日本にもインフレの波が到来

 長年物価が上がらなかった日本でも変化が見られます。図表1は国内企業物価指数(企業間で取引される商品の価格指数)と消費者物価指数の推移です。2010年1月を100として指数化しています。

 長年日本では物価が横ばいの状況が続いていましたが、2020年以降コロナからの経済再開に伴う需要の急速な回復や、地政学リスクの高まりによるエネルギー価格の上昇、円安に伴う輸入物価の上昇などをきっかけに、上昇トレンドに転じています。

 企業では増加したコストの価格転嫁に加え、少子高齢化により人手不足が深刻化する中で優秀な人材を確保するために賃上げも広がっています。賃金との好循環によって物価が今後も持続的に上昇する可能性を考えておく必要があるでしょう。

日本における物価指数の推移
(注)期間はBloombergで消費者物価指数のデータが取得可能な2010年1月から2024年12月まで、月次。2010年1月を100として指数化
(出所)BloombergよりGlobal X Japan作成

「プライシングパワー」でインフレ時代を勝ち抜く

 インフレ環境下では企業の「プライシングパワー」という概念に注目しています。プライシングパワー(価格決定力)とは企業が市場での価格を自ら決定する能力のことです。

 プライシングパワーのある企業は価格競争に巻き込まれにくく独自の市場ポジションを保持することができるほか、ビジネス環境の変化に柔軟に対応する価格戦略を展開できます。インフレによってコストが増加した局面でも価格を引き上げることで転嫁でき、持続的な成長が期待されます。

「プライシングパワー」を持つ企業の特徴と強み
※上記は代表的な例であり全てを網羅しているわけではありません

 日本の消費関連企業のうち優れた価格決定力を持つ銘柄から構成される「ブルームバーグ日本株プライシングパワー・セレクト・リーダーズ指数」という指数があります。

 図表3は当指数の構成銘柄とTOPIX(東証株価指数)構成銘柄の売上高推移を示したものですが、2020年にコロナで一時的に物価上昇率がマイナスになった局面でも当指数の構成銘柄は売上高を維持しています。また、高いインフレ率が続いている2022年以降ではTOPIX構成銘柄より売上高を拡大させています。

 このようにプライシングパワーを有する企業の売上高は安定的に拡大しており、プライシングパワーに着目して銘柄を選択することで、物価変動や景気悪化に影響されづらい、本質的に優れた企業の成長を享受できるでしょう。

指数構成銘柄の売上高推移
(注)期間は比較可能な最長期間の2016年から2024年まで。売上高は2016年を100として指数化(出所)BloombergよりGlobal X Japan作成

プライシングパワーを持つ日本企業に投資するETFが登場!

 2025年2月20日に上場したグローバルX プライシングパワー・リーダーズ-日本株式 ETF(328A)は、先述の指数への連動を目指すETF(上場投資信託)です。ブルームバーグ業種分類で一般消費財と生活必需品に該当する銘柄のうち、過去3年間の売上高総利益率のばらつき(標準偏差)が小さい銘柄を選定します。

 プライシングパワーを持つ企業かどうかは単純な利益率の高低では判断できません。一言で利益と言っても企業会計では営業利益や経常利益、当期純利益などさまざまな利益があります。当期純利益に近づくほど売上高から離れるため、原材料価格や人件費、光熱費、本業以外の収益の有無などさまざまな会計上の影響を受けます。

 一方、売上高総利益は売上高に最も近い利益指標のため調整の余地が少なく、企業のコスト転嫁能力が直接的に反映されやすいです。価格決定力のある企業はコストが上昇した局面でも価格を引き上げることでコスト増を価格に転嫁し、同じ利益率を維持することができると考えられます。

 そのため、売上高総利益率の安定性はプライシングパワーを測る上で有効な尺度となります。

 図表4は対象株価指数の構成全20銘柄です。メーカーでは自動車およびオートバイを手掛けるホンダや飲料大手のキリンホールディングスが選定されています。また、一般消費者と直接的に関係するBtoC企業ではありませんが、さまざまな商品やサービスをグローバルで仲介する伊藤忠商事や三菱商事も組み入れられています。

指数構成 全20銘柄
※個別銘柄の推奨、今後の組入を示唆・保証するものではありません。四捨五入の関係で100にならないことがあります。
(出所)BloombergよりGlobal X Japan作成、2025年1月27日時点

 図表5は対象株価指数のパフォーマンス(左軸)と、日本の消費者物価指数の前年同月比の伸び率を12カ月平均にしたチャート(右軸)です。

 オレンジの対象株価指数は長期的にTOPIXを上回って推移しており、特に物価が上昇トレンドの際にパフォーマンスの差が拡大する傾向が見て取れます。直近の物価上昇率は急激な上昇からの反動で低下していますが、一巡後には高止まりが続くと見込まれており、対象株価指数は中長期で高いパフォーマンスが期待されます。

 また、年間騰落率を確認すると、対象株価指数は2018年や2022年のようにTOPIXが下落した年にTOPIXをアウトパフォームしていることから、下落相場でも底堅いパフォーマンスを発揮することが期待されます。

指数のパフォーマンス推移
※過去のパフォーマンスを示しており、将来の成果を示唆・保証するものではありません
(注)日本の消費者物価指数は全国総合指数を使用。対象株価指数の算出開始日は2024年12月9日。算出開始日以前の指数に関する情報は全て指数算出会社がバックテストしたデータ。期間は2015年9月28日から2025年1月27日。起点を100として指数化(配当込み、日次)(出所)BloombergよりGlobal X Japan作成

 ETFの詳細については以下の動画で解説していますので、ぜひご視聴ください。