柄と、3カ月前に比べて差し引き2銘柄減少した。全体の投資残高は約2,671億7,547万ドルと、9月末に比べて約8億ドル増加した。

SPDR S&P500 ETF(週足)

SPDR S&P500 ETF(週足)
(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター

バークシャー・ハサウェイの12月末時点の保有銘柄上位10社

バークシャー・ハサウェイの12月末時点の保有銘柄上位10社
出所:フォーム13Fより石原順作成

 バークシャーは9月末まで4四半期連続でアップル株を売却してきたが、10-12月期には売却は行わず、12月末時点で保有するアップル株は3億株(751億ドル相当)だった。昨年12月にかけてアップルの株価が上昇したことから3カ月前と比べ、保有株数に変化はなかったものの保有評価額は52億ドル増加し、ポートフォリオ全体に占める割合は28%に上昇した。

 一方、バンク・オブ・アメリカ株については売却を継続している。10-12月期には持ち高を約15%減少させた。世界金融危機後の2011年、バークシャーは50億ドルの優先株を購入し、バンク・オブ・アメリカ株への投資をスタートした。

 以降、保有を積み増し、バンク・オブ・アメリカ株は過去、バークシャーにとってアップルに次ぐ保有上位銘柄であったが、アメリカン・エキスプレス(AXP)に次ぐ第3位保有株となっている。

アップル(週足)

アップル(週足)
(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター

バンク・オブ・アメリカ(週足)

バンク・オブ・アメリカ(週足)
(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター

 バフェットは以前、「我々の事業の大部分は、今年は昨年より低い収益を報告するだろう」と語り、米国経済の「信じられないような時期」が終わりつつあると述べていた。

 もうけよりも損失のリスクを第一に考えるバフェットのような投資家は、強欲の餌食になる可能性が低い。ポートフォリオの大幅なドローダウン(運用成績の落ち込み)を防ぐための管理とは、下げ相場の被害を避けるために、上げ相場の一部を放棄することを意味する。

 ポートフォリオが壊滅的な損失を被った場合、ポートフォリオはいつか元の状態に戻るかもしれないが、その間に失った貴重な時間は決して取り戻すことはできない。

 今回、バフェットは保有していたS&P500種指数のETF(上場投資信託)2種類を全て売却した。しかし、9月末時点でのバークシャー全体のポートフォリオに占める割合は合計で0.02%だ。ポートフォリオ全体から見て影響は限定的であると言えるだろう。

 だが、S&P500のインデックスの全売却は、バフェットの相場観を示唆したものと受け止めることもできる。市場関係者は、今月末に公表されるバフェットの「株主への手紙」に注目している。