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著者の西崎努が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
[住宅ローン]日銀利上げで変動金利どうなる?自分にできる備え3選

 資産形成の正解は人それぞれですが、一方で、多くの人が失敗してしまう考え方や、やり方があるようです。このシリーズでは、資産形成を始める人が陥りがちな失敗事例を取り上げ、やってはいけない行動を分かりやすく解説します。

お悩み

今の居住地が気に入っているので、資産形成をしながらも家を買いたい

高里和さん(仮名)会社員・32歳(既婚、共働き、子ども1人)

 高里さんは数年前に結婚し、子どもが生まれて家族3人で暮らしていました。妻も復職したので、子どもが保育園に入るタイミングで住宅購入を検討しています。

 今の居住地を気に入っており、子どもの保育園への入園も決まったので、定住するために住宅ローンを使って住まいを探すことにしました。ローンは金利が低い変動金利で考えていますが、昨今金利が上昇してきているというニュースをみて少し気になっていました。

 それでも十分金利は低い水準ですし、住宅ローン控除なども併用すれば賃貸住まいよりも負担は減る想定です。資産として住宅を購入するという考えもありますが、どちらかというと、気に入った物件を見つけたので購入したいという気持ちの方が強くなっています。

 高里さんのように、変動金利の住宅ローンで家を購入する場合、もしくはすでに購入している人は、どんなことに気をつけた方がよいのでしょうか? 

金利のある世界では、ローンを組む負債世帯には負担が増える

 長らく低金利が定着していた日本では(今も低水準といえますが)、2000年代以降は預金ではほぼ利息がつかないという状況が続いていました。預金で預けておけば自然と利息で資産が増えていた時代とは違い、お金をただ預けているだけと言っても良い状況となりましたが、これは悪いことばかりではありません。

 住宅ローンでは低金利であるが故に良い水準でローンを組むことができたため、限りなく金利の支払い負担が少ない状態で住居を購入することができました。

 さらに、1972年に導入された「住宅取得控除」は、制度改正が頻繁にありましたが継続して続いており、住宅ローンを組んで住宅を所有する人の支払い負担をさらに軽減していました。

 このように長らくの間、住宅ローンは低金利で住宅購入資金を調達できる手段でしたがついに金利が再び上昇し出したことで、低金利を前提とした住宅ローンの返済計画ではライフプランが成り立たなくなる可能性がでてきました。

 そこで今回は、住宅ローンを組んでいる方や検討している方へ日本銀行の利上げに備えておくべきことをお伝えしたいと思います。

住宅ローンを組むなら利上げに備えたいこと1:金利が上昇すると想定して支払い計画を立てておく

 国土交通省の住宅市場動向調査報告書(令和5年度)によると、平均的に借入額は3,000〜4,000万円程度、返済年数は26~35年で契約し、金利タイプは変動金利型が約8割を占めているようです。住宅の定義には新築や中古の戸建住宅や集合住宅(マンション)があります。

 どのような物件に住むかは、居住地や将来設計によって異なります。都心の一部では、ペアローンで1億前後の物件を購入するパワーカップルと呼ばれる共働き世帯もいます。金利が上昇すれば支払い計画も大きく変わり、ローン契約の金額が大きくなればなるほど顕著に増えていくので注意が必要です。

 例えば、3,500万円の住宅ローンを変動金利0.5%・35年返済の元利均等方式で組んだ場合の総返済額は約3,800万円(毎月約9.0万円の返済)となります。金利が上昇した場合は、この金額がどう変わるのでしょうか?(前提は同じ、諸費用は含まず)

  • 金利1.0%=総返済額は約4,150万円(約350万増)、毎月の返済額は約9.8万円
  • 金利1.5%=総返済額は約4,500万円(約700万増)、毎月の返済額は約10.7万円
  • 金利2.0%=総返済額は約4,870万円(約1,070万増)、毎月の返済額は約11.5万円

 当たり前ですが、金利が上昇すれば支払い総額が増えます。上記は単純計算ですが、金利の上昇によってどれほど支払い額が増えるかが分かるかと思います。

 変動金利の多くには「5年ルール(金利が上昇しても、5年間は毎月の返済額が変わらないというルール)」「125%ルール(今までの返済額に対して125%の金額までしか上げることができないルール)」がありますが、金利上昇による総返済額が削減されるわけではないので要注意です。