NISAで海外へ投資、人気はオルカン、S&P500
新しいNISA (ニーサ:少額投資非課税制度)がスタートして2年目に入りました。このほど、「やっぱりなー」というデータが投資信託協会から公表されました。
投資信託協会が発表した、1月のETF(上場投資信託)を除く公募株式投信資金流入額は、2兆1,212億円でした。月間流入額として、2007年3月以来、約18年ぶりに過去最高を更新しました。資金流入の大半はNISA対象投信で、海外株式型への流入額が1兆3,000億円強と過去最高を更新しました。
海外株式型の代表格として個人投資家から絶大な人気を集めるのは、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)(通称オルカン)」や「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」です。推測ですが、海外株式型投信への資金流入は、これらの商品の残高増がけん引した結果だと考えます。
オルカンの2025年1月末時点の純資産残高は5兆4,800億円です。2024年12月末時点が5兆900億円で基準単価はほぼ横ばいですから、わずか一カ月で4,000億円ほど資金流入した計算となります。
日本の個人投資家の海外株式投資信託好きは昔から変わりませんが、20年ほど前の個人投資家の多くは「グローバル・ソブリン・オープン」など毎月決算型の投信をひたすら購入していました。NISAを通じてオルカンを保有している投資家は、毎月分配型なんて知らないでしょうね。時代は大きく変わりました。
トヨタ、ホンダ…日本を代表する有名企業も負けていない
さて、国内株式市場も負けていません。東京証券取引所が公表した2025年1月(1月6~31日)の投資部門別の売買動向をみると、個人投資家は現物を約7,700億円買い越しました。
海外投資家が現物と先物を1兆円超売り越していましたので、1月は個人投資家の買いが日本株を支えたといっても過言ではありません。詳細データがまだ出ていませんので推測となりますが、昨年1月同様、NISAを通じての買いが多かったと考えられます。
2024年、新NISAがスタートしたこともあって、さまざまな証券会社や経済誌が、個人投資家が興味を示している銘柄トップ10といったランキングを掲載していました。
トヨタ自動車(7203)、NTT(9432)、武田薬品工業(4502)、三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG、8306)、ホンダ(7267)、三菱商事(8058)、三菱重工業(7011)、ソフトバンク(9434)、第一三共(4568)、JT(2914)辺りの銘柄がランクインしていたかと思います。
これらの銘柄には共通の特徴があります。
- TOPIX(東証株価指数)コア30銘柄で世界的にも有名な企業
- しっかりとした企業業績
- 3%以上の高い配当利回り
日常生活の中で、トヨタ自動車やホンダ、NTTといった名前は目や耳にしたことはあるでしょう。TOPIXコア30銘柄に採用されている銘柄は圧倒的な知名度の高さ(ブランド)を持っています。
また、日本を代表する企業ばかりですので、業績も堅調なケースが多いです。当然、上場企業ですから、想定外の突発的な何かが発生して業績が悪化するケースはありますが、資本力や財務基盤など企業としての強さは際立っていますので、中小企業より安心感はあります。
NISAのメリットを最大限に!配当金も非課税
NISAでは、売買に伴う利益だけではなく、受け取る配当金も非課税です。年間配当利回り5.0%の銘柄を100万円分保有していた場合は20%が課税されますので、受け取り配当金は非課税のNISAなら5万円、課税対象口座なら4万円となります。投資金額が大きい、もしくは高配当利回り銘柄となれば、この20%の有無は大きいでしょう。
こういった制度上の要因もあり、昨年からNISAを通じて、高い配当利回り銘柄を長期的な観点で保有する投資家が増えました。
上場企業は、東京証券取引所が示した「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」に応じて株主還元策を強化しており、積極的に配当金を引き上げています。これまで配当をさほど重視せず、内部留保として貯めていた企業が配当を出し始めたのです。こうした流れは、今年も来年も続くでしょうから、新しい高配当利回り銘柄が誕生する可能性があります。
もっとも、昨年は型式不正の影響でトヨタやホンダなど自動車株がさえない時がありましたし、NTTも業績やNTT法改正などの議論が重しとなり昨年3月をピークにじりじりと下落するなど、個人投資家が興味を示している銘柄が全て上昇しているわけではありません。
ただ、NISAの利用目的は長期投資が基本のはずです。購入してずっと下落するのは気分的には面白くありませんが、10年後、20年後に上昇していればいいわけです。保有した銘柄が下落している局面は「30%ぐらい下がったから買い増すか」ぐらいの気持ちでいた方が楽になります。
高配当株、業績悪化時の減配に注意
一点だけ、高配当利回り銘柄で注意が必要です。業績が悪化して株価が下落したことによって、配当利回りが高くなるケースはよくあります。例えば、株価1,000円で25円の配当金を出していた銘柄が、半年後に500円まで下落した場合、配当利回りは計算上2.5%から5.0%に跳ね上がります。
