確定申告のシーズンが到来
今年も確定申告のシーズンが到来しました。2024年分の所得税確定申告書は、2月17日~3月17日が提出期間となっています。
株式や投資信託、債券などの有価証券については、確定申告をしなければならないケースや、申告をしてもしなくてもよいケースなどがあり、証券税制はかなり複雑です。
そこで今回は、確定申告の時期にこれだけは知っておきたい点に絞って解説していきます。
確定申告をしないといけない場合
まずは確定申告をしなければいけない場合です。これは、一般口座や源泉徴収なしの特定口座で売却した株式などにつき、利益が生じている場合です。
給与所得者で、株式売却の利益含め他の所得が20万円以下であれば所得税の確定申告は不要、という例外はありますが、原則は「申告分離課税の譲渡所得」として所得税・住民税合わせて20.315%の税率で課税され、確定申告が必要となります。
源泉徴収なしの特定口座の場合は年間取引報告書により損益の金額が分かりますが、一般口座の場合は証券会社が損益を計算してくれないので、自分自身で計算する必要があります。
確定申告した方が有利な場合(1):配当金
配当金については、受け取り時に20.315%の税率で源泉徴収されているので、何もしなくても大丈夫です。
ただ、次のような場合は確定申告した方が有利になります。
- 配当金以外の所得が少ないため、配当所得を総合課税で確定申告することにより、納め過ぎの税金の還付が受けられる場合
- 申告分離課税で確定申告し、配当金と同じ年中の売却損もしくは過去から繰り越してきた売却損を相殺することにより、配当金受け取り時に源泉徴収されていた税額の還付が受けられる場合
なお、(1)と(2)の併用はできず、確定申告する配当金についてはどちらかに統一する必要がありますので注意してください。
また、(2)に関連して、源泉徴収ありの特定口座かつ配当金の受け取り方法を株式数比例配分方式としている場合は、その口座にて生じた同じ年中の配当金と売却損につき、証券会社の方で自動的に相殺してくれますので、確定申告をしなくても良い場合があります。
確定申告した方が有利な場合(2):譲渡所得
譲渡所得(売却損益)については、上で述べたように、一般口座や源泉徴収なしの特定口座の場合は原則として確定申告が必要です。
一方、源泉徴収ありの特定口座の場合は確定申告不要ですが、申告することもできます。次のようなケースでは、確定申告した方が有利です。
- 二つ以上の特定口座があり、片方が利益、もう片方が損失の場合(利益と損失を相殺できる)
- 過去から繰り越してきた売却損と、2024年に生じた売却益を確定申告にて相殺する場合
- 2024年に生じた売却損があり、2024年中の配当金と相殺してもまだ損失が残っていて、これを翌年以降に繰り越したい場合
- 2023年以前から繰り越している売却損を、さらに翌年以降に繰り越したい場合(最長3年間)
なお、過去の損失の繰り越しを失念しているときは、源泉徴収ありの特定口座かつすでにその年の確定申告を済ませてしまっている場合を除けば今から確定申告もしくは更正の請求により繰り越すことができます。
ただし、2024年分の確定申告より先に申告が必要で、かつ古い年分から順に申告をすることが要件となっていますので注意してください。
申告する場合は国民健康保険料などの影響に注意
確定申告してもしなくてもよいケースにおいては、確定申告をすることで課税対象となる所得の金額が増えることから、本人もしくは配偶者・親族の控除(配偶者(特別)控除や扶養控除など)が取れなくなる可能性があります。
そして、国民健康保険の第1号被保険者の場合、国民健康保険料や介護保険料がアップしてしまい、所得税・住民税の節税効果を上回る負担増となってしまう恐れもあります。こうなると、「確定申告しない方が良かった!」ということになりかねません。
従って、確定申告をする前にしっかりシミュレーションをして、税額の還付と国民健康保険料などの増加の影響を見極めた上で、確定申告をするかしないか判断するようにしてください。