こうした銘柄は、配当を減らす「減配」を発表する可能性がありますので注意が必要です。業績が悪化し赤字に転落するような銘柄は、そもそも配当に資金を回す余裕なんてありませんから。
【NISAで高配当株】利回り3%以上、日本を代表する5銘柄
今回は世界的にも有名な企業が集まっているTOPIXコア30銘柄から高い配当利回りの5銘柄をご紹介します。今や配当利回りが5%台の銘柄も珍しくはなくなりましたが、日本の政策金利が0.5%であることや、消費者物価上昇率が2%台であることなどを考慮して、高配当利回りの水準は3.0%以上とします。
銘柄名 | 証券コード | 株価(円) (2月18日終値) |
特色 |
---|---|---|---|
三菱重工 | 7011 | 2,173 | トランプ関連の防衛銘柄として注目度高い |
トヨタ自動車 | 7203 | 2,804 | 2025年はROE改革で息を吹き返すか |
三菱商事 | 8058 | 2,420 | 逆風吹き荒れるが脱炭素によるエネルギー変革は追い風に |
三菱UFJFG | 8306 | 2,022 | 数十年ぶりの「金利のある世界」で注目高まる |
ソフトバンク | 9434 | 211.2 | 創業者取締役である孫正義氏のパワーが原動力 |
※FGはフィナンシャル・グループの略 |
三菱重工<7011>
日本を代表する重工業メーカーで、宇宙関連や防衛関連銘柄として関心が高まっています。2022年度を初年度に「5年以内に防衛力を強化」するという政府の決定を受け、株価は数年間上昇が続いています。
2024年の上昇率(2023年終値と2024年終値の比較)はTOPIXコア30銘柄中ダントツの2.6倍でした。2.7倍だった米半導体エヌビディアには負けましたが、ドル建てビットコインの2.2倍には勝ちました。
2025年は昨年同様の高いパフォーマンスは難しいかもしれませんが、トランプ大統領は「同盟国でも防衛は自国で行う」ことを原理原則としていますので、防衛関連の同社は引き続き関心が向かいやすいでしょう。
トヨタ自動車<7203>
日本を代表する自動車メーカーで「日本株式会社」の象徴的存在です。2024年は3月ごろまでは株価も堅調推移だったのですが、「型式不正問題」をきっかけに機関投資家などの買いが入りにくくなったこと(海外の機関投資家などは、投資のルール上、不正問題などコンプライアンス違反の可能性が浮上すると保有株を売却するケースがあります。)から株価はさえない推移となりました。
ただ、昨年12月、ROE(自己資本利益率)の目標を2倍の20%とすると報じられたことで息を吹き返しつつあります。ROE20%となれば、上場企業の平均(2023年度で9%台)を大きく上回り、世界の車メーカーでもトップクラスのROEの水準となります。効率的な経営の目安であり投資家が重視するROEを引き上げることで、市場評価を高める狙いでしょう。
5日の決算発表では2025年3月期の業績見通しを上方修正しました。為替や関税に左右されやすいですが、2025年はROE改革に着手する可能性がありますので期待感を高めたいところです。
三菱商事<8058>
日本を代表する総合商社の一社で、米著名投資家のウォーレン・バフェット氏の会社バークシャー・ハサウェイが大量に同社株を保有していることで有名です。既に10%ほど保有しているので、新たに買い増す可能性は低いことなどから、昨年5月の上場来高値3,775.0円(分割考慮)からは4割近く下落しました。
トランプ関税における貿易摩擦が警戒されるほか、世界経済のエンジンでもある中国経済が軟調である点など、今時点、同社は積極的に買いにくいかもしれません。
ただ、決して赤字に陥っているわけではありませんし、「脱炭素」の流れでエネルギーの変革が起きている状況下、エネルギーに強い同社は注目です。株は長期投資が基本ですので、5年後、10年後を見据えて購入するスタンスはいかがでしょうか。
三菱UFJFG<8306>
日本を代表するメガバンクで、国内の銀行事業だけではなく、米国投資銀行大手モルガン・スタンレーに出資するなど世界中で事業展開しています。
2024年3月、日本銀行がマイナス金利を撤廃し、その後は段階的な利上げに動いており、日本は数十年ぶりに「金利のある世界」に戻りました。銀行業は金利が上がることで、その分の利ザヤを稼ぐことができますので、「金利のある世界」で最も注目される業種と考えます。
さすがに1年で株価が2~3倍になるのは難しいと思いますが、日銀が来年2026年には政策金利を1.00%(現在は0.50%)ぐらいまで引き上げる予想がありますので、堅調な株価推移が今しばらくは続くのではないかと考えます。
ソフトバンク<9434>
同社はソフトバンクグループ(SBG、9984)の国内通信事業を展開しており、PayPayやYahoo!、ZOZOなど非通信関連を強化しています。本業のモバイル事業が堅調推移のほか、スマホ決済PayPayの業績が伸びておりファイナンス事業が好調です。
また、SBG、米AIオープンAIの3社で生成AIの共同出資会社を設けるとも発表しており、トランプ大統領のビジネスパートナーとしてがっちり食い込んでいる創業者取締役の孫正義氏の営業力、行動力、政治力は今後も期待できます。株価は2018年12月の上場後の高値圏で推移していることから、戻り待ちの売りはほぼ考える必要は無さそうです。つまり需給面は良好な状況です。